オントロジー (G検定)

オントロジー

1. 定義と概要

オントロジーとは、あるドメインで使われる語彙の意味と、語彙間の関係性を、他者と共有できる形で明確なルールに基づいて体系的に記述した枠組みです。AI分野では、トム・グルーバー(オントロジーの定義を提唱した米国のコンピュータ科学者)による「概念化の明示的な仕様」という定義(1990年代初頭に提唱)が広く受け入れられています。ここでいう概念化とは、物事の共通点を抜き出して、頭の中で分類・整理することを指します。具体例としては、ある分野の用語や概念、それらの上位下位関係・属性・関係性をコンピュータが扱える形に整理したものが挙げられます。

オントロジーという語は、もともと哲学用語の存在論(哲学における「存在するとは何か」を問う分野)です。1970〜80年代に人工知能研究者が、この語を知識表現(コンピュータが知識を扱えるように体系立てて表す方法)の手段として転用しました。

第2次AIブーム(過去に人工知能研究が盛り上がった時期の一つ)で台頭したエキスパートシステム(専門家の知識をルールとして蓄積し、コンピュータに専門的な判断をさせる仕組み)では、知識をどう体系的に記述し共有するかが課題となりました。その解決手段として、オントロジーが位置づけられています。

2. 試験対策ポイント

オントロジーを理解するうえで、まず押さえておきたいのはトム・グルーバーによる「概念化の明示的な仕様」という定義です。誰が見ても同じように解釈できる仕様として知識を明文化する、という考え方が、AI分野におけるオントロジーの定義として広く受け入れられている点は重要な論点です。

オントロジーは、構築の仕方によって2つに分類して語られます。

種類 構築の方針 特徴 代表例・相性のよい分野
ヘビーウェイト・オントロジー 関係性の正当性を哲学的に考察して厳密に設計する 時間と労力がかかる Cycプロジェクト
ライトウェイト・オントロジー 深い考察をせず効率よく使うことを優先する 自動構築しやすい セマンティック・ウェブ、テキストマイニング

Cycプロジェクトとは、常識的な知識を人手で網羅的に蓄積しようとした大規模な取り組みです。セマンティック・ウェブは、ウェブ上の情報にコンピュータが理解できる意味を付与し、機械同士がやり取りしやすくする仕組みを指します。テキストマイニングは、大量の文章データからコンピュータで有用な情報や傾向を抽出する技術です。

オントロジーは知識表現というテーマの中で、意味ネットワーク(概念同士を「〜の一種」といった関係でつないで表す知識表現の方法)やエキスパートシステムと並んで、知識を体系立てて記述する方法の一つとして位置づけられています。こうした知識表現の全体像の中でオントロジーがどこに位置するかも、あわせて整理しておきたいところです。

3. 関連概念との比較・相違点

意味ネットワークとの最大の違いは、扱う範囲の広さにあります。意味ネットワークは、概念間の継承関係(〜は〜の一種、という関係)と属性の表現が中心の知識表現です。これに対しオントロジーは、推論(すでに分かっている知識から新しい結論を導き出す処理)が可能かどうかや網羅性、体系性といった観点を加えて、世界をより包括的に記述しようとする枠組みという違いがあります。

オントロジー自体の内部にも、設計思想によるヘビーウェイト・オントロジーとライトウェイト・オントロジーという2分類が存在します。関係性の正当性を哲学的に考察して厳密に設計するか、深い考察を行わず効率よく使えることを優先するかという軸で分かれます。前者はCycプロジェクトのような大規模な取り組みに、後者はセマンティック・ウェブのような実用的な用途に向いているという対応関係にあります。

セマンティック・ウェブとの関係では、オントロジーは異なる知識源の間で意味を相互運用可能にする土台として活用されます。W3C(ウェブに関する技術仕様を策定する国際的な団体)が定めたオントロジー記述言語OWL(セマンティック・ウェブでオントロジーを記述するためのW3C推奨の言語)で記述されたオントロジーは、意味ネットワークに似たネットワーク構造を持ちます。オントロジーが個別の分野の知識を整理する枠組みであるのに対し、セマンティック・ウェブはその枠組みをウェブ全体に適用しようとする構想という違いがあります。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

eコマースや検索の分野では、商品カテゴリや属性の関係をオントロジーとして整理し、表記ゆれのある商品名や関連商品を体系的に紐づける取り組みが進んでいます。商品名の表記が担当者やメーカーごとにばらつく状態のままでは、同じ商品を探しているユーザーが検索結果からもれてしまいます。オントロジーによって語彙の意味と関係を統一しておくことで、検索精度が高まり、関連商品の提示も的確になります。

医療・ライフサイエンスの分野では、病名・症状・薬剤などの概念と関係を体系的に整理し、異なる医療機関のデータベース間で用語の意味を統一する取り組みに使われます。同じ症状や薬剤でも、医療機関ごとに呼び方や分類の粒度が異なる場合があります。オントロジーによって用語の意味を共通化しておくことで、機関をまたいだ情報連携が可能になり、診療や研究に必要なデータを横断的に活用できるようになります。

企業内のナレッジマネジメント(組織内の知識を蓄積・共有し、活用しやすくする取り組み)でも、オントロジーは社内に散在する文書や用語の意味・関係を整理する枠組みとして活用されます。部門ごとに異なる呼び方や定義で語られてきた用語を、オントロジーとして体系立てて記述しておくことで、部門をまたいだ知識の検索や共有が可能になります。属人化していた知識が組織全体の資産として扱えるようになる点に、オントロジーを導入する意義があります。

5. 要点まとめ

  • オントロジーは、ある分野の概念とその関係性を明確なルールに基づいて体系的に記述したもので、トム・グルーバーの「概念化の明示的な仕様」という定義が基本になっています。
  • 哲学的な考察を重視して厳密に設計するヘビーウェイト・オントロジーと、効率を優先し自動構築しやすいライトウェイト・オントロジーの2分類があります。
  • 意味ネットワークとは推論可能性や体系性を加えて世界をより包括的に記述する点で異なり、セマンティック・ウェブでは異なる知識源をつなぐ土台として活用されます。

6. 確認問題

問1オントロジーという用語はもともと哲学の「存在論」に由来し、人工知能研究の中で知識表現の手段として転用された。

解答・解説をみる

○ 正しい

オントロジーは哲学用語の存在論に由来し、1970〜80年代にAI研究者が知識表現の方法として採用した経緯があります。エキスパートシステムの発展とともに、知識を体系的に記述し共有する手段として位置づけられました。

問2ライトウェイト・オントロジーは、概念間の関係性について哲学的な考察を重視し、厳密な設計に時間をかける手法である。

解答・解説をみる

× 誤り

哲学的な考察を重視し厳密に設計するのはヘビーウェイト・オントロジーです。ライトウェイト・オントロジーは正当性の深い考察を行わず、効率よく使えることを優先する手法で、この命題は逆の説明になっています。

問3トム・グルーバーは、オントロジーを「概念化の明示的な仕様」と定義した。

解答・解説をみる

○ 正しい

1990年代初頭にトム・グルーバーが提唱したこの定義は、AI分野でオントロジーを説明する際に広く用いられています。