メタバース (G検定)

メタバース

1. 定義と概要

メタバースとは、インターネット上に構築された三次元的な仮想空間で、利用者が自分の分身であるアバターを介してその空間内を移動し、他者との交流やコンテンツの体験、商品・サービスの売買などを行えるものです。代表例としては、アバター同士でイベントやライブを楽しむサービスや、仮想空間内に店舗を構えて商品を販売するサービスなどが挙げられます。

語源は「超越」を意味する「meta」と「宇宙・世界」を意味する「universe」を組み合わせた造語です。1992年に刊行されたSF小説『スノウ・クラッシュ』(ニール・スティーヴンスン著)に登場した用語が由来とされ、当時は物語の中の架空の概念にすぎませんでした。

従来のインターネットサービスは、Webサイトやアプリの画面越しに情報をやり取りする平面的な体験が中心でした。近年は通信環境の高速化が進み、VR(ゴーグルなどを使い仮想空間の中に入り込んだように感じさせる技術)やAR(スマートフォンなどを通して現実の風景にデジタル情報を重ねて表示する技術)といったデバイスも普及してきました。

3Dグラフィックス技術の向上もあいまって、仮想空間そのものに入り込み、アバターを介して他者と同じ空間を共有する体験が実現しやすくなっています。こうした複数の変化が重なったことで、メタバースという概念が注目を集めるようになりました。

2. 試験対策ポイント

まず取り上げたいのは、メタバースを実現する要素技術です。VR・ARに加えて、MR(現実の空間に仮想の物体を重ね、それに直接触れるように操作できる技術)という技術もあります。この三つの技術を総称する呼び方がXR(VR・AR・MRなど現実と仮想を組み合わせる技術をまとめて呼ぶ総称)です。

これらの技術に加え、自分の分身として操作するアバターも欠かせない要素です。さらに、仮想空間内のデジタル資産の所有権を証明するNFT(デジタルデータの所有者や取引履歴を記録し、複製できない証明にする技術)も要素技術の一つです。その記録を支えるブロックチェーン(取引の記録を複数のコンピュータでそれぞれ保存し合うことで管理し、改ざんしにくくする技術)とあわせて意識しておくと理解しやすい関係にあります。

これらの技術は単独で語られることも多いものの、メタバースという文脈ではそれぞれが空間・分身・経済活動を支える部品として組み合わさっています。支える側面ごとに並べると、次のように対応します。

支える側面 主な要素技術
仮想空間そのもの VR・AR・MR、これらを総称するXR
利用者の分身 アバター
空間内の経済活動 NFT・ブロックチェーン

どれか一つの技術だけでメタバースが成り立つわけではなく、組み合わせで支えられている点に注目すると理解が深まります。

メタバースはVRヘッドセットなどの専用デバイスを必須としない点が取り違えやすいポイントです。PCやスマートフォンからアクセスできるサービスも多く、VR単体の技術とメタバースという仮想空間の概念は同一ではありません。デバイスの違いによって体験の没入度は変わるものの、メタバースというサービス自体が使えなくなるわけではないという関係にあります。

現実世界の情報を仮想空間に再現するデジタルツイン(現実世界のモノや環境をデータで仮想空間に再現したもの)との違いも、目的の面で両者を分ける軸になります。デジタルツインは現実の忠実な再現とシミュレーションが目的である一方、メタバースは新たな仮想世界での交流・体験の創出に主眼があります。

経済活動の側面としては、仮想空間内のアイテムや土地の取引にNFT・仮想通貨が用いられる点も、メタバースの特徴としてあわせて押さえておきたいところです。実物資産の取引とは異なり、こうした仮想空間内の資産は複製されやすいという性質を持つため、所有権を証明する仕組みが重視されます。

3. 関連概念との比較・相違点

XRとの最大の違いは、技術か空間かという軸にあります。XRはVR・AR・MRのように現実と仮想を組み合わせる技術群の総称であるのに対し、メタバースはそうした技術を使って実現される仮想空間そのものを指します。

XRはメタバースを成り立たせる手段の一つという関係にあり、両者は同じ階層の概念ではありません。たとえばVRヘッドセットを使わずスマートフォンだけでメタバースにアクセスする場合もあり、XRのすべてがメタバースに使われるわけでも、メタバースがXRなしに成り立たないわけでもありません。

デジタルツインとの最大の違いは、目的の軸にあります。デジタルツインは現実世界のモノや環境をIoT(さまざまなモノがインターネットにつながる仕組み)などのデータで仮想空間上に写し取る技術です。工場の設備をそっくりそのまま仮想空間上に再現し、故障の予兆を事前に把握するような使い方が典型です。

両者が何を目指しているのかを並べると、次のように整理できます。

観点 メタバース デジタルツイン
目的 新たな仮想世界での交流や体験の創出 現実の忠実な再現とシミュレーション
現実との関係 現実にとらわれない世界を新たに作る 現実のモノや環境をそのまま写し取る

同じ仮想空間の技術でありながら、再現を目指すか創出を目指すかという点で方向性が異なります。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

小売・ECの分野では、バーチャル店舗でアバターの店員が接客し、商品を3Dで確認しながら購入できるサービスが登場しています。実店舗さながらの接客や商品の質感を伝える体験をオンライン上で再現する取り組みとして活用が進んでおり、画面をスクロールするだけの従来型のECサイトとは異なる購買体験を提供します。

不動産の分野では、仮想空間上に再現した物件をアバターで内覧できるバーチャル内覧が使われています。現地に足を運ばなくても部屋の広さや動線を体感できるため、遠方に住む検討者への案内や下見の絞り込みに役立ちます。移動や日程調整の手間が省けることで、検討から成約までの期間を短縮できる点も実務上の効果として挙げられます。

イベントやオフィスの分野でも活用が広がっています。バーチャル展示会やバーチャルライブは会場の定員に縛られずに集客でき、リモートワーク向けの仮想オフィスは離れた場所にいる社員同士の雑談や会議の場として機能します。距離を越えて人と人がつながる場としての価値が、こうした活用シナリオに共通しています。対面でなければ得にくかった偶発的な会話や一体感を、仮想空間という形で補う試みともいえます。

5. 要点まとめ

  • メタバースはインターネット上の三次元的な仮想空間で、アバターを介した交流や経済活動ができる点が特徴です。語源は『スノウ・クラッシュ』に登場した「meta+universe」の造語です。
  • 実現を支える要素技術としてXR(VR・AR・MR)・アバター・NFT/ブロックチェーンをセットで整理しておきたいところです。VR専用デバイスは必須ではありません。
  • 現実の再現とシミュレーションを目的とするデジタルツインとの違い、小売・不動産・イベントなど業界別の活用シナリオもあわせて押さえておきたい論点です。

6. 確認問題

問1メタバースを利用するには、VRヘッドセットなどの専用デバイスが必ず必要である。

解答・解説をみる

× 誤り

メタバースはPCやスマートフォンからアクセスできるサービスも多く、VR専用デバイスは必須ではありません。正しくは、専用デバイスがなくてもアクセスできるサービスが多いという点です。VR単体の技術とメタバースという仮想空間の概念を混同しやすいところです。

問2メタバース内での経済活動を支える技術として、デジタル資産の所有権を証明するNFTやブロックチェーンが挙げられる。

解答・解説をみる

○ 正しい

仮想空間内のアイテムや土地の取引には、複製できない所有権の証明としてNFT・ブロックチェーンが用いられます。アバター・XRとあわせて、要素技術のセットとして覚えておくと分かりやすい部分です。

問3デジタルツインは、現実世界のモノや環境をIoTなどのデータをもとに仮想空間上に再現し、シミュレーションなどに活用する技術である。

解答・解説をみる

○ 正しい

デジタルツインは現実の忠実な再現とシミュレーションが目的で、新たな仮想世界の創出を目的とするメタバースとは主眼が異なります。目的の軸で両者を区別する点は、あわせて捉えておくと理解が深まります。