1. 定義と概要
古典的な人工知能とは、G検定が示す人工知能の4段階レベル分類のうち「レベル2」に位置づけられる区分です。探索・推論や知識ベースを用いることで、入力に対する出力の組み合わせが極めて多彩になるプログラムを指します。
代表例として挙げられるのが、将棋プログラムや掃除ロボット、診断プログラムです。いずれも、あらかじめ人間が大量のルールや知識をプログラムに明示的に組み込んでおく必要があります。この「人間が先に知識を用意する」という前提が、この区分を理解するうえでの土台になります。
AI研究の歴史を振り返ると、探索や推論が中心だった時期がありました。この時期は第1次AIブーム(探索・推論の研究が盛んになった時期)と呼ばれます。続く時期には知識ベースやエキスパートシステム(専門家の知識をルールとして組み込み、専門家のような判断を行うプログラム)の研究が盛んになりました。この時期は第2次AIブーム(知識ベースやエキスパートシステムの研究が盛んになった時期)と呼ばれ、これらの技術が古典的な人工知能として整理されました。
レベル1にあたる単純な制御プログラム(家電の温度センサー制御のように、入力に対して決まった1つの出力を返す仕組み)と並べると、位置づけがはっきりします。レベル2は同じ入力でも状況に応じて異なる判断ができる点で、一段階複雑になっています。
2. 試験対策ポイント
古典的な人工知能についてまず押さえておきたいのは、レベル2の位置づけと具体例です。人工知能は4段階のレベルに整理されており、それぞれ判断のしくみが異なります。
| レベル | 区分 | 判断のしくみ |
|---|---|---|
| レベル1 | 単純な制御プログラム | 入力に対して決まった1つの出力を返す |
| レベル2 | 古典的な人工知能 | 人間が組み込んだ知識やルールの範囲で状況に応じた判断を行う |
| レベル3 | 機械学習を取り入れた人工知能 | 蓄積されたデータからルールそのものを導き出す |
| レベル4 | ディープラーニングを取り入れた人工知能 | 注目すべき特徴量まで自動で見つけ出す |
とくに取り違えやすいのがレベル2とレベル4の関係です。レベル4のディープラーニング(人間の脳の神経回路を模した仕組みであるニューラルネットワークを使い、注目すべき特徴量まで自動で見つけ出す技術)とは異なり、レベル2は人間があらかじめ知識やルールを組み込みます。特徴量(データのどの部分に注目するかを表す指標)を自動で得るか、人間があらかじめ設計するかが、この2つを分ける軸です。この軸は、レベル1からレベル4までの並びを整理するうえでの基準になっています。
レベル1との違いは、あらかじめ用意された知識やルールの範囲内で、状況に応じた多彩な判断ができる点にあります。掃除ロボットや将棋プログラム、診断プログラムが代表例として挙げられ、いずれも入力が同じ状況でも、条件によって出力が変わる仕組みを備えています。
古典的な人工知能を支える手法としては、探索や推論に加えて、知識ベース、エキスパートシステムが柱になります。これらの技術は、2つのAIブームの成果とそれぞれ対応しています。
| 時期 | 研究の中心 | 対応する技術 |
|---|---|---|
| 第1次AIブーム | 探索・推論の時代 | 探索、推論 |
| 第2次AIブーム | 知識の時代 | 知識ベース、エキスパートシステム |
どちらのブームで育った技術も、そのままレベル2の中身にあたります。掃除ロボットや将棋プログラムといった具体例と合わせて見ておきたいところです。
3. 関連概念との比較・相違点
単純な制御プログラム(レベル1)との最大の違いは、入力に対する出力パターンの複雑さにあります。レベル1は家電の温度センサーのように決まった1つの出力しか返しませんが、古典的な人工知能にあたるレベル2は、同じ探索・推論の枠組みの中でも状況に応じて多彩な出力を返します。
両者はともに人間があらかじめルールを設計する点で共通しています。それでも、扱える判断の幅がレベルの分かれ目になっています。
機械学習を取り入れた人工知能(レベル3)との最大の違いは、ルールを与えるのが人間か、データから自動的にパターンを学習するかという点にあります。古典的な人工知能は人間が知識やルールを明示的に設計するのに対し、機械学習(大量のデータからコンピュータ自らパターンやルールを見つけ出す技術)を取り入れたレベル3は、蓄積されたデータからルールそのものを導き出します。
同じ探索や推論の技術が使われる場面もあります。それでも、判断の根拠を人間が用意するか、データから導くかによって、レベル2とレベル3は区別されます。
4. ビジネス・実務での活用シナリオ
製造業では、ルールベースの故障診断プログラムが、センサー値と既知の故障パターンを照合して原因を絞り込む場面で活用されています。専門家の知識があらかじめルール化されているため、経験の浅い担当者が対応する場合でも、一定水準の診断結果が得られます。
ゲームや娯楽の分野では、将棋やチェスのソフトが盤面を探索木(選択肢の分岐を木の枝のように表した図)で読み進め、あらかじめ設計された評価基準に沿って最善手を選びます。人間の対局者が短時間では追い切れない手数まで読み進められる点が、この分野での価値です。
家庭用ロボットの分野では、掃除ロボットが部屋のマップと障害物検知のルールに基づき、状況に応じて清掃経路を選び直します。障害物の配置が日によって変わる家庭内でも、あらかじめ組み込まれた判断基準の範囲内で経路を選び直せる点が実務上の強みです。
5. 要点まとめ
- 古典的な人工知能はG検定のAIレベル分類のレベル2にあたり、探索・推論や知識ベースを使って状況に応じ多彩な判断を行うプログラムで、将棋プログラム・掃除ロボット・診断プログラムが代表例です。
- レベル1(単純な制御プログラム)との違いは出力パターンの多彩さにあり、レベル3(機械学習)との違いはルールを人間が設計するかデータから学習するかにあります。
- 探索・推論、知識ベース、エキスパートシステムは古典的な人工知能を支える技術で、第1次・第2次AIブームの成果と対応関係にあります。
6. 確認問題
問1古典的な人工知能は、人間があらかじめ設定した探索・推論のルールや知識に基づいて動作し、状況に応じて複雑な出力を行う点でレベル1(単純な制御プログラム)と異なる。
解答・解説をみる
○ 正しい
レベル1は入力に対して決まった1つの出力しか返しませんが、レベル2にあたる古典的な人工知能は、同じ探索・推論の枠組みの中でも状況に応じて多彩な出力を返します。この出力パターンの多彩さがレベル1との分かれ目です。
問2古典的な人工知能は、大量のデータから特徴量を自動的に学習する点が特徴である。
解答・解説をみる
× 誤り
特徴量(データのどの部分に注目するかを表す指標)を自動で獲得するのは、レベル4のディープラーニングの特徴です。レベル2にあたる古典的な人工知能は、人間があらかじめ組み込んだ知識やルールの範囲内で判断する点が異なります。正しくは、レベル2は人間が設計したルールの範囲内で判断し、特徴量まで自動で見つけ出すのはレベル4という関係にあります。
問3掃除ロボットや将棋プログラム、診断プログラムは、G検定における人工知能のレベル2(古典的な人工知能)の具体例として位置づけられる。
解答・解説をみる
○ 正しい
いずれも探索・推論や知識ベースを用い、状況に応じた多彩な判断を行う点でレベル2の代表例とされています。3つの具体例はレベル2の位置づけを理解するうえでの中心的な論点です。

