1. 定義と概要
浅田稔とは、大阪大学工学研究科教授を経て特任教授を務め、大阪国際工科専門職大学の副学長も務めた日本のロボット研究者です。人工知能学会誌の連載をもとにまとめられた書籍『人工知能とは』などでは、研究者ごとに人工知能を再定義する取り組みの一人として紹介されています。
その中で浅田稔は、「知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない」という趣旨の立場を示したことで知られています。知能そのものの定義が定まっていない以上、それを人工的に再現した人工知能もまた明確には定義できない、という考え方です。
この論点の背景には、人工知能には確立された単一の定義がなく、研究者ごとに立場が分かれるという事情があります。東京大学の松尾豊(人工知能に関する研究で知られる大学教授)は、「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術」のように知能そのものに踏み込んで定義を示します。これに対して浅田稔は、知能の定義自体が明確でないことを理由に、人工知能の定義にも踏み込まない立場を取ります。
研究者としての浅田稔は、身体性(知能や心の働きが身体を通じて外の世界と関わることで初めて成り立つという考え方)と社会性(他者と関わり合うことを通じて認知や行動が育っていく性質)を重視します。これら2つをキーワードに、人間の発達過程をロボットや計算機シミュレーションで研究する認知発達ロボティクスを推進してきました。
2. 試験対策ポイント
G検定では、人工知能には研究者ごとに異なる定義があるという論点が重要です。浅田稔の「知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない」という立場と、松尾豊の「人工的につくられた人間のような知能」、西田豊明(『知能を持つメカ』という定義を示した研究者)の立場との違いは、混同しやすい組み合わせです。
知能そのものに踏み込んで定義する研究者と、定義の困難さを理由にそこへ踏み込まない浅田稔の姿勢は、対照的な位置関係にあります。とくに研究者名と定義文・専門分野の対応関係は取り違えやすいので、次の表で整理しておきたいところです。
| 研究者 | 人工知能の定義への立場 | 主な専門分野 |
|---|---|---|
| 浅田稔 | 知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない(定義の困難さを指摘する立場) | 認知発達ロボティクス |
| 松尾豊 | 人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術(知能そのものに踏み込む定義) | ディープラーニング(大量のデータから特徴を自動で学習する技術)の研究 |
ここに西田豊明の「知能を持つメカ」という定義も並ぶため、三者の言い回しを混ぜないように押さえておくと安心です。
浅田稔には、認知発達ロボティクスの提唱者としての側面もあり、身体性・社会性という2つのキーワードとセットで扱われます。あらかじめルールや知識をプログラムする従来型のロボット研究とは異なり、ロボットが環境や他者との関わりを通じて発達的に能力を獲得していく点に特徴があります。
さらに浅田稔は、北野宏明(浅田稔とともにロボカップの創設に関わった研究者)・松原仁(同じくロボカップ創設に関わった日本の人工知能研究者)とともに、ロボカップを創設したロボット研究者としても位置づけられます。ロボカップとは、サッカーなどの競技を通じてロボットやAIの技術力を競う国際的な大会です。ロボカップは、1997年に第1回大会が開催されました。
3. 関連概念との比較・相違点
松尾豊や西田豊明ら他の研究者による人工知能の定義との最大の違いは、定義そのものへの態度にあります。松尾豊や西田豊明は知能そのものに踏み込んで人工知能を定義する立場を取るのに対し、浅田稔は知能の定義自体が明確でないことを理由に、人工知能の定義には踏み込まない姿勢を貫きます。同じ「人工知能の定義」という論点でも、研究者ごとに定義への向き合い方そのものが異なる点が対比の軸になります。
従来型のロボット研究との違いも重要です。従来型のロボット研究は、エキスパートシステム(専門知識をルール化してコンピュータに判断させる仕組み)のように、あらかじめ人間が与えたルールや知識をもとに動作を実現しようとします。これに対し浅田稔が推進する認知発達ロボティクスは、ロボットが身体を通じて環境や他者と関わりながら発達的に能力を獲得していく過程を研究対象にします。
両者の違いは、次のように整理できます。
| 観点 | 従来型のロボット研究 | 認知発達ロボティクス |
|---|---|---|
| 能力の与え方 | あらかじめ人間がルールや知識を与える | 環境や他者との関わりを通じて発達的に獲得する |
| 代表的な仕組み・考え方 | エキスパートシステム | 身体性・社会性を重視した発達の研究 |
| 研究の焦点 | 完成した知識にもとづく動作の実現 | 発達の過程そのもの |
あらかじめ完成した知識を与えるか、発達の過程そのものを研究対象にするかという違いは、両者を区別するうえで重要な軸です。
4. ビジネス・実務での活用シナリオ
ロボティクス分野では、北野宏明・松原仁とともに創設したロボカップが、国際的な研究コミュニティの形成に役立っています。サッカーなどの競技形式を採用することで、世界中の研究チームが共通のルールのもとでロボットやAIの技術を競い合う枠組みが生まれ、要素技術の発展を促す事例として紹介できます。競技という分かりやすい目標を共有することで、個々の研究室だけでは生まれにくい継続的な技術の磨き合いが起きる点も特徴です。
コミュニケーションロボットや教育・福祉機器の分野では、身体性・社会性を重視する認知発達ロボティクスの考え方が応用される領域の一つとして挙げられます。人とのやり取りを通じて反応や振る舞いを調整するロボットの設計では、あらかじめすべての応答パターンを用意するのではなく、相手との関わりの中で適切な反応を育てていくという発想が参考にされています。
高等教育・人材育成の分野でも、浅田稔の活動が関わります。大阪国際工科専門職大学副学長として、ロボット工学分野の実践的な人材育成に携わっており、研究者としての知見を教育の現場に還元する役割も担っています。
5. 要点まとめ
- 浅田稔は、「知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない」という趣旨の立場を示した大阪大学のロボット研究者です。
- 身体性・社会性をキーワードに人間の発達過程をロボットで研究する認知発達ロボティクスの提唱者としての側面も持ちます。
- 北野宏明・松原仁とともにロボカップを創設したロボット研究者としての顔も持ちます。
6. 確認問題
問1浅田稔は、「知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない」という趣旨の立場を示した研究者である。
解答・解説をみる
○ 正しい
知能そのものの定義が定まっていないことを理由に、人工知能の定義には踏み込まない姿勢を示す研究者として紹介されます。知能そのものに踏み込んで定義する松尾豊らの立場とは対照的です。
問2浅田稔は、北野宏明・松原仁らとともにロボカップを創設し、身体性と社会性をキーワードとする認知発達ロボティクスを提唱したロボット研究者である。
解答・解説をみる
○ 正しい
ロボカップ創設への関わりと認知発達ロボティクスの提唱は、いずれも浅田稔の研究者としての位置づけを示します。両者はあわせて整理しておきたいところです。
問3浅田稔は、「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術」という定義を示した東京大学の研究者である。
解答・解説をみる
× 誤り
この定義と所属は松尾豊(東京大学)のものです。正しくは、浅田稔は大阪大学の研究者で、知能の定義自体が明確でないことを理由に人工知能を明確に定義できないという立場を取ります。研究者名と定義・所属の組み合わせを取り違えやすい点です。

