人工知能 (G検定)

人工知能

1. 定義と概要

人工知能とは、人間の知的な振る舞いをコンピュータ上で模倣・実現しようとする技術や研究分野の総称です。ただし、研究者間で共有された単一の定義は存在しません。

1956年のダートマス会議(1956年に開催された、「人工知能」という言葉が初めて使われた研究会)で、この言葉を初めて用いたのはジョン・マッカーシーです。マッカーシーは「知的な機械、特に知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と定義しました。この定義はしばしば引用される代表例ですが、唯一の正解ではありません。

定義が一つに定まらない背景には、大元となる「知能」「知性」そのものの定義自体が研究者ごとに異なり、人類として合意できていない事情があります。人工知能という言葉を学ぶ最初の一歩は、この「定義が一つに決まらない」前提そのものを理解することです。

1956年、アメリカのダートマス大学でジョン・マッカーシーが主催した研究会で「人工知能(Artificial Intelligence)」という言葉が初めて用いられて以来、人工知能の研究は一様に発展してきたわけではありません。期待が高まって研究が盛り上がる時期と、期待に実現が追いつかず停滞する「冬の時代」を繰り返しながら歩んできました。

この浮き沈みは大きく3度のAIブームとして整理されます。1つ目は推論(あらかじめ持っている知識やルールから結論を導き出す処理)や探索(考えられる選択肢を順にたどって答えを見つけ出す処理)が中心となる時代です。2つ目は専門家の知識をルール化する知識の時代です。3つ目は機械学習(データから規則やパターンを自動的に学び取る技術)・ディープラーニング(深層学習。人間の神経回路を模したニューラルネットワークを何層にも重ねてデータの特徴を自動的に学習する技術)が主役となる時代です。

各ブームの主役技術には、探索木(考えられる手や選択肢を枝分かれの形でたどりながら答えを探す図式)やエキスパートシステム(専門家の知識をルールとしてコンピュータに取り込み、専門家のように判断や助言を行うプログラム)もあります。詳しい内容はそれぞれのブームを扱う個別の記事に譲り、ここでは人工知能全体の見取り図として位置づけます。人工知能という言葉一つを取っても、その中身は時代とともに大きく変化してきたことになります。

2. 試験対策ポイント

人工知能という言葉の成り立ちと定義の広がりが、理解の柱になります。1956年のダートマス会議でジョン・マッカーシーが初めて用いた経緯に加え、その後も研究者ごとに定義が異なり、単一の統一定義が存在しない点が重要な論点です。

マッカーシーの定義はあくまで代表的な一例であり、G検定のシラバス上も人工知能の定義そのものが定まっていないことが前提とされています。単なる年号や人物名の暗記ではなく、「なぜ定義が一つに定まらないのか」という理屈まで理解しておきたい分野です。

定義が定まりにくい背景の一つとして、AI効果(AIが課題を解決しても、仕組みが分かると「単なる自動化で知能ではない」と後から評価を下げてしまう心理)が挙げられます。人工知能が新しい課題を解決しても、その仕組みが解明された途端に「これは単なる自動化・計算であって知能ではない」と過小評価されてしまう傾向は、人工知能研究の歴史の中で繰り返し見られてきました。

この心理的な傾向は、人工知能の定義がなぜ一つに収まらないかを説明する視点として位置づけられます。言い換えれば、人工知能という言葉の評価そのものが、時代とともに動く相対的なものです。

人工知能をめぐるもう一つの重要な論点は、哲学者ジョン・サールが提唱した強いAIと弱いAIの区分です。強いAIとは人間と同様の心・意識・意思を持ち、あらゆる課題に対応できるAIを指し、弱いAIとは翻訳や将棋のように特定の課題にのみ対応するAIを指します。

サールは、強いAIの実現が原理的に不可能であることを示すために「中国語の部屋(ルールに従って記号を変換しているだけでは、その言語を理解しているとは言えないことを示す思考実験)」という思考実験を考案しました。この実験は、規則に従って記号を処理しているだけでは、その言語を理解しているとは言えないという主張を表しており、強いAI・弱いAIの区分と合わせて押さえておきたい関連知識です。

人工知能研究の大まかな流れも、試験対策上の重要な枠組みです。研究の歴史は、解を探索木などでたどる推論・探索の時代から始まり、専門家の知識をルール化するエキスパートシステムが主役の知識の時代へと移りました。その後は、大量データから規則を自動的に学習する機械学習・ディープラーニングの時代を迎えています。

この3度のAIブームと各時代の主役技術との対応関係が論点になります。並べると、次のように整理できます。

ブーム 時代の呼び名 中心になった技術
1つ目 推論・探索の時代 探索木などをたどる推論と探索
2つ目 知識の時代 専門家の知識をルール化するエキスパートシステム
3つ目 機械学習・ディープラーニングの時代 大量データから規則を自動的に学習する技術

どのブームでどの技術が主役だったかを取り違えないことが、ここでの要点です。各ブームの背景や出来事の詳細は、第1次から第3次までの人工知能ブームを扱う個別の記事に譲ります。

3. 関連概念との比較・相違点

人工知能と混同されやすい概念に拡張知能(オーグメンテッド・インテリジェンス。AIを人間の代わりではなく、人間の能力を補助・拡張する道具として捉える考え方)があります。最大の違いは、人とAIの関係の捉え方にあります。人工知能は人間の作業を代替・自律化する方向性を含む概念であるのに対し、拡張知能はAIをあくまで人間の判断力や能力を補助・拡張する道具として位置づける考え方です。

人がAIに置き換わるのか、人がAIによって能力を伸ばすのかという視点の違いが、両者を分ける軸になります。

人工知能と機械学習、ディープラーニングの関係も取り違えやすい点です。人工知能は知的な振る舞いの実現を目指す概念全体を指す包括的な用語であるのに対し、機械学習はその実現手法の一つであり、ディープラーニングはさらに機械学習の一手法にあたります。

用語 何を指すか 範囲
人工知能 知的な振る舞いの実現を目指す概念全体 もっとも広い
機械学習 人工知能を実現する手法の一つ 人工知能に含まれる
ディープラーニング 機械学習の一手法 機械学習に含まれる

つまり、人工知能が機械学習を含み、機械学習がディープラーニングを含むという包含関係にあります。ニュースなどで「AI」「機械学習」「ディープラーニング」という言葉が同じ意味であるかのように使われることもありますが、この三者は指す範囲の広さが異なる別の概念です。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

AIの導入を検討する企画部門では、「人工知能」という言葉が指す範囲の広さが課題になる場面があります。単純なルールベースの自動化から高度な機械学習まで、「AI」と呼ばれる技術の中身は幅広く、導入前に仕組みを確認しないと期待値と実態がずれやすくなります。AI効果によって「動いてみると単なる自動化に見える」という評価のずれが生じることを避けるため、導入前に技術の中身をすり合わせる場面があります。

カスタマーサポートや業務システムの導入場面でも、「AI搭載」とうたうツールの比較検討では、ルールベースの仕組みか機械学習による仕組みかを切り分けて評価することが求められます。この切り分けは、費用対効果や運用方針を判断する材料になります。仕組みの中身を確認せずに導入すると、後になって「思っていたAIと違った」という評価のずれが生まれる原因にもなります。

生成AI(文章や画像などの新しいコンテンツを自動で作り出す技術)の普及により、「人工知能」という言葉が指すイメージ自体も更新され続けています。社内外で「AI」について話すとき、前提とする技術水準に人によってずれが生じやすい状況が生まれており、同じ言葉を使っていても思い描く技術の姿が異なる場面が増えています。人工知能という一つの言葉が、時代や文脈によって指す技術の幅を変え続けている状況がここにも表れています。

5. 要点まとめ

  • 人工知能は「知的な機械をつくる科学と技術」などと定義されますが、大元の「知能・知性」自体の定義が研究者間で一致していないため、単一の統一定義は存在しません。
  • 1956年のダートマス会議でジョン・マッカーシーが命名して以降、推論・探索の時代、知識の時代、機械学習・深層学習の時代という3度のAIブームを経て発展してきました。
  • AI効果(成果を後から過小評価する心理)と、ジョン・サールが提唱した強いAI・弱いAIの区分は、人工知能の理解の広がりと限界を捉える視点として扱われます。

6. 確認問題

問1人工知能(Artificial Intelligence)という言葉は、1956年に開催されたダートマス会議において、ジョン・マッカーシーによって初めて用いられた。

解答・解説をみる

○ 正しい

ダートマス会議はマッカーシーが主催した研究会で、ここで「人工知能」という言葉が史上初めて用いられました。人工知能の成り立ちを理解するうえでの基本知識です。

問2人工知能には研究者間で共有された単一の定義が存在し、G検定シラバス上もその定義は一つに統一されている。

解答・解説をみる

× 誤り

正しくは、大元となる「知能・知性」の定義自体が研究者ごとに異なるため、人工知能についても共有された単一の定義は存在しません。マッカーシーの定義はあくまで代表的な一例にすぎず、統一定義があるという記述は誤りです。

問3AI効果とは、人工知能が新しい課題を解決しても、その仕組みが解明されると「これは単なる自動化であり知能ではない」と後から過小評価してしまう心理的な傾向を指す。

解答・解説をみる

○ 正しい

AI効果は、人工知能の成果を人間が知能と認めにくいという心理現象で、人工知能の定義が定まりにくい背景の一つとして扱われます。強いAI・弱いAIの区分ともあわせて整理しておきたい内容です。