偏相関係数 (G検定)

偏相関係数

1. 定義と概要

偏相関係数とは、2つの変数(分析の対象として扱う、値が変化する要素)の相関(一方が増えるともう一方も増える、あるいは減るというように、共に変化する関係)を測る統計量です。ただし、その両方に影響を与えている可能性がある第三の変数、いわゆる交絡因子(2つの変数の両方に影響を与えている、背後に隠れた第三の変数)の影響は、統計的に取り除いたうえで測ります。

値の範囲は通常の相関係数(単相関係数。他の変数の影響を考慮せず、2つの変数だけの関係の強さを-1から1の数値で表す指標)と同じで-1から1をとり、+1に近いほど強い正の関係、-1に近いほど強い負の関係、0に近いほど関係が弱いことを示します。

たとえば、アイスクリームの売上と水難事故の発生件数には、通常の相関係数を計算すると正の相関がみられます。しかし、両方に影響する気温という交絡因子の影響を取り除いた偏相関係数を計算すると、相関は弱まる、あるいは見られなくなります。式で表すと、XとYの間で交絡因子Zの影響を除いた偏相関係数は、XとYの相関係数、XとZの相関係数、YとZの相関係数という3つの通常の相関係数を使った計算式で求められます。

2つの変数だけをみる通常の相関係数には、実際には直接の関係がない2つの変数が、共通の第三の変数の影響で見かけ上相関しているように見える疑似相関を見抜けないという課題があります。そこで、疑似相関の原因として疑われる交絡因子の影響を統計的に取り除いたうえで2変数間の関係を測る手法として、偏相関係数が使われるようになりました。偏相関係数は、交絡因子Zの影響を除いたXの残差(実際の値と、ある基準〔予測式など〕から求めた値との差)と、Zの影響を除いたYの残差との間の相関係数として求めることもできます。

2. 試験対策ポイント

G検定では、偏相関係数の定義と、値の範囲が通常の相関係数と同じ-1から1であることが重要な論点になります。+1に近いほど強い正の偏相関、-1に近いほど強い負の偏相関、0に近いほど関係が弱いという解釈も、通常の相関係数と共通しています。

もうひとつの重要な論点は、疑似相関を見抜く手段として偏相関係数が使われるという関係の整理です。通常の相関係数との違いは、次のとおりです。

観点 相関係数(単相関係数) 偏相関係数
第三の変数の影響 含んだまま測る 統計的に取り除いて測る
値の範囲 -1から1 -1から1
疑似相関の判別 見抜けない 見抜く手がかりになる

アイスクリームの売上と水難事故の発生件数の例のように、通常の相関係数では正の相関がみられても、気温という交絡因子の影響を取り除いた偏相関係数を計算すると、相関は弱まる、あるいは見られなくなります。見かけの相関と、交絡因子を除いた後の関係を区別できるかどうかが分かれ目です。

偏相関係数は、通常の相関係数(単相関係数)や分散(データのばらつきの大きさを表す指標)、標準偏差(分散の平方根で表されるばらつきの指標)とも異なる統計量です。スピアマンの順位相関係数(値そのものではなく順位に変換したうえで相関の強さを測る指標)を含め、こうした他の統計量との区別も押さえておきたいポイントです。名称や計算対象の違いを取り違えやすい点です。

3. 関連概念との比較・相違点

相関係数(単相関係数)との最大の違いは、対象とする関係の範囲にあります。相関係数は2変数の見かけの関係をそのまま表す指標であるのに対し、偏相関係数は第三の変数の影響を統計的に取り除いたうえでの2変数間の関係を表します。値の範囲はともに-1から1で解釈の仕方も共通しますが、疑似相関が疑われる場面では偏相関係数を用います。通常の相関係数は、2つの変数の値を点で表した散布図(横軸と縦軸に2つの変数の値をとり、データを点として打った図)上でのばらつきの傾向を数値化したものとも言えます。

スピアマンの順位相関係数との最大の違いは、除去する対象と使う場面にあります。スピアマンの順位相関係数は、値そのものではなく順位に変換したうえで関係の強さを測ります。そのため、直線ではないものの一方が増えれば他方も増え続けるような単調な関係(非線形の単調な関係)や、他のデータから大きく離れた外れ値の影響を受けにくいという特徴があります。偏相関係数は第三の変数の影響を除去する点に主眼があり、順位に変換するかどうかとは別の軸で使い分けられます。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

マーケティングの現場では、広告費と売上の関係を調べる際に、気温や季節イベントといった季節要因を交絡因子として想定し、その影響を除いた偏相関係数を算出する場面があります。季節要因の影響を含んだままの相関係数だけでは、広告費そのものの効果を過大または過小に見積もる可能性があります。偏相関係数を使うと、広告費が売上に与える純粋な効果に近づけて把握できます。

医療・疫学の分野では、運動量と血圧の関係を調べる際に、年齢という交絡因子の影響を除いた偏相関係数が用いられます。年齢は運動量にも血圧にも影響するため、年齢を考慮しないまま2変数の関係をみると、年齢による見かけ上の関係を運動の効果と誤認するおそれがあります。偏相関係数によって、年齢の影響を取り除いた本来の関係を検証できます。

人事・組織分析の分野では、研修時間と業績評価の関係を調べる際に、本人の業務経験年数を交絡因子として想定し、その影響を除いた偏相関係数を算出する場面があります。経験年数が長い社員ほど研修時間も業績評価も高くなる傾向がある場合、経験年数の影響を除かなければ、研修そのものの効果を正しく評価できません。

5. 要点まとめ

  • 偏相関係数は、第三の変数(交絡因子)の影響を取り除いたうえで2つの変数間の関係の強さを測る指標で、値の範囲は通常の相関係数と同じ-1から1です。
  • 通常の相関係数だけでは見抜けない疑似相関(アイスクリームの売上と水難事故の例のように、気温という交絡因子の影響で見かけ上相関して見える現象)を見抜く手段として使われます。
  • 偏相関係数を通常の相関係数・分散・標準偏差・スピアマンの順位相関係数といった他の統計量と区別できるかどうかが要点です。

6. 確認問題

問1偏相関係数は、第三の変数の影響を統計的に取り除いたうえで、2つの変数間の関係の強さを測る指標である。

解答・解説をみる

○ 正しい

偏相関係数の定義そのものです。通常の相関係数が2変数だけの見かけの関係を表すのに対し、偏相関係数は交絡因子として疑われる第三の変数の影響を除いた関係を表します。

問2偏相関係数がとりうる値の範囲は0から1までであり、通常の相関係数とは異なる範囲をとる。

解答・解説をみる

× 誤り

偏相関係数も通常の相関係数と同じく-1から1の範囲をとります。正しくは、+1に近いほど強い正の関係、-1に近いほど強い負の関係、0に近いほど関係が弱いことを示すという点も相関係数と共通します。範囲を0から1と取り違える点は注意が必要です。

問3アイスクリームの売上と水難事故の発生件数は、通常の相関係数を算出すると正の相関がみられるが、気温という第三の変数の影響を取り除いた偏相関係数を算出すると、相関は弱まる、または見られなくなる。

解答・解説をみる

○ 正しい

気温はアイスクリームの売上と水難事故の発生件数の両方に影響する交絡因子であり、通常の相関係数はこの影響を含んだ見かけの関係を示す疑似相関です。気温の影響を除いた偏相関係数を計算すると、両者の直接の関係は弱まる、または見られなくなります。