分散 (G検定)

分散

1. 定義と概要

分散とは、各データと平均値との差である偏差を2乗し、それらの値を平均することで求められる、データのばらつきを表す指標です。式で表すと「分散=偏差の2乗の合計÷データの個数」となります。たとえば、あるクラスのテストの点数が平均から大きく散らばっていれば分散は大きな値になり、点数の多くが平均付近にそろっていれば分散は小さな値になります。逆に、全員がほぼ同じ点数を取っているクラスでは、偏差が全体的に小さくなるため分散も小さな値にとどまります。分散の正の平方根にあたる指標が標準偏差で、両者は統計の基本的な指標としてあわせて扱われます。

従来、データのばらつきを表す方法としては、偏差をそのまま使うことが考えられてきました。しかし偏差には正の値と負の値が混在しており、単純に合計して平均すると常に0になり、プラスとマイナスが打ち消し合ってしまうという問題がありました。そこでこの問題を避けるため、偏差を2乗してから平均する分散という指標が使われるようになりました。2乗することでマイナスの偏差もプラスの値に変わり、打ち消し合うことなくばらつきの大きさを積み上げられます。ただし2乗した値はもとのデータと単位が異なり、直感的に解釈しづらいという新たな性質が生じます。分散の平方根をとって元の単位に戻した標準偏差もあわせて広く用いられるようになった、という流れです。

2. 試験対策ポイント

偏差(各データと平均値の差)から分散、そして分散の平方根である標準偏差へと至る計算の順序を追うことが、この関係を理解するうえでの中心的な論点です。3つの指標は、次のようにつながっています。

指標 求め方 単位
偏差 各データから平均値を引く 元のデータと同じ
分散 偏差を2乗して平均する 元の単位の2乗
標準偏差 分散の平方根をとる 元のデータと同じ

この流れを、逆向きにたどれるかどうかも合わせて見ておきたいところです。

分散は偏差を2乗しているため、単位はもとのデータの単位を2乗したものになります。たとえば単位が「点」のテストの点数から求めた分散の単位は「点の2乗」となり、元のデータと直接比較しづらい性質があります。標準偏差はこの分散の平方根をとることで、単位をもとのデータと同じ「点」に戻した指標です。そのため、実際のデータのばらつき具合を直感的につかみたい場面では、分散よりも標準偏差が使われる場面が多くなります。

分散・標準偏差は、記述統計(手元のデータの特徴を平均やばらつきといった数値で要約する統計学の一分野)の基本的な指標群のひとつです。同じ指標群には、平均値・中央値(データを大きさ順に並べたときちょうど真ん中に来る値)・最頻値(データの中で最も多く出現する値)といった代表値(データ全体を代表する1つの数値)や、共分散・相関係数という2つの変数の関係を示す指標が含まれます。

分散が大きいほどデータのばらつきが大きく、小さいほど平均値付近にデータが集まっていることを表します。また、分散や標準偏差は、調査や分析の対象となるすべてのデータである母集団と、その中から取り出した一部のデータである標本のどちらについても計算できます。データの単位をそろえて比較しやすくする標準化(平均を0、標準偏差を1になるよう変換する処理)にも利用されます。

3. 関連概念との比較・相違点

標準偏差との最大の違いは、同じばらつきをどの単位で表すかという点にあります。分散はもとのデータの2乗の単位でばらつきを表す指標であるのに対し、標準偏差は分散の平方根をとることでもとのデータと同じ単位に戻した指標です。両者は同じばらつきを異なる単位で表した、いわば表裏の関係にある指標といえます。分散を先に計算し、その平方根をとって標準偏差を求めるという順序も、両者を区別するうえで重要な関係にあたります。

共分散との最大の違いは、対象とする変数の数にあります。分散は1つの変数のばらつきを表す指標であるのに対し、共分散は2つの変数が同じ方向に動くか逆方向に動くかという関係性(2変数の間の連動の仕方)を表す指標です。たとえば、あるデータの点数のばらつきだけを見たいときは分散を、点数と学習時間のように2つのデータの関係を見たいときは共分散を使うというように、扱う対象の数によって使い分けます。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

製造業では、製品の寸法や重量といった検査データから分散を算出し、ばらつきの大きさを品質管理の基準値として用います。個々の検査値を見るだけでなく分散という一つの数値でばらつきの傾向をとらえることで、工程が安定しているかどうかを継続的に確認できます。分散が普段より大きくなった時点で製造工程に何らかの変化が生じたことに気づける点も実務上の利点です。

金融・投資の分野では、株式などの金融商品の収益率の分散を、リスクの大きさを示す指標として扱います。値動きの分散が大きい商品ほど収益がぶれやすいことを意味するため、投資判断や資産配分を検討するうえでの材料になります。複数の商品を組み合わせる際にも、それぞれの分散を比較することでリスクの大きさを客観的な数値として把握できます。

マーケティングの分野では、顧客ごとの購買金額の分散を確認し、平均値だけでは見えない顧客層のばらつきを踏まえた施策を検討します。平均購買額が同じ2つの顧客層でも、分散が異なれば有効な施策は変わってきます。分散が小さく購買額のそろった顧客層と、分散が大きく購買額に幅のある顧客層とでは、打つべき施策の狙いどころも変わってきます。

5. 要点まとめ

  • 分散は、各データと平均値との差である偏差を2乗して平均した値で、データのばらつきの大きさを表す指標です。
  • 分散の単位はもとのデータの単位を2乗したものになるため、平方根をとって元の単位に戻した標準偏差とセットで扱われます。
  • 分散・標準偏差は、平均値などの代表値や共分散・相関係数といった指標とあわせて、記述統計の基本的な指標群として扱われます。

6. 確認問題

問1分散は、各データと平均値との差である偏差を2乗し、それらを平均することで求められる。

解答・解説をみる

○ 正しい

分散の定義そのものです。偏差をそのまま合計・平均すると正負が打ち消し合って0になるため、2乗してから平均することでばらつきを数値化します。この計算の流れは、標準偏差を求める前段階としても重要です。

問2標準偏差は、分散を2乗することで求められる指標であり、分散よりも単位が複雑になる。

解答・解説をみる

× 誤り

標準偏差は分散の2乗ではなく、正しくは分散の平方根をとった指標です。分散はもとのデータの単位の2乗になるのに対し、標準偏差は平方根をとることでもとのデータと同じ単位に戻ります。2乗と平方根を取り違えた記述であり、方向を逆に述べたものは誤りです。

問3分散の値が大きいほど、データは平均値から広く散らばっており、ばらつきが大きいことを示す。

解答・解説をみる

○ 正しい

分散は偏差を2乗して平均した値なので、平均から離れたデータが多いほど大きくなります。値が大きいほどばらつきが大きい、という対応関係にあたります。