1. 定義と概要
GPU(Graphics Processing Unit)とは、もともと画像や映像の描画処理を高速化する目的で開発された演算装置(プロセッサ)です。数千個規模の単純な演算コア(プロセッサの内部で実際に計算を行う単位)を搭載し、同じ種類の計算を同時に大量にこなす並列処理(複数の計算を同時に行う処理方式)に特化している点が特徴です。
具体例としては、画面上の大量のピクセルに対する色や陰影の計算を一斉に行うグラフィックス処理や、ディープラーニングモデルの学習における行列演算(数値を格子状に並べた行列同士の掛け算などの計算)の高速化が挙げられます。
従来、AIの計算はCPU(少数の高性能なコアで複雑な処理を順番にこなす演算装置)が担ってきました。CPUはひとつずつ処理をこなす逐次処理(計算をひとつずつ順番にこなしていく処理方式)に強い一方、ディープラーニングの学習で必要になる行列演算は同じ種類の計算を大量に繰り返す性質を持ち、CPUでは時間がかかりすぎるという課題がありました。
もともとグラフィックス向けに大量の並列演算コアを積んでいたGPUがこの行列演算と相性がよいことが見出され、CPUで数週間かかっていた学習をGPUで数時間から数日に短縮できる事例も報告されています。この計算資源の進化は、ビッグデータや深層学習アルゴリズムの発展と並んで、現在まで続く第3次AIブーム(2000年代以降現在まで続くAI技術発展の波)を支えた要因のひとつとして位置づけられています。
2. 試験対策ポイント
まず整理しておきたいのは、GPUが得意とする処理の性質です。ディープラーニングの学習は行列演算(積和演算)の繰り返しで構成されており、同じ種類の計算を同時に大量処理する並列処理を得意とするGPUの特性と相性がよいため、学習の高速化に広く活用されてきました。
あわせて整理しておきたいのが、GPUという装置と、その使い方を指す言葉の違いです。GPUを画像処理以外の目的に用いる利用形態は、GPGPU(GPUを画像処理以外の汎用的な計算に使う利用形態のこと。General-Purpose computing on GPUの略)と呼ばれます。ここでいう画像処理以外の目的とは、科学技術計算やディープラーニングの学習といった汎用的な計算を指します。
GPUというハードウェアそのものと、その使い方を指すGPGPUという言葉は、区別して整理しておきたい点です。GPGPUそのものの成り立ちについては、別の項目で扱います。
この流れを後押ししたのが、NVIDIAが2007年に公開したCUDA(NVIDIAが開発した、GPUを汎用計算に使いやすくするための開発環境)の登場です。CUDAによってGPUを汎用計算に活用しやすくなった経緯は、押さえておきたいところです。
なお、G検定のシラバスでは、ビッグデータ、GPUなどの計算資源の進化、深層学習アルゴリズムの3点が、現在まで続く第3次AIブームの背景要因として扱われています。
3. 関連概念との比較・相違点
CPUとの最大の違いは、コア構成と得意な処理の方向性にあります。三つの観点で並べると、両者の役割分担は次のように整理できます。
| 観点 | CPU | GPU |
|---|---|---|
| コア構成 | 数個から数十個程度の高性能なコア | 数千個規模の単純なコア |
| 得意な処理 | 複雑な条件分岐を伴う処理をひとつずつ順番にこなす逐次処理 | 同じ種類の計算を同時に処理する並列処理 |
| 力を発揮する場面 | 複雑な分岐を含む処理 | ディープラーニングの学習のように同じ計算を大量に繰り返す処理 |
つまりCPUは複雑な処理を順番に、GPUは単純な計算をまとめて、という棲み分けになっています。なお、CPU自体の内部構成には、ここでは深入りしません。
GPGPUとの最大の違いは、指しているものが「装置」か「使い方」かという点にあります。GPUは画像処理向けに開発された演算装置そのものを指す言葉であるのに対し、GPGPUはそのGPUを画像処理以外の汎用的な計算に用いる利用形態・技術を指す言葉で、両者は指している対象が異なります。
GPUという名詞とGPGPUという用語法を混同すると意味が変わってしまうため、取り違えやすい点として整理しておきたいところです。GPGPUの詳しい仕組みは別テーマとして扱われます。
4. ビジネス・実務での活用シナリオ
生成AI(文章や画像などを新たに作り出すAI)の開発現場では、大規模言語モデル(膨大な文章データを学習し人間のような文章を扱えるAIモデル)が広く使われています。こうしたモデルの学習では、多数のGPUを連携させたGPUクラスタ(複数のGPUを組み合わせて連携させる計算基盤)が使われています。1台のGPUでは処理しきれない膨大な計算を分担することで、学習にかかる期間を短縮できる点が実務上の意義です。
クラウド・データセンター事業では、AWSやGoogle Cloud等のクラウドサービスがGPUを搭載したサーバーを時間貸しするサービスを提供しています。企業が自前でGPUを購入せずにAI開発の計算資源を利用できるようになり、初期投資を抑えながらAI開発に着手できる効果があります。
医療画像診断の分野では、CTやMRIなどの医用画像を解析するAIモデルの学習にGPUが活用されています。膨大な画像データを繰り返し学習させる工程はGPUの並列処理と相性がよく、画像診断支援モデルの研究・開発にかかる時間を短縮できる理由がここにあります。
5. 要点まとめ
- GPUはもともと3Dグラフィックスの描画向けに開発された演算装置で、多数の単純なコアで同じ種類の計算を大量に並列処理するのが得意です。
- ディープラーニングの学習は大量の行列演算の繰り返しで構成されるためGPUの並列処理と相性がよく、学習の高速化に使われてきました。
- CPUは少数の高性能コアによる逐次処理に強く、GPUを画像処理以外の汎用計算に使う利用形態はGPGPUと呼ばれます。装置であるGPU自体と使い方を指すGPGPUは区別して整理しておきたいところです。
6. 確認問題
問1GPUはもともと3Dグラフィックスの描画処理を高速化するために開発された演算装置であり、多数の単純なコアで同じ種類の計算を大量に並列処理することを得意とする。
解答・解説をみる
○ 正しい
GPUの定義そのものです。数千個規模の単純なコアによる並列処理が特徴で、ディープラーニングの行列演算と相性がよい点にも触れておきたいところです。
問2GPUは少数の高性能なコアを持ち、複雑な条件分岐を伴う処理を順番にこなす逐次処理に適している。
解答・解説をみる
× 誤り
これはCPUの特徴の説明です。正しくはGPUは数千個規模の単純なコアで同じ種類の計算を同時に処理する並列処理に適しています。CPUとGPUの特徴を入れ替えた記述は取り違えやすい典型です。
問3ディープラーニングの学習で行われる行列演算は同じ種類の計算を大量に繰り返す処理であるため、並列処理を得意とするGPUを用いることで学習を高速化できる。
解答・解説をみる
○ 正しい
行列演算とGPUの並列処理の相性に関する記述で、GPUがディープラーニングの学習に広く使われる理由を理解するうえでの中心的な論点です。

