1. 定義と概要
GPGPUとは、「General-Purpose computing on Graphics Processing Units」の略称です。本来は3DCGやゲーム映像の描画などグラフィックス処理のために設計されたGPU(画像・映像の描画処理のために設計された演算装置)が持つ、高い処理能力を画像処理以外の汎用的な計算処理に応用する技術・利用形態を指します。
GPGPUは「GPUという装置そのもの」ではなく「GPUという装置の使い方・活用技術」を表す点が最大の特徴です。そのため、GPUの内部構造やCPUとの性能比較そのものは、GPGPUとは別のテーマとして扱われます。
従来、GPUはもっぱらゲームや映像制作における3DCGの描画処理に用いられてきました。GPUは同種の計算を大量の演算コアで同時に処理する並列計算(同種の計算を複数の処理単位で同時に進めること)を得意とする構造を持ち、この能力が画像処理以外の科学技術計算にも応用できることに着目され、汎用計算への転用が進みました。この転用の考え方をGPGPUと呼びます。
普及の転機となったのが、NVIDIAが2007年に公開した開発環境CUDA(Compute Unified Device Architecture。GPUの並列計算能力を汎用計算に使うための開発環境)です。CUDA以前は、グラフィックス専用のAPI(アプリケーション同士が機能をやり取りするための決まった手順や窓口)を介してGPUを扱う必要がありました。CUDAの登場により、一般的なプログラミング言語に近い書き方でGPUの並列計算能力を直接利用できるようになり、GPGPUの普及を大きく後押ししました。
2. 試験対策ポイント
まず整理しておきたいのは、GPGPUが「装置」ではなく「GPUという装置を汎用計算に活用する技術・考え方」を指す語である点です。GPUの内部構造やCPUとの性能比較そのものは別テーマとして扱われるため、GPGPUという語が指す範囲を取り違えないようにしたいところです。
ディープラーニングの学習(トレーニング。大量のデータからパターンを見つけ出す処理)には、大量の行列演算(積和演算。数値を並べた表同士のかけ算・足し算を組み合わせた計算)を伴います。この種の計算は、GPUが得意とする並列計算と相性がよく、GPGPUはディープラーニングの学習を高速化する基盤技術として位置づけられ、教材で扱われる論点です。
NVIDIAのCUDAのような開発環境の登場が普及を後押しした経緯は、あわせて整理しておきたいところです。CUDA以外にも、特定のメーカーに依存しない標準規格であるOpenCL(GPUなどを汎用計算に使うための標準規格)など、複数の開発環境が存在します。
一方、NPU(AI処理に特化して設計された専用の半導体チップ)やTPU(Googleが開発した、AI処理に特化した専用の半導体チップ)は、AI処理に特化して最初から設計された専用ハードウェアです。GPUの並列計算能力を汎用計算に転用するというGPGPUの考え方とは成り立ちが異なる点で、関連概念との比較として押さえておきたい論点です。
3. 関連概念との比較・相違点
GPGPUと混同されやすい用語について、それぞれが何を指すのかと、GPGPUとの関係を並べると次のとおりです。
| 用語 | 何を指すか | GPGPUとの関係 |
|---|---|---|
| GPGPU | GPUを画像処理以外の汎用計算に活用する技術・利用形態 | ー |
| GPU | 画像処理用に設計された演算装置そのもの | GPGPUが活用する対象となる装置 |
| CPU | 少数の高性能な演算コアで複雑な処理を順番にこなす装置 | 得意とする処理の性質が異なる |
| NPU・TPU | AI処理に特化して最初から設計された専用ハードウェア | 専用設計であり、転用という出発点が異なる |
この表の並びを、以下でひとつずつ補足します。
GPUとの最大の違いは、「装置」か「活用技術」かという軸にあります。GPUは画像処理用に設計された演算装置そのものを指すのに対し、GPGPUはそのGPUという装置を画像処理以外の汎用計算に活用する技術・利用形態を指す語で、両者は同一の対象ではありません。ここでは、GPGPUという用語が何を指すかという一点に絞って整理します。
CPUとの違いは、得意とする処理の性質にあるという点です。CPUは少数の高性能な演算コアで複雑な処理を順番にこなすのに向き、GPUは多数の単純な演算コアで同種の計算を大量に並列実行するのに向きます。GPGPUは、このGPUの並列計算能力を画像処理以外の用途に応用する取り組みです。
NPUやTPUといったAI処理専用ハードウェアとは、成り立ちが異なります。NPUやTPUはAI処理に特化して最初から設計された専用ハードウェアであるのに対し、GPGPUは本来グラフィックス処理用に設計されたGPUを汎用計算へ転用する考え方です。専用設計か転用かという出発点に、両者の違いがあります。
4. ビジネス・実務での活用シナリオ
AI開発・研究の現場では、大学や企業がディープラーニングモデルの学習にGPGPUを活用しています。行列演算を多数の演算コアで並列処理することで学習にかかる時間を大幅に短縮でき、研究開発のサイクルを速める効果につながる取り組みです。
科学技術シミュレーションの分野でも、GPGPUを用いた並列計算が活用されています。気象予測や分子動力学シミュレーションなど大量の数値計算を要する場面で、従来より短時間で計算結果を得られるようになりました。
クラウドAIサービスの分野では、クラウド事業者がGPGPU対応のGPUを大量に搭載したサーバーを提供しています。企業は自前で高性能な計算機を保有しなくても、大規模モデルの学習・推論(学習済みモデルを使って答えを出す処理)を利用できる環境が整いつつあります。
5. 要点まとめ
- GPGPUとは、画像処理用に設計されたGPUの並列計算能力を汎用的な計算処理に活用する技術・考え方であり、装置そのものを指すGPUとは区別される点です。
- ディープラーニングの学習は行列演算を主体とするためGPUの並列計算能力と相性がよく、GPGPUはこれを支える基盤技術として位置づけられます。
- NVIDIAのCUDAのような開発環境の登場が普及を後押しした経緯や、CPU・NPU/TPUなど専用ハードウェアとの役割の違いをあわせて整理しておきたいところです。
6. 確認問題
問1GPGPUとは、画像処理用に設計されたGPUの高い並列計算能力を、画像処理以外の汎用的な計算処理に応用する技術・考え方を指す。
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○ 正しい
GPGPUの定義そのものです。装置そのものであるGPUとは異なり、GPUの活用技術・利用形態を表す語である点が特徴です。
問2GPGPUはGPUという装置そのものを指す名称であり、GPUと同じ対象を表す語である。
解答・解説をみる
× 誤り
正しくは、GPGPUは装置そのものではなく、GPUという装置を汎用計算に活用する技術・考え方を指す語です。GPUとGPGPUを同一の対象として扱う記述は、取り違えやすい典型です。
問3NVIDIAが公開したCUDAのような開発環境の登場は、GPUの並列計算能力を汎用計算で利用しやすくし、GPGPUの普及を後押しした。
解答・解説をみる
○ 正しい
CUDA以前はグラフィックス専用のAPIを介する必要がありましたが、CUDAの登場により一般的なプログラミング言語に近い書き方でGPUの並列計算能力を直接利用できるようになりました。

