1. 定義と概要
AIDMAモデルとは、消費者が商品やサービスを購入するまでの心理的なプロセスを、Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)の5段階で示した購買行動モデルです。AIDMAの法則と呼ばれることもあります。提唱したのは、サミュエル・ローランド・ホール(アメリカの広告研究者)で、1920年代に著書『Retail Advertising and Selling』(1924年)の中で示したという説が有力です。
具体例としては、テレビCMで商品を知り(Attention)、興味を持ち(Interest)、欲しいと感じ(Desire)、後日その商品名を覚えていて(Memory)、店頭で購入する(Action)という一連の流れが挙げられます。頭文字を並べた名称のとおり、消費者の心の動きが順番に進んでいく様子をなぞった枠組みです。
AIDMAに先立つ原型として、Attention(注意)からAction(行動)までの4段階で構成されるAIDA(AIDMAの元になった、記憶の段階を持たない4段階の購買行動モデル)があります。AIDAには、広告に接した瞬間と実際の購買行動との間に生じる時間的・空間的な隔たりを説明する要素がなく、広告接触から即座に購買が起こる場面しか想定していませんでした。
AIDMAは、その間をつなぐ「Memory(記憶)」の段階を加えることで、テレビCMなどで形成された記憶が後日の店頭購買につながるという、時間差のある消費行動を説明できるようにしています。広告を見た日と商品を買う日がずれていても、その間を記憶がつないでいるという見立てです。インターネット普及以前の、マスメディア広告を中心とした消費行動を説明する枠組みとして、長く使われてきました。
2. 試験対策ポイント
AIDMAの5段階は、注意→関心→欲求→記憶→行動という順序に加え、各段階が「認知」「感情」「行動」のどの区分に位置づけられるかという整理もあわせて必要になります。注意の段階は商品の存在に気づく認知にあたり、関心・欲求・記憶の段階は感情に、行動の段階は購入という行動そのものに位置づけられます。段階と区分を対応させると、次のように整理できます。
| 段階 | 消費者の状態 | 区分 |
|---|---|---|
| Attention(注意) | 商品の存在に気づく | 認知 |
| Interest(関心) | 興味を持つ | 感情 |
| Desire(欲求) | 欲しいと感じる | 感情 |
| Memory(記憶) | 商品名を覚えている | 感情 |
| Action(行動) | 店頭で購入する | 行動 |
5段階のうち中央の3つがまとめて感情の区分に入る点が、この対応づけの特徴です。順序だけを丸暗記するのではなく、認知から感情を経て行動へ進むという流れとして捉えておくと、段階の入れ替わった記述にも気づきやすくなります。
AIDMAとAISASモデルの違いの整理は、この分野を理解するうえでの中心的な論点です。AISASは、インターネット普及後の消費行動を説明するために2004年に電通が提唱したモデルで、AIDMAの欲求・記憶にあたる段階の代わりに、Search(検索)・Share(共有)という段階を含む点が異なります。
AIDMAの限界も整理しておきたい点です。1920年代に提唱された、マスメディア広告を中心とした時代のモデルであるため、SNSでの情報拡散や口コミといった、インターネット時代特有の行動を説明する要素は持っていません。
関連する購買行動モデルの束としては、記憶の段階を持たない原型のAIDA、検索と共有を含むAISASが挙げられます。あわせて、共感を起点にSNS時代の購買行動を説明するSIPS(2011年に電通が提唱したモデルで、「Sympathize→Identify→Participate→Share」の4段階からなります)も押さえておきたいところです。段階の構成と想定する場面を並べると、次のようになります。
| モデル | 段階の構成 | 想定する場面 |
|---|---|---|
| AIDA | 注意→関心→欲求→行動の4段階 | 広告接触から即座に起こる購買 |
| AIDMA | 注意→関心→欲求→記憶→行動の5段階 | マスメディア広告と後日の店頭購買 |
| AISAS | 欲求・記憶の代わりに検索・共有を含む5段階 | インターネット上の消費行動 |
| SIPS | 「Sympathize→Identify→Participate→Share」の4段階 | 共感を起点とするSNS時代の購買行動 |
それぞれが提唱された時代背景に応じて派生してきたモデル群といえます。名称の似た4つを個別に暗記するよりも、どの時代の消費行動を説明するために生まれたのかという線でつないで覚えておくと、混同しにくくなります。
3. 関連概念との比較・相違点
AISASモデルとの最大の違いは、想定する消費行動の舞台にあります。AIDMAは、記憶(Memory)を介して店頭購買に至る、インターネット普及以前のマスメディア広告を想定したモデルです。一方でAISASは、検索(Search)と共有(Share)を含み、インターネット上の消費行動を想定しています。段階数はどちらも5段階ですが、対象とする消費行動の場面は異なるものです。
段階の数が同じであるぶん、どちらのモデルかを見分ける手がかりは想定する場面のほうにあります。テレビCMのようなマスメディア接触を主軸に据えるならAIDMAの枠組みが手がかりになり、ウェブ検索や口コミの拡散を主軸に据えるならAISASの枠組みが手がかりになります。
AIDAとの最大の違いは、Memory(記憶)の段階の有無です。AIDAはAIDMAの原型にあたり、広告接触から即時の購買を想定した古典的な4段階モデルで、接触と購買の間に時間差がある消費行動を説明しにくいという制約を持っています。AIDMAはこの制約を、記憶という段階を挟むことで補い、テレビCMに接してから日数が経ってからの店頭購買にも対応できるようにしています。
4. ビジネス・実務での活用シナリオ
広告・ブランディングの分野では、テレビCMやマス広告のように多数の消費者へ一斉に接触し、後日の店頭購買につなげる施策の設計枠として、記憶の段階を維持させる反復接触の考え方が代表的な参照点です。同じメッセージを繰り返し届けることで記憶を保たせ、購買のタイミングまで印象を持続させる狙いがあります。
小売・店舗マーケティングの分野では、店頭のPOP(店頭に置かれる商品説明・訴求のための販促物)やパッケージデザインが、購買行動につながる接点として設計されます。事前にテレビCMなどで形成された記憶(Memory)を店頭で呼び起こし、購買行動(Action)へつなげる狙いです。CMで植え付けられた記憶と店頭の情報が結びついたときに、購入という行動が実際に起こります。
AIを活用したマーケティング分析の分野でも、購買データの分析やレコメンデーション(利用者の好みに合わせて商品やコンテンツを自動で提案する仕組み)を設計する際には、消費者の状態を段階的に捉える視点が求められます。AIDMAのような考え方の枠組みは、そうした場面でも応用しやすいものです。
どの段階の消費者にどの施策を打つべきかを判断するための整理枠として使われます。段階ごとに消費者の状態を分けて捉えることで、施策の狙いが絞り込まれます。まだ商品を知らない相手と、知っていて迷っている相手とでは、届けるべき情報が変わってくるためです。
5. 要点まとめ
- AIDMAモデルは、消費者の購買行動を「Attention→Interest→Desire→Memory→Action」の5段階で示す購買行動モデルで、1924年にサミュエル・ローランド・ホールが著書の中で示したとされています。
- 原型のAIDAにない「Memory(記憶)」の段階を加えることで、広告接触と店頭購買の間にある時間的な断絶を説明できる点が特徴です。
- インターネット時代の消費行動を説明するAISASモデル(検索・共有を含む)とは対象とする場面が異なり、両者を対比して整理しておきたい点です。
6. 確認問題
問1AIDMAモデルは、Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の5段階で構成される購買行動モデルである。
解答・解説をみる
○ 正しい
AIDMAはこの5段階の頭文字を取った消費行動モデルで、1924年にサミュエル・ローランド・ホールが著書の中で示したとされています。段階の順序と各段階が認知・感情・行動のどこに位置づけられるかをあわせて確認しておきたいところです。
問2AIDMAモデルは、AIDAモデルにインターネット上の検索(Search)と共有(Share)の段階を加えたものである。
解答・解説をみる
× 誤り
正しくは、AIDAに検索・共有を加えたのはAISASモデルです。AIDMAがAIDAに加えたのは「Memory(記憶)」の段階であり、広告接触から店頭購買までの時間差を説明する役割を持っています。取り違えやすい点です。
問3AISASモデルは、AIDMAモデルよりも後の時代に、インターネットの普及を背景として電通が提唱したモデルである。
解答・解説をみる
○ 正しい
AISASは2004年に電通が提唱したモデルで、検索(Search)・共有(Share)の段階を含みインターネット上の消費行動を説明します。AIDMAとの対象場面の違いは、あわせて整理しておきたいところです。

