著作権法 (G検定)

著作権法

1. 定義と概要

著作権法とは、著作物を保護しつつ文化の発展に寄与することを目的とする法律です(第1条)。ここでいう著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものを指します(著作権法第2条第1項第1号)。著作者等の権利の保護を図りながら、文化的所産の公正な利用にも配慮する点が特徴です。

権利の生まれ方にも特徴があります。著作権は著作物を創作した時点で自動的に発生する無方式主義(役所への届け出をしなくても、作った瞬間に自動で権利が発生する仕組み)を採用しており、特許のような出願・登録の手続きは必要ありません。小説や音楽、プログラム、写真などが代表的な著作物にあたり、日常的に目にする文章や絵、映像の多くが、この定義にあてはまることになります。

従来、著作物の利用には原則として著作権者の許諾が必要でした。一方でAI開発では大量のデータを学習に用いる必要があり、個々の著作物について逐一許諾を得ることは現実的ではないという課題がありました。

この課題を受けて、2018年(平成30年)の著作権法改正で第30条の4が整備されました。これにより、情報解析(多数の著作物から特徴を抽出して比較・分類する処理)など「著作物の思想・感情の享受を目的としない」利用は、著作権者の許諾なく行えることが明確になったという流れがあります。AIの学習データ利用に関する法的な位置づけが整理された改正として、あわせて押さえておきたいところです。

2. 試験対策ポイント

第30条の4は、AI学習と著作物利用の関係を考えるうえでの中心的な条文です。著作物そのものの表現を鑑賞したり味わったりする目的ではない利用を非享受目的(作品そのものを読んだり見たりして楽しむためではない使い方)と呼びます。

非享受目的であれば、情報解析(多数の著作物から言語・音・影像などの要素情報を抽出し、比較・分類する処理)を含む利用は、原則として著作権者の許諾を要しません。これは権利制限規定(本来必要な許可を、特定の条件のもとでは不要にする法律のルール)のひとつにあたります。情報解析には、文章の特徴を数値化して機械学習の材料にする処理や、画像から共通するパターンを抽出する処理なども含まれます。

適用されるケースと適用されないケースを対にして整理しておきたいところです。

場面 許諾の要否
非享受目的の情報解析。AI学習のための特徴抽出など 原則として許諾は不要
但し書きにある「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」 対象外となる
学習対象と類似・同一の生成物をあえて出力させる意図があるなど、享受目的が併存すると判断される場合 対象外になりうる

とくに表の下2行は見落としやすいところです。非享受目的という条件を満たしていても、著作権者の利益を不当に害する態様や、享受目的が併存する態様であれば、第30条の4を根拠にできるとは限らないという整理になります。

著作権侵害の判断枠組みである依拠性(既にある作品を元にして作ったかどうか)と類似性(既にある作品と表現がどれくらい似ているか)も、関連する論点です。既存の著作物に依拠し、かつ表現が類似していると著作権侵害になりうるという基本の考え方は、AI生成物についても同様にあてはまります。

あわせて、著作者人格権(作品を発表するかどうかや、作品を勝手に変えられない権利など、作者の気持ちを守る権利)と著作権(財産権)は別の権利という整理も必要です。また著作権法は、特許法・意匠法・商標法・不正競争防止法などとともに、知的財産権全体の体系のなかに位置づけられています。それぞれの法律が異なる対象を保護しているという全体像を把握しておくと、個別の条文の意味も理解しやすくなります。

3. 関連概念との比較・相違点

著作権と著作権法の最大の違いは、法律そのものか、その法律に基づいて発生する権利かという主体と客体の関係にあります。著作権法は権利の内容や保護の仕組みを定める法律そのものであり、著作権はその法律に基づいて著作者に発生する財産権の総称です。ニュースなどで「著作権」と「著作権法」が同じ意味で使われることもありますが、法律そのものと、その法律から生まれる権利という関係にあります。

特許法との最大の違いは、保護対象と権利発生の仕組みにあります。特許法が保護するのはアイデアや技術的思想である発明であり、著作権法が保護するのは表現です。

権利の発生についても、特許権は特許庁への出願と審査を経てはじめて登録される仕組みで、存続期間は出願から20年です。これに対して著作権は創作と同時に自動的に発生し、保護期間は原則として著作者の死後70年です(2018年の改正で、それまでの死後50年から延長されました)。出願・登録の要否と保護期間の長さは、どちらも逆向きに覚えると取り違えやすい点です。

個人情報保護法との違いは、保護対象が創作物か、生存する個人に関する情報かという点にあります。三つの法律が何を守っているのかを並べると、次のように整理できます。

法律 保護の対象
著作権法 思想または感情を創作的に表現した著作物、いわゆる表現
特許法 アイデアや技術的思想である発明
個人情報保護法 生存する個人に関する情報

AI開発の学習データには著作物と個人情報が混在しうるため、どちらの法律の観点にあたる論点なのかをあわせて整理する必要があります。たとえば、SNSに投稿された写真を学習データに使う場合、写っている作品としての著作権と、写っている人物の個人情報の両方が関わる場面があります。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

生成AI(文章や画像などを新たに作り出すAI)開発の分野では、学習用データセットとしてWeb上の文章や画像を収集する際、著作権法第30条の4を根拠に、許諾なく情報解析目的の利用を進める運用がみられます。あわせて学習対象の選定や生成物の出力態様に配慮することで、享受目的が併存すると判断されるリスクを抑える効果があります。

コンテンツ制作・マーケティングの分野では、生成AIで作成した画像や文章を商用利用する際、既存の著作物への依拠性・類似性の観点から、既存作品と酷似していないかを確認する取り組みが行われます。この確認によって、意図せず既存作品の権利を侵害してしまう事態を避けられます。とくに商用利用の場面では、既存作品との酷似が問題になった際の影響が大きいため、確認の手間を惜しまない姿勢が実務では重視されます。

教育・研究機関では、論文や教材の作成でAIによる文献の要約や情報解析を行う際、非享受目的の範囲内といえるかどうかを踏まえたうえで著作物を利用する動きがあります。目的の範囲を意識することで、教育・研究活動と著作権者の権利保護との両立を図れます。学習内容の理解や研究の効率化に情報解析を役立てつつ、著作権者の権利を損なわない使い方が求められる場面といえます。

5. 要点まとめ

  • 著作権法は著作物を保護し文化の発展に寄与することを目的とする法律で、著作物の創作と同時に著作権が自動的に発生します。登録の手続きは不要です。
  • 2018年改正で整備された第30条の4により、非享受目的の情報解析(AI学習を含む)は原則として著作権者の許諾なく行えますが、著作権者の利益を不当に害する場合などは対象外となります。
  • 著作権法と特許法は保護対象・権利発生要件・保護期間が異なり、個人情報保護法とは保護対象(創作物か個人情報か)が異なります。

6. 確認問題

問1著作権法における著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものと定義される。

解答・解説をみる

○ 正しい

著作権法第2条第1項第1号に定められた著作物の定義そのものにあたります。文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するかどうかが、著作物にあたるかの基準になります。

問2著作権法第30条の4により、非享受目的の情報解析であれば、AIの学習データとして著作物を利用する際に著作権者の許諾を得る必要は原則としてない。

解答・解説をみる

○ 正しい

2018年改正で整備された条文の内容にあたります。ただし、著作権者の利益を不当に害することとなる場合などは対象外となる点に注意が必要です。

問3著作権は特許権と同様に、特許庁への出願と登録の審査を経てはじめて権利が発生する。

解答・解説をみる

× 誤り

正しくは、著作権は著作物を創作した時点で自動的に発生します(無方式主義)。出願・登録の審査が必要なのは特許権など産業財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権など、経済活動に関わる権利をまとめた呼び方)側であり、逆向きの記述は取り違えやすい典型です。