1. 定義と概要
パノプティックセグメンテーションとは、画像内の全ての画素をthings(人や車のように数えられる個々の物体)とstuff(空や道路のように数えられない背景領域)に分類する画像セグメンテーション手法です。「things」は個体ごとに区別してラベルを付け、「stuff」はクラスの種類ごとにまとめてラベルを付けます。
セマンティックセグメンテーションは、画像の全ての画素にクラスの名前を付けるものの、同じ種類の物体同士は区別しない手法です。インスタンスセグメンテーションは、数えられる物体だけを対象に、1つ1つを区別して検出します。パノプティックセグメンテーションは、この2つの手法が持つ機能を1つの出力形式に統合したものといえます。
従来、画像認識の分野では、物体検出(画像内の物体の位置を四角い枠で囲んで種類を判定する処理)や、セマンティックセグメンテーション、インスタンスセグメンテーションがそれぞれ別のタスクとして、別々の評価指標のもとで発展してきました。しかし、1枚の画像から背景も物体も漏れなく説明したいというニーズが高まっています。
2018年、Facebook AI Research(FAIR。Meta社の研究部門)とHeidelberg大学に所属するAlexander Kirillov氏らが、「Panoptic Segmentation」というタスクを提唱しました。翌2019年のCVPR(コンピュータビジョン分野で最も権威のある国際会議の一つ)で、この研究の論文が発表されました。
あわせて、PQ(Panoptic Quality)という統一的な評価指標も確立されています。「things」・「stuff」の両方を1つの指標で測るために考案された、パノプティックセグメンテーション特有の評価指標です。
2. 試験対策ポイント
G検定の公式テキストでは、パノプティックセグメンテーションは画像認識分野におけるディープラーニングの応用例として、セマンティックセグメンテーションやインスタンスセグメンテーションと並べて扱われます。3つの手法を対比させる形での違いは、あわせて整理しておきたいところです。
まず整理したいのは、各手法が対象とする範囲の違いです。セマンティックセグメンテーションは画像内の全ての画素にクラスのラベルを付けますが、同じクラスに属する個体同士を区別しません。一方のインスタンスセグメンテーションは、数えられる物体である「things」だけを対象に、個体ごとに検出して分離します。
パノプティックセグメンテーションはこの両方の性質を併せ持ち、「things」は個体単位、「stuff」はクラス単位でラベル付けするという二分類の考え方が、押さえておきたいポイントです。
あわせて、代表的なインスタンスセグメンテーション手法であるMask R-CNN(物体ごとの領域を画素単位で切り出せる手法)が、関連知識として登場することがあります。
また、パノプティックセグメンテーションに特有の評価指標であるPQという名称も、覚えておきたいところです。従来のセグメンテーションで個別に使われてきた指標とは別に、「things」と「stuff」の両方を1つの数値で統一的に評価する点が、PQの特徴です。
3. 関連概念との比較・相違点
セマンティックセグメンテーションとの最大の違いは、同じクラスに属する物体を個体として区別するかどうかです。セマンティックセグメンテーションも画像の全ての画素にラベルを付ける点は、パノプティックセグメンテーションと共通しています。
しかし、たとえば2人の人物が写っていても「人」という1つのクラスとしてまとめて扱われ、個々の人物を分離できません。パノプティックセグメンテーションはこの点を補い、「things」に分類される物体を個体単位で分離したうえでラベル付けします。
インスタンスセグメンテーションとの最大の違いは、画像全体を漏れなく扱うかどうかです。インスタンスセグメンテーションは数えられる物体である「things」のみを検出・分離の対象とし、空や道路のような背景領域は扱いません。
パノプティックセグメンテーションは、背景にあたる「stuff」もクラス単位でラベル付けし、画像を構成する画素を1つも余さず説明する点で、対象とする範囲が異なります。
4. ビジネス・実務での活用シナリオ
自動運転の分野では、歩行者や車両を個体ごとに追跡しながら、道路・歩道・空といった背景領域も同時に分類する用途で使われています。走行可能な領域の把握と、個々の障害物を避ける判断とを1つの認識結果で両立できる点が、パノプティックセグメンテーションが選ばれる理由です。
医療画像診断の支援では、腫瘍のような物体を個体単位で計測しながら、周辺の臓器や組織といった背景領域も分類します。物体の位置と周辺組織との位置関係が1つの出力にまとまることで、診断を補助する情報としての価値が高まります。
ロボティクスの分野では、ロボットが把持する対象の物体を個体ごとに認識しながら、床や壁などの背景を移動・作業が可能な領域として区別します。物体の位置とロボットが動ける範囲を同時に把握できることが、ピッキングや移動の判断に結び付きます。
5. 要点まとめ
- パノプティックセグメンテーションは、セマンティックセグメンテーションとインスタンスセグメンテーションを統合し、「things」(物体)は個体単位、「stuff」(背景領域)はクラス単位でラベル付けする手法です。
- 2018年にKirillov氏らが提唱し、2019年のCVPRで論文が発表され、統一評価指標であるPQ(Panoptic Quality)とあわせて確立されました。
- セマンティックセグメンテーションはクラス単位のみ、インスタンスセグメンテーションは数えられる物体のみを対象とするという、各手法の対象範囲の違いが対比のポイントです。
6. 確認問題
問1パノプティックセグメンテーションは、画像内の全ての画素にラベルを付与しつつ、数えられる物体については個体ごとに区別して認識する手法である。
解答・解説をみる
○ 正しい
「things」(物体)は個体単位、「stuff」(背景領域)はクラス単位でラベルを付ける統合的な手法であり、記述のとおりです。
問2インスタンスセグメンテーションは、空や道路のような数えられない背景領域も含めて、画像内の全ての画素にラベルを付与する。
解答・解説をみる
× 誤り
インスタンスセグメンテーションが対象とするのは、数えられる物体である「things」のみです。背景を含めた全画素のラベリングは、セマンティックセグメンテーションとパノプティックセグメンテーションが担う役割で、対象範囲を取り違えた記述です。正しくは、インスタンスセグメンテーションは背景領域を対象に含めないという点です。
問3パノプティックセグメンテーションでは、画像を構成する要素を「things」(数えられる物体)と「stuff」(数えられない領域)に分類したうえで、異なる方式でラベル付けする。
解答・解説をみる
○ 正しい
「things」は個体ごとに、「stuff」はクラスの種類ごとにラベル付けされます。この二分類こそが、パノプティックセグメンテーションというタスクの核となる考え方です。

