ARMAモデル (G検定)

ARMAモデル

1. 定義と概要

ARMAモデル(自己回帰移動平均モデル)とは、自己回帰(AR)モデルと移動平均(MA)モデルを組み合わせた時系列モデルで、ARMA(p,q)と表記します。組み合わせる2つのモデルは、それぞれ現在の値の説明のしかたが異なります。

自己回帰(AR)モデルとは、現在の値を過去の値だけから説明しようとするモデルです。移動平均(MA)モデルとは、現在の値を過去の誤差、つまり予測のズレだけから説明しようとするモデルです。ARMAモデルは、この2つの説明のしかたを1つの式にまとめたものにあたります。

式のうえでは、現在の値ytを3つの要素の足し合わせで表現します。1つ目は過去p時点分の値の線形結合(それぞれの値に係数を掛けて足し合わせたもの)であるAR項、2つ目は過去q時点分の誤差(ホワイトノイズ。平均がゼロで時点ごとの関連がない、ランダムなばらつき)の線形結合であるMA項、3つ目は現時点の誤差項です。この手法を体系化した統計学者のジョージ・ボックスとジェンキンスの名にちなみ、ボックス・ジェンキンスモデルとも呼ばれます。

時系列データの分析では、当初は過去の値だけから現在を説明するARモデルと、過去の誤差だけから現在を説明するMAモデルが別々に用いられていました。しかし、どちらか一方だけでは表現しきれない変動パターンを持つデータが存在するという課題がありました。

そこで両者を組み合わせ、過去の値の慣性(トレンド的な動き)と過去の誤差によるショック(急な変動)の両方を同時に説明できるARMAモデルが用いられるようになりました。ARMAモデルは、分析対象の時系列が定常性(平均・ばらつき・自己相関の強さが時間によらず一定である性質)を持つことを前提とします。

2. 試験対策ポイント

G検定では、ARMA(p,q)がAR(p)項とMA(q)項という2つの部分から構成されることが重要なテーマです。AR(p)項は過去p時点分の実測値に依存する自己回帰の部分で、MA(q)項は過去q時点分の誤差、つまりホワイトノイズに依存する移動平均の部分です。pとqはそれぞれの次数(ARMAモデルで過去何時点分の値・誤差まで使うかを表す数)を表します。

ARMAモデルは定常時系列を前提とするモデルであり、構成するARモデル・MAモデルがともに定常であるとき、ARMAモデルも定常過程となります。この定常性の前提は、後述するARIMAモデルとの比較で分岐点になります。

また、誤差項として扱うホワイトノイズは、平均がゼロでばらつきの大きさが一定、かつ時点間で無相関という性質を持つ確率変数(値がランダムに決まる変数)として仮定されます。この仮定は、MA項の意味づけの土台になっています。

次数p、qの決定には、自己相関関数(ACF)と偏自己相関関数(PACF)の減衰・切断パターンを確認する手順があります。自己相関関数(ACF)とは、ある時点のデータと、そこから一定期間離れた時点のデータがどれくらい似ているかを表す指標です。偏自己相関関数(PACF)とは、間にある時点の影響を取り除いたうえで、2つの時点のデータの関連の強さを表す指標です。

この一連の手順は、次数決定から予測までを含めてボックス・ジェンキンス法と呼ばれます。次数を決めてから予測に進むという流れそのものが、名前とセットで押さえておきたい部分です。

3. 関連概念との比較・相違点

ARモデル・MAモデル単体との最大の違いは、片方の情報しか使わないか、両方を組み合わせるかという点にあります。ARモデル単体は過去の実測値のみに依存し、MAモデル単体は過去の誤差のみに依存するのに対し、ARMAモデルは両者を組み合わせることで、値の慣性とショックの両方を同時に捉えます。各モデル固有の性質や数式の詳細な深掘りは、それぞれ別の記事に譲ります。

関連する4つのモデルを、使う情報と捉えられる変動の観点で並べると次のようになります。

モデル 使う情報 捉えられる変動
ARモデル 過去の実測値のみ 値の慣性
MAモデル 過去の誤差のみ 突発的なショック
ARMAモデル 過去の実測値と過去の誤差の両方 慣性とショックの両方
ARIMAモデル 差分をとったうえで両方 非定常データのトレンドや季節性

ARIMAモデルとの最大の違いは、非定常データへの対応の有無です。ARMAモデルは定常時系列を前提とするのに対し、ARIMAモデルはd階差分(和分。前後の差をとる処理)をとることで、トレンドや季節性を持つ非定常データにも対応できます。

ARIMA(p,d,q)は、d=0のときARMA(p,q)と一致するという関係にあり、ARMAはARIMAの特殊なケースと位置づけられます。差分の具体的な取り方などARIMAモデルの詳細は別記事に譲りますが、この定常性の前提が両モデルを分ける軸になっています。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

金融分野では、為替レートや株価の変動率など、比較的定常性が保たれやすい系列の短期的な変動パターンの分析にARMAモデルが用いられる場面があります。過去の値の慣性と突発的な変動の両方を1つのモデルで捉えられる点が、実務上の利点になります。

電力・エネルギー需要予測の分野では、気温や需要量など周期的で比較的安定した変動を示すデータの短期予測に、ARMAモデルによる時系列分析が使われる場面があります。気温や需要量は季節や時間帯に応じた一定の周期性を持つ一方で、日々の細かな変動には誤差的なばらつきが混じります。ARMAモデルはこの両方の性質を同時に扱えるため、需給バランスを見込んだ短期予測に適しています。

製造・品質管理の分野では、製造工程の測定値の変動を自己回帰成分とノイズ成分に分解して捉えることで、通常のばらつきと異常な変動を切り分ける分析に応用できます。工程が安定している間の測定値には、通常の範囲内のばらつきが自己回帰的な慣性として現れます。そこにホワイトノイズでは説明しきれない急な変化が生じた場合、異常の兆候として捉えることができます。

5. 要点まとめ

  • ARMAモデルはARモデル(過去の値)とMAモデル(過去の誤差)を組み合わせたARMA(p,q)で表され、定常時系列を前提とします。
  • 非定常データへの対応が必要な場合はd階差分を組み込んだARIMAモデルを用い、d=0のときARIMAはARMAと一致します。
  • 次数p、qの決定には自己相関関数(ACF)と偏自己相関関数(PACF)の減衰・切断パターンを確認します。

6. 確認問題

問1ARMA(p, q)モデルは、自己回帰(AR)項の次数pと移動平均(MA)項の次数qを持ち、現在の値を過去の実測値と過去の誤差(ホワイトノイズ)の線形結合で表す。

解答・解説をみる

○ 正しい

ARMAモデルの定義そのものであり、ARモデルとMAモデルを組み合わせた構造をp、qの2つの次数で表します。過去の値への依存と過去の誤差への依存が同時に含まれる点が特徴です。

問2ARMAモデルは、トレンドや季節性を持つ非定常な時系列データにもそのまま適用でき、差分をとる必要がない。

解答・解説をみる

× 誤り

ARMAモデルは定常時系列を前提とするモデルであり、非定常データに適用するには差分(和分)をとって定常化する必要があります。正しくは、差分を組み込んだARIMAモデルを用いるという順番です。非定常データへの対応が必要な場面では、ARIMAが選ばれます。

問3ARMAモデルにおいて、MA項は過去の誤差(ホワイトノイズ)の影響を、AR項は過去の実測値の影響を表す。

解答・解説をみる

○ 正しい

AR項とMA項の役割分担そのものであり、ARは過去の値への依存、MAは過去の誤差への依存という対応関係にあります。この対応関係は次数p、qの意味を理解するうえでの土台になります。