松原仁 (G検定)

松原仁

1. 定義と概要

松原仁(1959年生、東京都練馬区出身)とは、人工知能学会監修の書籍『人工知能とは』(2016年)で人工知能の定義を寄稿した情報工学者(コンピュータや情報処理の技術を研究する学者)です。電子技術総合研究所(かつて存在した国の研究機関で、松原仁が最初に所属した職場)を経て、複数の大学で教授職を歴任しています。

所属の移り変わりは、時期とあわせて並べると追いやすくなります。

時期 所属
キャリアの出発点 電子技術総合研究所
2000年〜 公立はこだて未来大学(北海道函館市にある、情報系に特化した公立大学)教授
2020年〜 東京大学大学院情報理工学系研究科教授
2024年〜 京都橘大学工学部教授

電子技術総合研究所ではコンピュータ将棋(コンピュータに将棋を指させる研究分野)の研究に携わり、後年はロボカップ(自律型ロボットによるサッカーなどを競う国際的な競技大会)の設立や学会運営にも携わりました。

人工知能学会(日本の人工知能研究者が集まる学術団体)監修の書籍『人工知能とは』(2016年刊、13名の研究者の定義を収録)が刊行されました。当時公立はこだて未来大学教授だった松原仁は、その中で人工知能を「究極には人間と区別が付かない人工的な知能のこと」と定義しました。なお、同姓同名の政治家(衆議院議員)とは別人です。

「人工知能とは何か」という問いには、知能そのものの定義が定まっていないことを背景に、研究者ごとに異なる答えがあり統一見解が存在しません。2016年、人工知能学会監修の書籍『人工知能とは』では、13名の研究者がそれぞれの定義を寄稿し、その一つとして松原仁の定義が並びました。

寄稿者には、中島秀之(「知能を持つ実体」という定義で知られる人工知能研究者)や西田豊明、松尾豊(東京大学教授で「人工的につくられた人間のような知能」という定義で知られる研究者)が含まれます。G検定の「人工知能とは」の章では、この定義一覧が代表的な論点として扱われ、各定義の文言と提唱者の名前を正しく結びつけられるかどうかが分かれ目になります。

2. 試験対策ポイント

松原仁の定義「究極には人間と区別が付かない人工的な知能のこと」という文言そのものと、提唱者名の対応関係は重要な論点です。似た表現を持つ定義が並ぶため、文言と提唱者を対応させて確認しておくと取り違えを防げます。

研究者 人工知能の定義
松原仁 究極には人間と区別が付かない人工的な知能のこと
松尾豊 人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術
中島秀之 人工的につくられた、知能を持つ実体

いずれも人間に近い知能を想定した言い回しで、文言の一部だけを覚えていると提唱者を取り違えやすくなります。

松原仁は電子技術総合研究所でコンピュータ将棋の研究に携わった研究者でもあります。人間の思考過程を模した認知モデル(人間の思考や判断の過程をコンピュータ上で再現するための枠組み)に基づくアプローチをとったことで知られており、盤面の評価を人間の思考の流れに近づけて設計しようとした点が特徴です。

1993年には、北野宏明(ソニーCSL)・浅田稔(大阪大学)らとともにロボカップの設立を提唱し、1997年に第1回大会が開催されました。ロボカップは、2050年までに人間のワールドカップチャンピオンチームに勝てる自律型ロボット(人間の操作なしに自分で状況を判断して動くロボット)チームを作るという目標を掲げています。

加えて松原仁は2014年から2016年にかけて人工知能学会の第15代会長を務めており、コンピュータ将棋・ロボカップ・学会運営という3つの実績が経歴の柱になります。

3. 関連概念との比較・相違点

松尾豊の定義との最大の違いは着眼点にあります。松尾豊は人工知能を「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術」と定義しており、人間に近い知能の存在や技術そのものに焦点を当てています。一方、松原仁の定義は「究極には人間と区別が付かない人工的な知能のこと」であり、人間との識別不能性という性質そのものに焦点を当てています。

両者とも人間に近い知能を想定する点は共通していますが、文言と着眼点が異なるため取り違えやすい論点です。両者の名前と文言をセットで覚えておくことが、この分野の問題を解く手がかりになります。

中島秀之の定義との違いは、定義の構造にあります。中島秀之は人工知能を「人工的につくられた、知能を持つ実体。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究する分野」と定義しており、「実体」と「学問分野」という二重の意味を持たせています。

松原仁の定義は知能そのものの性質、つまり識別不能性に絞った一文であり、学問分野としての側面には触れていない点が異なります。同じ「人工知能」という語を扱いながら、何に焦点を当てるかが研究者ごとに分かれる様子が、この2つの定義の対比から見えてきます。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

松原仁が携わったコンピュータ将棋研究では、人間の思考過程を模した認知モデルによる評価関数設計(盤面の状況を数値化してどちらが有利かを判定する仕組みを作ること)の考え方が使われました。この考え方は、将棋以外のボードゲームAIや対戦型ゲームAIの精度向上の参考にされています。盤面や状況を数値化して評価する発想は、ゲームの種類が変わっても応用が利く考え方です。

ロボカップで培われた自律型ロボットの自己位置推定(ロボットが周囲の情報から自分がどこにいるかを割り出す技術)・協調行動(複数のロボットが役割分担しながら動く技術)といった技術は、国際競技会という枠を超えています。物流倉庫の搬送ロボットや災害対応ロボットの要素技術として応用される事例があり、競技のために磨かれた技術が実社会の課題解決に転用される流れを示しています。

人工知能学会第15代会長として、第3次AIブーム(ディープラーニングの実用化を背景とした2010年代以降のAI研究・活用の高まり)さなかに学会運営を担った経験があります。この経験は、AI研究コミュニティの方向性を取りまとめる組織マネジメントの事例として参照されます。研究者コミュニティ全体を束ねる役割は、個々の技術開発とは異なる種類の実務能力が求められる場面です。

5. 要点まとめ

  • 松原仁は、当時公立はこだて未来大学教授だった2016年、人工知能学会監修『人工知能とは』で人工知能を「究極には人間と区別が付かない人工的な知能のこと」と定義した研究者です。
  • 1993年に北野宏明・浅田稔らとロボカップの設立を提唱し、コンピュータ将棋の研究者としても知られています。
  • 人工知能学会第15代会長(2014〜2016年)を務め、松尾豊・中島秀之ら他の研究者の定義と文言・提唱者の対応関係は、混同しやすいところです。

6. 確認問題

問1松原仁は、人工知能を「究極には人間と区別が付かない人工的な知能のこと」と定義した研究者である。

解答・解説をみる

○ 正しい

人工知能学会監修『人工知能とは』(2016年)に収録された定義で、当時の肩書は公立はこだて未来大学教授です。この定義文言と提唱者名の対応は重要な論点です。

問2松原仁は、北野宏明・浅田稔らとともにロボカップの設立を提唱し、1997年に第1回大会が開催された。

解答・解説をみる

○ 正しい

1993年に電子技術総合研究所所属の松原仁が、ソニーCSLの北野宏明・大阪大学の浅田稔らとともにロボカップを提唱し、1997年から毎年開催されています。

問3松原仁は、人工知能を「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術」と定義しており、これは松尾豊の定義と同一の文言である。

解答・解説をみる

× 誤り

「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術」は松尾豊の定義です。正しくは、松原仁の定義は「究極には人間と区別が付かない人工的な知能のこと」であり、文言が異なります。似た定義の提唱者を取り違えやすい典型例です。