UX (G検定)

UX

1. 定義と概要

UXとは、ISO 9241-210(人間中心設計に関するUXの定義を含む国際規格)において「製品、システムまたはサービスの利用時、および/もしくは、利用を予期したときに生じる個人の知覚と反応」と定義される概念です。使っている最中の使いやすさだけでなく、使う前に抱く期待や、使い終えたあとの満足感まで含む体験の全体を指します。

たとえば、ECサイトで欲しい商品をスムーズに探して購入でき、届いた商品にも満足するという一連の流れ全体がUXにあたります。検索のしやすさや決済画面の分かりやすさだけでなく、注文から到着までの待ち時間や、開封したときの印象までもがUXを形づくる要素です。

従来、製品やサービスの評価軸は、操作のしやすさを指すユーザビリティ(製品やサービスの使いやすさの度合い)が中心でした。転機は1993年です。認知科学者としてApple社に在籍していたドナルド・ノーマンは、ヒューマンインターフェースやユーザビリティという言葉では対象が狭すぎると考えました。

そこで、工業デザイン・画面表示・操作感・マニュアルまで、人がシステムと関わるすべての側面を包含する語として「ユーザーエクスペリエンス」を作りました。その後、ヤコブ・ニールセンとともにニールセン・ノーマン・グループ(NN/g)を設立し、UXという考え方を広めています。

2010年には国際規格ISO 9241-210として定義が明文化され、人間中心設計(利用者の視点を起点に置いて製品やサービスを設計する考え方)の中核概念の一つに位置づけられています。単なる見た目の使いやすさを超え、利用者の知覚や反応そのものを対象にする点に、この語の成り立ちが表れました。

2. 試験対策ポイント

UIとUXの関係は、まず整理しておきたい基本です。UI(ユーザーインターフェース、画面のボタンや操作系など利用者と製品の接点そのもの)は利用者と製品が触れ合う部分を指し、UXはその接点を通じて得られる体験の全体を指します。UIはUXを構成する一要素にすぎないという位置づけです。

画面デザインがどれほど整っていても、注文後のサポート対応や配送の速さといった別の要素が体験を左右する場面は少なくありません。

ユーザビリティとの関係も取り違えやすい点です。ユーザビリティはUXを構成する一要素であり、UXは使う前の期待や使い終えたあとの満足まで含む、より広い概念にあたります。この包含関係は、UXの成り立ちを考えるうえでの土台になります。

加えて、ドナルド・ノーマンの提唱、ニールセン・ノーマン・グループの設立、ISO 9241-210による定義の明文化という関連知識の束は、UXという語の背景を押さえるうえで欠かせません。

AI文脈では、AIの判断根拠が見えないことが利用者の不安や不信感につながる点が論点になります。XAI(説明可能なAI)とは、AIの判断根拠を人に分かる形で示す技術・研究分野です。この分野とUXは、近い関心を共有しています。

また、AIの精度が高いだけでは製品やサービスとして使われるとは限りません。利用者が理解し使いこなせるかというUXの視点が、AIの社会実装の成否を左右するという論点もあわせて押さえておきたいところです。

3. 関連概念との比較・相違点

UI(ユーザーインターフェース)との最大の違いは、指し示す範囲の広さです。UIは利用者と製品・サービスの接点そのもの、画面やボタン、操作系を指すのに対し、UXはそのUIを含む利用体験全体を指します。

UIはUXを構成する要素の一つという包含関係にあり、UIが優れていてもサポート対応など他の要素が悪ければ、UX全体の質は保てません。UIそのものの詳しい成り立ちは別記事に譲り、ここではUXとの関係に絞って整理します。

CX(カスタマーエクスペリエンス、企業とのあらゆる接点で顧客が得る体験全体)との関係も見ておきたいところです。UXが製品やサービスの利用体験に焦点を当てるのに対し、CXは購入前の広告接触から購入後のサポート対応まで、企業とのあらゆる接点における体験を含む、より広い概念にあたります。

UXはCXを構成する要素の一つという関係にあり、UIをUXが包み、そのUXをさらにCXが包むという入れ子の構造で捉えられます。UIが画面上の操作、UXが製品の利用体験、CXが企業とのブランド全体の関わりという具合に、対象の範囲が段階的に広がっていく点が三者の要点です。CXそのものの独自の論点は別記事に譲ります。

CS(顧客満足度)との違いは、体験と結果という視点の違いです。CS(顧客満足度)は、利用者がどの程度満足しているかを表す結果の指標であるのに対し、UXは満足に至るまでの体験のプロセス全体を指します。UXが積み重なった先に表れる結果指標がCSにあたるという位置づけです。

なお、同じ「CS」という略語には、カスタマーサクセス(顧客が製品・サービスを通じて成果を得られるよう能動的に支援する考え方)という意味もありますが、これは顧客満足度という結果指標とは別の、能動的な支援活動を指す言葉です。ここまでに登場した四つの語を、対象の範囲の狭いほうから並べると次のように整理できます。

概念 指し示す対象
UI 利用者と製品・サービスの接点そのもの。画面やボタン、操作系
UX UIを含む、製品・サービスの利用体験全体
CX 購入前の広告接触から購入後のサポートまで、企業とのあらゆる接点における体験
CS(顧客満足度) 体験の結果として測られる満足の指標

UI・UX・CXが体験の設計対象を表すのに対し、CS(顧客満足度)は体験の結果として測られる指標という違いがあります。設計する側の概念か、測る側の指標かという軸で線を引くと、四つの関係が捉えやすくなります。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

EC・小売の分野では、商品を探しやすくするだけでなく、購入前に抱く期待から到着後の使用感まで一貫して設計する取り組みが進んできました。検索のしやすさという単一の指標にとどまらず、期待と実物の一致度まで含めて設計することで、リピート購入や好意的な評価につながります。

金融・与信の分野では、AIによる審査結果に判断の根拠を添えて提示する取り組みが見られます。数値だけを提示するのではなく理由まで示すことは、審査プロセス全体に対する利用者の不安を和らげ、体験の質を高める工夫です。説明可能性がUXの一部として意識される場面にあたります。

インターネット経由で提供され、利用期間に応じて料金を払うソフトウェア「SaaS」の分野では、AIによる推薦機能やチャットボット(文字入力でAIと会話できる仕組み)を導入する動きがあります。精度の高さだけでなく、利用者が結果を理解し使いこなせるかまで設計に含めることが、実際の利用や定着への近道です。

5. 要点まとめ

  • UXとは、製品やサービスの利用を通じて利用者が得る体験の全体を指し、ISO 9241-210では「利用または利用を予期したことで生じる個人の知覚と反応」と定義されます。
  • UIはUXを構成する一要素、CXはUXを含むより広い顧客接点全体の体験、CSは体験の結果として得られる満足・成果という位置づけの違いがあります。
  • AIの判断根拠が見えないことは利用者の不安につながりやすく、精度の高さだけでなく理解し使いこなせるかというUXの視点が、AIの社会実装で重要な論点になります。

6. 確認問題

問1UXとは、製品・サービスの利用前に抱く期待から、利用中の使いやすさ、利用後の満足までを含む体験全体を指す概念である。

解答・解説をみる

○ 正しい

ISO 9241-210の定義のとおり、UXは利用時や利用を予期したときに生じる知覚と反応の総体であり、使用前後を含む体験全体を指します。使いやすさだけを指す言葉ではない点が要点です。

問2UIとUXは同じ概念であり、画面デザインを改善すればUXも自動的に向上する関係にある。

解答・解説をみる

× 誤り

正しくはUIはUXを構成する一要素にすぎません。UIが優れていてもサポート対応や配送体験など他の要素が悪ければ、UX全体は損なわれます。同一視する記述は取り違えやすい典型です。

問3CX(カスタマーエクスペリエンス)は、UXを含みつつ、購入前の広告接触から購入後のサポートまで企業とのあらゆる接点における体験を対象とする、より広い概念である。

解答・解説をみる

○ 正しい

UXが製品・サービスの利用体験に焦点を当てるのに対し、CXはそれを包含し、企業とのブランド全体の接点まで含む広い概念にあたります。UIをUXが包み、UXをCXが包むという入れ子の関係で捉えられます。