Neural Architecture Search(NAS) (G検定)

Neural Architecture Search(NAS)

1. 定義と概要

Neural Architecture Search(NAS)とは、ニューラルネットワークの構造(層の数・種類・つながり方など)を人間の手作業設計に頼らず、探索アルゴリズムによって自動的に見つけ出す枠組みの総称です。構造の候補を提案し、学習・検証した結果をもとに次の候補を絞り込むという探索ループを繰り返しながら、良い構造にたどり着きます。

具体例として、NASによって発見された画像認識向けのネットワーク構造にNASNet(画像認識向けに探索された構造)があります。あわせてMnasNet(スマートフォンなど実機での処理速度も考慮して探索された構造)、EfficientNet(精度と計算量のバランスを重視して探索された構造)も、NASという枠組みを使って得られた個別の成果です。

従来のニューラルネットワーク開発では、層の数やフィルタ(画像から特徴を取り出すために当てる小さな窓)のサイズ、層同士のつなぎ方といった構造を人間があらかじめ設計し、学習によって重みだけを最適化する手法が一般的でした。しかし構造の組み合わせは膨大であり、どの組み合わせが良い性能を生むかを人間の直感だけで見極めるには限界があります。

この課題に対し、構造の探索自体を計算機に任せる発想の転換として登場したのがNASです。候補となるネットワーク構造を次々に提案する役割を担うコントローラと呼ばれる仕組みが新しい構造を提案し、その構造を実際に学習・検証した精度を手がかりに、次はより良さそうな構造を提案するというループを繰り返しながら優れた構造に近づいていきます。

2. 試験対策ポイント

まず整理しておきたいのは、ハイパーパラメータ探索との違いです。ハイパーパラメータ(学習を始める前に人があらかじめ設定しておく値で、学習率やバッチサイズなどが代表例です)を対象にするのがハイパーパラメータ探索です。これに対しNASは、層の数・種類・つながり方といったネットワークの構造そのものを探索対象にする点で、対象のレベルが異なります。

「AutoML」との上下関係もあわせて整理したいところです。「AutoML」は機械学習の工程全体を自動化する取り組み全般を指し、前処理や特徴量(データの中から予測に役立つ情報を取り出したもの)の設計、モデル選択、ハイパーパラメータの調整などが含まれます。NASはそのうちアーキテクチャ探索の部分を担う一分野という位置づけです。

探索の進め方には複数の方向性があります。それぞれの土台となる考え方を対応させて整理します。

探索の方向性 土台となる考え方
強化学習(試行錯誤を繰り返しながら報酬が最大になるような行動の選び方を学習していく手法)に基づく手法 候補構造の精度を手がかりに、構造の提案の仕方を更新していく
進化的アルゴリズム(生物の世代交代・突然変異・淘汰の仕組みを模して、良い解を少しずつ探していくアルゴリズムの総称)に基づく手法 生物の進化になぞらえて、候補構造を世代ごとに少しずつ改良する
勾配ベースの手法(微分〈勾配〉の情報を手がかりに探索する手法) 構造の探索と学習を同時に効率よく進める

個々の手法の仕組みの細部よりも、複数の方向性が存在するという理解が中心的な論点になります。

候補となる構造の一つひとつについて学習と検証を繰り返す必要があるため、莫大な計算資源と時間がかかる点は実用上の課題です。この課題を和らげるため、候補どうしで学習結果の一部を使い回す手法や、探索対象の範囲をあらかじめ絞り込む手法など、効率化のための改良が重ねられてきました。NASNet・MnasNet・EfficientNetの名前は、あわせて押さえておきたいところです。

3. 関連概念との比較・相違点

NASは、名前の似た自動化の枠組みと混同されやすい技術です。それぞれが何を対象にしているのかを対応させて整理します。

概念 自動化・探索の対象 位置づけ
「AutoML」 前処理・特徴量設計・モデル選択・ハイパーパラメータ調整など工程全体 NASを含む上位の枠組み
ハイパーパラメータ探索 学習率やバッチサイズといった学習の設定値 NASとは探索対象のレベルが異なる
NAS 層の数・種類・つながり方といったネットワークの構造 「AutoML」に含まれる一分野

「AutoML」との最大の違いは、上位概念か下位概念かという点にあります。両者は対立する技術ではなく、「AutoML」という大きな枠組みの中にNASが含まれるという関係なのです。全体の自動化を目指す取り組みの中に、構造探索という個別の役割を持つNASが組み込まれているとイメージすると分かりやすいところです。

ハイパーパラメータ探索との最大の違いは、何を探索対象にするかという点にあります。同じ「探索」という言葉が使われていても、探す対象が学習の設定値なのか構造そのものなのかで大きく異なる点は、取り違えやすいところです。

なお、ハイパーパラメータ探索の細かな仕組み(候補を格子状に総当たりするグリッドサーチや、過去の試行から次の有望な候補を推定するベイズ最適化など)は、別のテーマとして扱われます。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

画像認識・コンピュータビジョンの分野では、EfficientNetのようにNASによって得られたモデルが画像分類や物体検出の土台として使われています。人手による設計より少ない計算資源で高い精度を出す構造の指針になっている点が、この分野での位置づけです。

モバイル・エッジ端末向けのAI開発では、MnasNetモデルのように、精度だけでなく実機での処理速度や消費電力といった制約条件をあわせて考慮した探索が行われています。スマートフォンなど限られた計算資源の上で動くモデルの設計に活用されている事例です。

AutoMLサービスを提供するクラウド事業者にとっても、NASは背景理論の一つです。NASを土台とした自動モデル設計の仕組みにより、専門知識を持たない利用者でも一定水準の精度を持つモデルを構築できる環境が整っています。

5. 要点まとめ

  • NASはネットワークの構造そのものを自動探索する枠組みであり、学習の設定値を探すハイパーパラメータ探索や、機械学習工程全体を自動化する「AutoML」とは対象のレベルが異なります。
  • 探索の進め方には強化学習ベース・進化的アルゴリズム・勾配ベースなど複数の方向性があり、候補構造の学習と検証を繰り返しながら良い構造に近づいていく点が特徴です。
  • 計算コストの大きさが実用上の課題であり、NASNet・MnasNet・EfficientNetはNASという枠組みによって得られた代表的なモデルとして位置づけられます。

6. 確認問題

問1NAS(Neural Architecture Search)は、学習率やバッチサイズといった学習の設定値ではなく、層の数や層同士のつながり方といったネットワークの構造そのものを探索の対象とする。

解答・解説をみる

○ 正しい

学習の設定値を対象にするハイパーパラメータ探索とは異なり、NASは構造そのものを探索対象にする点が両者の違いにあたります。対象のレベルの違いとしてあわせて整理しておきたいところです。

問2NASは「AutoML」よりも広い概念であり、「AutoML」はNASの一部分として位置づけられる。

解答・解説をみる

× 誤り

関係が逆になっています。正しくは、「AutoML」が機械学習の工程全体を自動化する総称であり、NASはそのうちアーキテクチャ探索を担う一部分として位置づけられます。上位・下位の取り違えやすい点です。

問3NASでは候補となるネットワーク構造の一つひとつについて学習と検証を繰り返す必要があるため、大きな計算コストが実用上の課題になっている。

解答・解説をみる

○ 正しい

候補構造ごとに学習・検証を行う探索の仕組み上、莫大な計算資源と時間がかかることが実用面での課題として位置づけられます。効率化のための改良も並行して重ねられてきました。