STRIPS (G検定)

STRIPS

1. 定義と概要

STRIPSとは、Stanford Research Institute Problem Solver(スタンフォード研究所問題解決システム)の略称です。1971年にリチャード・ファイクスとニルス・ニルソンがSRIインターナショナル(アメリカの民間研究機関)で発表した自動計画システムを指します。行動を「前提条件(precondition。その行動を実行するために満たしておく必要がある条件)」「削除リスト(delete list。行動の実行によって成り立たなくなる条件の一覧)」「追加リスト(add list。行動の実行によって新たに成り立つようになる条件の一覧)」の3つの要素で記述する点が核心です。

具体例として、積み木の世界(ブロックワールド。ブロックの配置や移動を扱う、AIの計画研究で使われる簡略化された仮想空間)で、ブロックxをyの上からzの上へ移動する行動を考えます。この行動を3つの要素に当てはめると、次のように書き出せます。

要素 移動の行動での中身
前提条件 xの上とzの上に何も乗っていない、かつxがyの上にある
削除リスト 「xがyの上にある」「zの上に何も乗っていない」
追加リスト 「xがzの上にある」「yの上に何も乗っていない」

削除リストは移動によって成り立たなくなる条件、追加リストは移動によって新たに成り立つ条件にあたります。

プランニングとは、初期状態から目標状態に至るまでの行動の並び(計画)をコンピュータに自動で組み立てさせる研究分野の総称です。STRIPS以前の計画生成では、目標達成に必要な行動の探索に定理証明の手法をそのまま応用しており、計算量が大きくなりやすいという課題がありました。

STRIPSは行動ごとの効果を前提条件・削除リスト・追加リストという簡潔な形式で記述することで、行動の前後で状態がどう変化するかを効率的に計算できるようにしています。G検定のシラバスでは、第一次AIブーム期の探索・推論分野の代表的な成果として、ハノイの塔やSHRDLUと並んで扱われます。

2. 試験対策ポイント

固有情報としてまず整理しておきたいのが、名称・人物・年・組織の4点です。正式名称はStanford Research Institute Problem Solver(スタンフォード研究所問題解決システム)です。開発者はリチャード・ファイクスとニルス・ニルソンの2名、発表時期は1971年、開発組織はSRIインターナショナルになります。この4点はセットで覚えておく価値のある論点です。

もう一つの軸は、行動を「前提条件」「削除リスト」「追加リスト」の3要素で記述する方式そのものです。前提条件はその行動を実行するために満たしておく必要がある条件、削除リストは行動後に成り立たなくなる条件、追加リストは行動後に新たに成り立つ条件を指します。

この3つの役割を取り違えないことが、STRIPSを理解するうえでの重要な論点です。とくに削除リストと追加リストは名前が似ているため、行動前に消えるのが削除リスト、行動後に生まれるのが追加リストという向きの違いを整理しておくと役立ちます。

STRIPSは、第一次AIブーム(1950年代後半から1960年代に起こった、探索と推論を中心とした最初の人工知能研究の盛り上がり)期の探索・推論(既知の情報から結論を導き出す処理)分野の成果です。SHRDLU(積み木の世界で自然言語の指示を理解して物体を動かした対話型のAIシステム)やハノイの塔と並んで扱われます。

いずれもコンピュータに目標達成までの手順を自動的に導かせる研究であるという共通点があり、名称と特徴を結び付けて覚えておくことが試験対策になります。

3. 関連概念との比較・相違点

プランニング(目標を達成するための行動の順番をコンピュータに考えさせる研究分野)とSTRIPSの関係は、上位概念と個別方式の関係にあります。プランニングは初期状態から目標状態に至る行動系列を自動生成する研究分野全般を指し、STRIPSはその行動を前提条件・削除リスト・追加リストの3要素で記述する具体的な方式の一つです。プランニング自体の詳しい考え方は別の項目に譲りますが、STRIPSはプランニングという広い枠組みの中の一手法という位置づけになります。

SHRDLU(積み木の世界で自然言語の指示を理解して物体を動かした対話型のAIシステム)との最大の違いは、登場時期と役割にあります。SHRDLUはテリー・ウィノグラードが1968年から1970年にかけてMITで開発した、自然言語の指示を理解して積み木の世界の物体を動かす対話型システムで、内部に行動計画を立てる仕組みを備えています。

一方のSTRIPSは、1971年にSRIインターナショナルで発表された行動記述・計画生成のアルゴリズムそのものです。両者は同じ積み木の世界という題材を扱う点は共通しますが、自然言語理解を含む対話システム(人の言葉によるやり取りを通じて処理を進める仕組み)か、行動計画の記述方式そのものかという点で異なります(SHRDLUの詳細は別記事で扱います)。

PDDL(Planning Domain Definition Language)との違いは、時代と標準化(多くの人が共通の方式で使えるよう仕様を統一すること)の度合いにあります。PDDLは1998年にドリュー・マクダーモットらが自動計画技術の国際競技会向けに策定した記述言語で、STRIPSの前提条件・効果という記述文法を土台に発展しました。

STRIPSが個別の研究システムであったのに対し、PDDLは現在の自動計画研究で広く使われる標準的な記述言語という位置づけにあります。三つの関連概念とSTRIPSの関係を並べると、次のように整理できます。

関連概念 何を指すか STRIPSとの関係
プランニング 行動系列を自動生成する研究分野の総称 STRIPSはその中の具体的な一方式
SHRDLU 自然言語の指示で積み木を動かす対話型システム 題材は共通・役割が異なる
PDDL 1998年に策定された標準的な記述言語 STRIPSの記述文法を土台に発展

STRIPSの3要素による記述方式は、約30年を経て標準言語の骨格として受け継がれていることになります。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

ロボット・自動化システムの分野では、倉庫内の搬送ロボットなどが、荷物の置き場所や積載状態といった前提条件を確認しながら次の行動を選びます。行動後の状態変化を管理しながら目標達成までの手順を組み立てるこの考え方は、STRIPSが示した行動記述の枠組みに由来します。前提条件を確認してから動くという順序を機械側に持たせることで、想定外の状態でも手順を組み直せる柔軟さが生まれます。

ゲームAI(NPC=ノンプレイヤーキャラクターの行動制御)の分野では、STRIPS風に行動を前提条件と効果の組で表現するGOAP(Goal Oriented Action Planning)という手法が知られています。シューティングゲーム『F.E.A.R.』(2005年)では、GOAPによってNPCがプレイヤーの状況に応じて行動計画を自動で組み立てる仕組みが採用されました。あらかじめ決められた行動パターンをなぞるのではなく、状況ごとに行動の並びを組み立て直せる点が、プレイヤーにとって予測しづらい手強さにつながっています。

物流・搬送計画の分野では、自動計画の国際的な研究競技会(IPC)で、トラックや航空機で荷物を目的地まで運ぶ手順を求める「物流(logistics)」が定番の題材として使われています。行動を前提条件と効果で記述するSTRIPS由来の考え方が、こうした計画問題を解くアルゴリズムの土台になっています。

5. 要点まとめ

  • STRIPSは1971年にリチャード・ファイクスとニルス・ニルソンがSRIインターナショナルで発表した自動計画システムで、行動を前提条件・削除リスト・追加リストの3要素で記述する方式が核心です。
  • STRIPSはプランニングという研究分野の中の一つの記述方式であり、同時期に登場したSHRDLU(対話型の積み木の世界システム)とは題材を共有しつつ役割が異なります。
  • STRIPSの前提条件・効果という記述文法は、1998年に策定されたPDDLをはじめ、GOAPのようなゲームAIの行動計画手法にも受け継がれています。

6. 確認問題

問1STRIPSは、行動を「前提条件」「削除リスト」「追加リスト」の3つの要素で記述するプランニングの方式である。

解答・解説をみる

○ 正しい

STRIPSの核心はこの3要素による行動記述にあります。前提条件はその行動を実行するために満たしておく必要がある条件、削除リストは行動によって成り立たなくなる条件、追加リストは行動によって新たに成り立つ条件を指します。

問2STRIPSは、テリー・ウィノグラードによって開発された、自然言語の指示で積み木を動かす対話型システムの名称である。

解答・解説をみる

× 誤り

これはSHRDLUの説明です。STRIPSはリチャード・ファイクスとニルス・ニルソンが1971年にSRIインターナショナルで発表した行動計画のアルゴリズムであり、自然言語理解の対話システムではありません。両者は同じ積み木の世界を題材にしているため、取り違えやすい組み合わせです。

問3PDDL(Planning Domain Definition Language)は、STRIPSが示した前提条件・効果という記述文法を土台に、1998年に自動計画の研究競技会向けに策定された言語である。

解答・解説をみる

○ 正しい

PDDLはドリュー・マクダーモットらが1998年に策定した記述言語で、STRIPS由来の行動記述の文法を発展させたものです。現在の自動計画研究で広く使われる標準的な言語という位置づけにあります。