第2次人工知能ブーム (G検定)

第2次人工知能ブーム

1. 定義と概要

第2次人工知能ブームとは、専門分野の知識をIF-THENルールとしてコンピュータに蓄積し、専門家のように問題解決させるエキスパートシステムを中心技術として、1980年代からおおむね1995年ごろまで続いた人工知能研究の隆盛期です。「知識の時代」とも呼ばれます。

代表例には、血液感染症の診断と抗生物質の処方を支援した医療分野のエキスパートシステムMYCIN(1970年代初めにスタンフォード大学で開発)や、化合物の分子構造推定を支援した、世界初とされるエキスパートシステムDENDRALがあります。

日本では通商産業省(現・経済産業省)が1982年から1992年にかけて、大規模な知識処理を目指す国家プロジェクトである第五世代コンピュータプロジェクトを進めました。国家の予算を投じて知識処理に取り組んだという点で、この時代の熱量を示す出来事にあたります。

探索・推論(与えられた情報から結論を導き出す処理)の技術を中心とした第1次人工知能ブーム(1950年代後半〜1960年代)は、迷路やパズルのようなトイプロブレム(ルールが単純で答えが決まっている簡単な問題)を解くことができました。しかし現実の複雑な問題には対応できず、1970年代に一度目の冬の時代を迎えました。

エドワード・ファイゲンバウムは1977年に知識工学(専門家の知識をコンピュータが扱える形に整理する研究分野)を提唱しました。DENDRALやMYCINに続き、この考え方を背景に1980年代には専門知識をルール化して蓄積するエキスパートシステムが多くの企業の業務に導入されるようになりました。

日本でも第五世代コンピュータプロジェクトとして、論理に基づいてプログラムを書くプログラミング言語Prolog(後にKL1に発展)を基盤に、大規模な知識情報処理を目指す取り組みに約540億円が投じられました。

しかし専門家の暗黙知(言葉で説明しにくい経験や勘に基づく知識)を言語化して知識ベース(専門知識をルールや事実の形で蓄積したデータベース)に蓄積する作業には膨大な手間がかかり、この困難さは知識獲得のボトルネックと呼ばれました。知識ベースの保守コストも増大したことから、1995年ごろに再び冬の時代へ入りました。

2. 試験対策ポイント

試験対策としてまず重要なのは、第2次人工知能ブームが「知識の時代」と呼ばれ、専門家の知識をIF-THENルールで表現したエキスパートシステムが中心技術だったという時代の呼び名と技術の対応関係です。

エキスパートシステムは、専門知識を蓄積した知識ベースと、その情報を使って結論を導き出す仕組みである推論エンジンという2つの要素で構成されます。この内部構造は、時代の呼び名と対になる位置づけです。

代表例としてはMYCINとDENDRALが挙げられます。両者はいずれもエキスパートシステムに分類されますが、対象領域が医療診断と化学分析で異なり、開発時期もDENDRALのほうが先行するという違いがあります。

2つの代表例は、対象領域と位置づけを並べると混同しにくくなります。

システム 対象領域 位置づけ
MYCIN 血液感染症の診断と抗生物質の処方支援 1970年代初めにスタンフォード大学で開発された医療分野の代表例
DENDRAL 化合物の分子構造推定 世界初とされるエキスパートシステムで、開発はMYCINより先行

対象領域と開発時期の前後関係は、2つの代表例を取り違えないための手がかりになります。

日本の取り組みとしては、通商産業省が1982年から1992年にかけて進めた第五世代コンピュータプロジェクトも押さえておきたいポイントです。この基盤言語を用いた並列推論マシンの開発に約540億円が投じられましたが、商業的な成功には至らず終了しました。

プロジェクトの規模と成果が結びつかなかったという結末は、技術的な成功と商業的な成功が必ずしも一致しないという教訓としても語られます。

ブーム終焉の要因である知識獲得のボトルネックは、後のオントロジー(概念や用語の意味・関係を体系的に整理する仕組み)や意味ネットワーク(概念同士のつながりを図式化する知識表現)といった研究につながっていきます。この流れを踏まえると、知識表現(知識をコンピュータが扱いやすい形で表す方法)という分野の出発点が第2次人工知能ブームにあったことが分かります。

3. 関連概念との比較・相違点

第1次人工知能ブームとの最大の違いは、時期とアプローチにあります。第1次人工知能ブームは1950年代後半から1960年代にかけて起こり、探索・推論の技術によってトイプロブレムを解くことはできましたが、現実の複雑な問題には対応できませんでした。

これに対して第2次人工知能ブームは1980年代に知識ベースを活用し、医療診断や化学分析といった実務での応用が広がった点で対照的です。第1次ブームが「解けるかどうか」を競う段階だったのに対し、第2次ブームは「現場で役に立つかどうか」に軸足が移った段階へ進んだ違いともいえます。

第3次人工知能ブームとの最大の違いは、技術基盤にあります。第2次人工知能ブームは、人がルールを設計してコンピュータに入力する知識ベース型のエキスパートシステムが中心技術でした。一方、第3次人工知能ブームは、特徴量(データの中でAIが判断の手がかりにする特徴を数値化したもの)を、ディープラーニングによってデータから自動的に学習する点が根本的に異なります。

専門家が知識を言語化する第2次ブームの手法と、データから自動的にパターンを見いだす第3次ブームの手法の違いは、取り違えやすい点です。3つのブームを中心技術で並べると、位置づけの違いがはっきりします。

ブーム 中心となった技術 特徴
第1次人工知能ブーム 探索・推論 トイプロブレムは解けたが、現実の複雑な問題には対応できなかった
第2次人工知能ブーム 知識ベース型のエキスパートシステム 人がルールを設計して入力し、医療診断や化学分析など実務での応用が広がった
第3次人工知能ブーム ディープラーニングによる特徴量の自動学習 データから自動的にパターンを見いだす

知識を人が書き出すのか、データから取り出すのかという線引きが、第2次ブームと第3次ブームを分ける軸にあたります。中心技術がそのまま各時代の性格を決めているという見方で整理すると、3つの関係を取り違えにくくなります。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

医療の分野では、MYCINが血液感染症の診断と抗生物質処方の推奨を支援した事例があります。専門知識をルール化して意思決定を支援するという発想の先駆けとなり、この考え方は現代の臨床意思決定支援システムにも継承されています。

化学・素材分析の分野では、DENDRALが質量分析データから未知の有機化合物の分子構造候補を推定した事例があります。専門家が不足する分析業務をエキスパートシステムで補う実用例となりました。分析対象が化合物という専門性の高い領域だったからこそ、ルール化された知識を使う仕組みが力を発揮したといえます。

知識ベースと推論エンジンを分けて設計する構造は、現代のFAQ自動応答システムやルールベースの与信審査システムにも引き継がれています。専門知識を形式化して蓄積するという第2次人工知能ブームの考え方は、今も業務システムの設計に有効な発想です。

5. 要点まとめ

  • 第2次人工知能ブーム(1980年代、通称「知識の時代」)は、専門家の知識をルール化したエキスパートシステムが中心技術で、知識ベースと推論エンジンの2要素で構成されます。
  • 代表例はMYCIN(医療診断)とDENDRAL(化学構造解析)で、日本では第五世代コンピュータプロジェクト(1982〜1992年、通産省、約540億円)が国家プロジェクトとして進められました。
  • 知識獲得のボトルネックにより1995年ごろ冬の時代を迎えました。第1次(探索・推論)、第3次(機械学習による自動学習)との技術基盤の違いは、理解しておきたい中心的な論点です。

6. 確認問題

問1第2次人工知能ブームは1980年代に起こり、専門家の知識をルール化したエキスパートシステムが中心技術だった。

解答・解説をみる

○ 正しい

第2次人工知能ブームは「知識の時代」と呼ばれ、IF-THENルールで専門知識を表現するエキスパートシステムが中核技術でした。時代の呼び名と技術の対応関係は、まず押さえておきたいポイントです。

問2エキスパートシステムは知識ベースと推論エンジンの2つの要素で構成される。

解答・解説をみる

○ 正しい

知識ベースが専門知識を蓄積する部分、推論エンジンがその知識を使って結論を導く部分であり、この2要素構成が要点です。

問3第2次人工知能ブームは、ディープラーニングによるデータからの特徴量の自動学習によって発展した。

解答・解説をみる

× 誤り

特徴量の自動学習は第3次人工知能ブームの技術基盤です。正しくは、第2次人工知能ブームは人がルールを設計・入力する知識ベース型のエキスパートシステムが中心で、機械学習による自動学習とは異なります。