SHAP (G検定)

SHAP

1. 定義と概要

SHAP(SHapley Additive exPlanations の略)とは、協力ゲーム理論(複数のプレイヤーが協力して成果を得る状況を数学的に扱う理論)におけるシャープレイ値を、機械学習モデルの予測の説明に応用した手法です。2017年に Lundberg 氏と Lee 氏が提案しました。

各特徴量を、モデルの予測値をともに生み出す参加者とみなし、平均的な予測値からの差分を、どの特徴量がどれだけ押し上げた・押し下げたかという形で公平に配分します。共同作業で得た成果の取り分を決める考え方を、そのまま予測の説明に持ち込んだ形です。

局所的な説明(1件のみの個別の予測について根拠を示すこと)と、複数件のSHAP値を集計したモデル全体の大域的な説明(モデル全体を通じてどの特徴量がよく効くかという傾向を示すこと)の、両方に使える点が特徴です。

深層学習や勾配ブースティング(決定木を何個も順番に組み合わせて精度を高める手法)は、精度が高い一方で内部の仕組みが複雑です。こうした高精度なモデルほど、判断の根拠が人間から見えにくいブラックボックス(内部の仕組みが人間から見えず、判断の根拠が分かりにくいモデルのこと)になりやすい傾向があります。

この課題に応える取り組みが説明可能なAI(XAI)という枠組みで、SHAPはその代表的な手法の一つにあたります。精度を落とさずに根拠を示す道を探る流れの中から生まれた手法だと捉えると、位置づけがつかみやすくなります。

SHAP以前にも、決定木系の特徴量重要度(決定木系モデルが、どの特徴量をよく使って判定したかをモデル全体で示す指標)やLIME(予測したい1件の周辺だけを単純なモデルで近似して説明する手法)といった説明手法がありました。しかし理論的な一貫性の面で限界があったため、Lundberg 氏と Lee 氏はシャープレイ値の性質を満たす統一的な枠組みとしてSHAPを提案しました。

2. 試験対策ポイント

まず整理したいのは、シャープレイ値がもつ4つの性質です。効率性(各特徴量への貢献度をすべて足し合わせると、予測値と平均的な予測値との差にちょうど一致するという性質)と対称性(同じ働きをする特徴量には同じ貢献度が割り当てられるという性質)が、公平な配分の土台になっています。

これに加えて、ダミー性(予測に影響を与えない特徴量には貢献度がゼロになるという性質)と加法性(複数のモデルを足し合わせた結果も、貢献度を単純に合算できるという性質)が組み合わさり、シャープレイ値の理論的な一貫性を支える柱です。

計算手法としては、KernelSHAP(どんな種類のモデルにも使える、SHAP値の近似計算手法)が1つ目です。TreeSHAP(決定木や、複数の決定木の結果を組み合わせて予測するランダムフォレスト、勾配ブースティングなど木構造のモデルに特化した計算手法)がもう1つの柱になります。TreeSHAP は Lundberg 氏らが2018年に提案したもので、近似ではなく高速かつ厳密な計算を実現している点が特徴です。

可視化の方法は、説明したい範囲が1件なのかモデル全体なのかで使い分けられます。対応関係を並べると、次のように整理できます。

説明したい範囲 使う可視化 読み取れること
局所的な説明(1件ごと) ウォーターフォール図・フォースプロット その1件の予測の内訳
大域的な説明(モデル全体) サマリープロット 複数件のSHAP値を並べた、特徴量ごとの全体的な傾向

局所的な説明と大域的な説明を1つの理論で橋渡しできる点は、SHAPならではの特徴です。同じSHAP値を、1件分だけ見るか、まとめて眺めるかの違いになっています。

一方で、SHAPの計算コストは特徴量の組み合わせ数に応じて増えていきます。特徴量の数が多いモデルや、リアルタイム性が求められる場面では、計算時間が課題になりやすい点も見ておきたいところです。

3. 関連概念との比較・相違点

LIMEとの最大の違いは、理論的な裏づけの強さです。LIMEは局所的な説明はできるものの、理論的な一貫性の保証は弱いという弱点があります。これに対しSHAPは、シャープレイ値の公理である効率性・対称性・ダミー性・加法性を満たすため、貢献度の配分が一意に定まり、理論的な裏づけが強い点が特徴です。

計算コストの面では立場が逆転し、LIMEは軽く即座に使えるのに対し、SHAPは組み合わせ計算やサンプリングが必要になる分、コストがかかりやすい傾向があります。両者を軸ごとに並べると、次のように整理できます。

観点 SHAP LIME
理論的な裏づけ シャープレイ値の公理を満たし、配分が一意に定まる 局所的な説明はできるが一貫性の保証は弱い
計算コスト 組み合わせ計算やサンプリングが必要でかかりやすい 軽く即座に使える
説明できる範囲 局所的な説明と大域的な説明の両方 1件の周辺を近似した局所的な説明

どちらが上位という関係ではなく、説明の厳密さを取るか手軽さを取るかという選び方になります。

決定木系の特徴量重要度との最大の違いは、説明の粒度です。特徴量重要度は、データを振り分ける際の分割寄与度(ゲインと呼ばれる指標など)をもとにした、モデル全体で見た大域的な指標にとどまります。

これに対しSHAPは、1件ごとの予測に対して各特徴量がどれだけ押し上げ・押し下げたかを個別に算出できるため、局所的な説明にも使える点が異なります。効率性の性質により、個々のSHAP値を足し合わせるとモデル全体の傾向とも整合する設計になっている点も、単純な重要度指標との分かれ目です。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

金融の与信審査では、融資審査モデルが「高リスク」と判定した申込みについて、年収・勤続年数・既存借入額などのうちどの要因がどれだけ判定を押し下げたかをSHAPで分解します。承認・否決を告げるだけでなく根拠を要因ごとに示せることが、申請者への説明や規制対応において欠かせません。

医療の分野では、診断支援モデルが提示した所見について、検査値や症状のどの項目が判定に効いたかをSHAPで可視化します。モデルの判断を鵜呑みにせず、医師が根拠を確認しながら最終的な診断に組み込めることが、臨床現場でSHAPが使われる理由です。

マーケティングの解約予測では、「解約しそう」と判定された顧客について、利用頻度や問い合わせ回数などどの要因が解約リスクを押し上げたかをSHAPで特定します。要因が分かれば、値引きや利用促進といった引き止め施策を、顧客ごとの事情に応じて設計することが可能です。

5. 要点まとめ

  • SHAPは、協力ゲーム理論のシャープレイ値を応用し、各特徴量が予測値をどれだけ押し上げ・押し下げたかを加算的に示す説明手法で、2017年の Lundberg 氏と Lee 氏による提案が土台になっています。
  • SHAPの理論的な裏づけは効率性・対称性・ダミー性・加法性というシャープレイ値の性質にあり、計算手法としては KernelSHAP と TreeSHAP の2つが柱です。
  • 1件ごとの局所的な説明とモデル全体の大域的な傾向把握の両方に使える点が特徴で、LIME・決定木系の特徴量重要度とは理論的な裏づけと対象範囲の面で違いがあります。

6. 確認問題

問1SHAPは、協力ゲーム理論におけるシャープレイ値の考え方を応用し、各特徴量が予測値をどれだけ押し上げ・押し下げたかを加算的に示す手法である。

解答・解説をみる

○ 正しい

各特徴量への貢献度を足し合わせると予測値と平均的な予測値との差にちょうど一致するという効率性の性質が、この定義の裏づけになっています。SHAPはシャープレイ値の考え方をそのまま予測の説明に持ち込んだ手法だといえます。

問2SHAPは1件ごとの予測の説明にのみ使える手法であり、モデル全体の傾向をつかむ大域的な説明には使えない。

解答・解説をみる

× 誤り

SHAPは1件ごとの予測を説明する局所的な説明だけでなく、複数件のSHAP値を集計してモデル全体の傾向をつかむ大域的な説明にも使えるため、この記述は誤りです。正しくは、局所と大域の両方の説明に使える手法だという点です。1件のみに限定されるという理解は取り違えやすいところです。

問3決定木系の特徴量重要度と比べて、SHAPは1件ごとの予測に対して各特徴量の貢献度を個別に算出できる点に違いがある。

解答・解説をみる

○ 正しい

決定木系の特徴量重要度は分割時の寄与度をもとにしたモデル全体で見た指標にとどまるのに対し、SHAPは1件ごとの予測に対して各特徴量の貢献度を個別に算出できるため、この記述は正しいといえます。局所的な説明にも使える点が、単純な重要度指標との分かれ目です。