MOOC (G検定)

MOOC

1. 定義と概要

MOOCとは、Massive Open Online Course(大規模公開オンライン講座)の略称で、大学などの高等教育機関が提供する講座をインターネット上で公開し、誰でも無料または低額で受講できる仕組みの総称です。単なる講義動画の公開にとどまらず、宿題や修了試験、受講者同士の議論といった要素を伴います。所定の課題をクリアすると修了証(講座を最後まで終えたことを証明する書類)が発行される点も特徴です。代表的な提供プラットフォームとして、Coursera、edX、Udacityといったサービスが挙げられます。

MOOCという言葉自体は2008年、ジョージ・シーメンス氏(アサバスカ大学所属)とスティーブン・ダウンズ氏らが開いた講座『Connectivism and Connective Knowledge』で初めて使われました。この講座の単位認定を行ったのはマニトバ大学で、シーメンス氏の所属先とは別の大学が開催機関にあたります。

その後2011年、スタンフォード大学のセバスチャン・スラン氏がオンラインで公開した人工知能入門講座に、世界中から16万人が登録しています。この出来事が大きな転機となり、翌2012年には主要なプラットフォームが相次いで立ち上がりました。この年は「MOOC元年」と呼ばれています。

2012年に生まれた3つのサービスと、その設立に関わった主体を並べると次のとおりです。

プラットフォーム 設立に関わった主体
Coursera スタンフォード大学のアンドリュー・ングとダフニー・コラー
Udacity セバスチャン・スラン氏
edX マサチューセッツ工科大学とハーバード大学

大学と大学発のベンチャー、その両方が同時期に動き出した点に、当時の勢いがうかがえます。従来、大学の講義は限られた在籍者だけが受けられるものでしたが、MOOCの登場によって世界中の誰もが一流大学の講義に触れられるようになりました。この開放が、教育のあり方を変えた背景にあたります。

2. 試験対策ポイント

まず整理したいのは、MOOCの定義を構成する「大規模」「公開」「オンライン」「講座」という4つの要素です。単に講義資料を公開するだけの大学のオープンコースウェア(OCW。大学の講義資料や動画をそのまま公開する仕組みで、修了証は出ません)とは異なり、MOOCは課題や修了試験、修了証の発行といった双方向の学習プロセスを伴う点が違いにあたります。

日本の状況としては、JMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会の略称で、日本語のMOOC講座をまとめて紹介する推進団体)が2013年に設立されました。gacco(JMOOCが束ねる代表的な講座配信サイトの一つ)など複数の講座配信プラットフォームを束ねるポータルとして、日本語のMOOCを推進しています。

一方でMOOCの課題としては修了率の低さが挙げられ、多くの講座で修了率は5〜10%程度にとどまるとされます。誰でも気軽に登録できるからこそ、途中で学習が止まっても失うものが少ないという事情もあります。受講のハードルの低さと学習継続の難しさは、表裏の関係です。

AI・ディープラーニングを独学する入口としての位置づけも、あわせて整理しておきたいところです。Coursera共同創業者のアンドリュー・ングによる機械学習講座など、実務家や研究者が公開する専門講座は世界的に広く利用されています。国内の学習者にとっても、英語の専門講座に日本語字幕がつくケースが増えている点は、独学のハードルを下げる要素です。

3. 関連概念との比較・相違点

MOOCと混同されやすいのは、OCWと企業のeラーニング・研修プログラムです。誰に開かれているかと、どこまでの学習プロセスを伴うかという2つの軸で並べると、違いが見えやすくなります。

区分 受けられる人 学習プロセス
MOOC 誰でも登録できる 課題・修了試験・受講者同士の議論を伴い、修了証が発行される
OCW 誰でも閲覧できる 講義動画や資料を一方向に公開するのみで、修了証は伴わない
企業のeラーニング 特定組織の従業員に限られる 自社の業務内容に即した内容に絞られる

OCWとの最大の違いは、講義資料を一方向に公開するだけか、双方向の学習体験を伴うかという点にあります。資料を眺めるだけの学習と、達成を証明できる学習という違いは、独学の動機づけにも影響する部分です。修了証という到達点があるかどうかで、学習の続き方は変わってきます。

企業のeラーニングとの最大の違いは、対象者の公開性にあります。企業研修が自社の業務内容に即した内容に絞られるのに対し、MOOCは世界中の大学や実務家が提供する幅広いテーマの講座から選べる点も対照的です。この違いは、社内向けの限定コンテンツと、世界中の受講者に開かれたコンテンツという設計思想の差にもつながっています。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

企業の人材育成の分野では、社員のリスキリング(新しい仕事に必要なスキルを学び直すこと)の一環として、CourseraなどのMOOCプラットフォームの法人向けプランを導入し、AI・データ分析スキルの習得に活用する動きが広がっています。従来の集合研修だけでは追いつかない技術変化の速さに対応するうえで、体系化された講座を社外から取り込める点は実利的な価値です。

大学教育の現場では、MOOCの教材を予習用の動画として活用し、対面授業では演習や議論に時間を割く反転授業(フリップドクラスルーム。先に動画で予習し、対面授業では演習や議論を行う授業のやり方)の形で組み合わせる事例があります。限られた対面時間を知識のインプットではなくアウトプットに充てられる点が、この組み合わせの意義です。

個人の独学という文脈では、非エンジニアの社会人がAI・機械学習の基礎を学ぶ最初の一歩として、無料で受けられるMOOCの入門講座を選ぶケースが多く見られます。書籍だけでは掴みにくい実装の勘所を、動画とハンズオン形式の課題を通じて体感できる点が支持される理由です。

5. 要点まとめ

  • MOOCは大学レベルの講座をインターネット上で誰でも受講できる大規模公開オンライン講座の総称で、課題や修了試験を経て修了証が発行される点がOCWとの違いにあたります。
  • 2012年のCoursera・edX・Udacity設立が「MOOC元年」と呼ばれ、日本では2013年設立のJMOOCがgacco等の複数プラットフォームを束ねています。
  • 修了率の低さ(おおむね5〜10%程度)が課題として指摘される一方、AI・機械学習を独学する入口として世界的に利用されています。

6. 確認問題

問1MOOCとは、大学などの講座をインターネット上で公開し、所定の課題や試験をクリアすると修了証が発行される仕組みである。

解答・解説をみる

○ 正しい

MOOCは講義動画の公開にとどまらず、課題や修了試験、受講者同士の議論を伴い、修了要件を満たすと修了証が発行される点が単なる講義公開との違いにあたります。

問22012年は、Coursera・edX・Udacity各社が相次いで設立された年であり、「MOOC元年」と呼ばれる。

解答・解説をみる

○ 正しい

2011年のスタンフォード大学のオンライン講座に16万人が登録したことを契機に、2012年にCoursera・Udacity・edXが立ち上がりました。

問3MOOCは受講のハードルが低いため、登録した受講者のほとんどが最後まで講座を修了する。

解答・解説をみる

× 誤り

正しくは、実際の修了率は平均5〜10%程度にとどまるとされます。受講開始のしやすさと学習継続の難しさは別の問題であり、修了率の低さはMOOCの代表的な課題として挙げられます。