CX (G検定)

CX

1. 定義と概要

CX(Customer Experience、顧客体験。カスタマーエクスペリエンスとも呼ばれます)とは、顧客が企業やブランドと関わるあらゆる接点を通じて得る体験の総体を指す概念です。この接点はタッチポイントと呼ばれ、広告・店舗・サポート窓口など、顧客が企業やブランドと接する場面や機会を幅広く指します。

広告で製品を知る認知段階から比較検討、購入、利用、アフターサポート、再購入に至る一連のカスタマージャーニー全体を対象とし、価格や性能といった機能的価値だけでなく、対応の丁寧さや印象といった感情的価値も含みます。

たとえば、SNS広告で商品を知り、丁寧な接客で購入を決め、迅速なサポート対応を受けて信頼を深め、再度購入するという一連の流れ全体がCXにあたります。

従来のマーケティングは、製品の性能や価格といった機能的価値を中心に据える製品中心の発想が主流でした。2000年代以降はインターネットの普及によって顧客が製品情報やレビューに容易にアクセスできるようになり、比較検討や口コミの共有が進んだことで顧客の期待水準が高まりました。

機能や価格だけでは差別化が難しくなったことを背景に、企業は購入前から購入後までの体験全体で顧客との関係を築く顧客中心の発想へと軸足を移しつつあります。商品を売った時点で完結するのではなく、購入後の対応や再購入までを含めて顧客からの評価が決まる時代になったともいえます。

2. 試験対策ポイント

CXを理解するうえでの中心的な論点は、個々の接点だけでなく、カスタマージャーニー全体を捉える視点です。顧客の行動や感情をタッチポイントに沿って旅の地図のように書き出して可視化する手法はカスタマージャーニーマップと呼ばれ、CXとあわせて整理しておきたい手法です。接点ごとに顧客がどのような感情を抱いているかを俯瞰することは、CXを改善する起点になります。

測定指標としては、NPS(ネット・プロモーター・スコア。「知人にどれだけ勧めたいか」を点数で聞き、顧客の愛着度合いを数値化する指標)が代表的です。算出は、「親しい友人や同僚にどの程度勧めたいか」を0〜10点で尋ね、その回答によって顧客を3つに分類するところから始まります。

回答した点数 分類
9〜10点 推奨者
7〜8点 中立者
0〜6点 批判者

そのうえで、推奨者の割合から批判者の割合を引いた値がNPSになります。点数そのものを平均するのではなく、勧めたい人と勧めたくない人の差を見る指標という点が特徴です。

個別の接点ごとの短期的な満足度を測るCSAT(顧客満足度スコア。個々の対応や購入体験ごとの満足度をアンケートで数値化した指標)とは軸が異なる指標として区別しておきたいところです。NPSが顧客との関係全体を長い目で捉える指標であるのに対し、CSATはある1回の接点への評価に絞られる指標という違いになります(CSATの詳細は別記事に譲ります)。

AIとの接点としては、顧客データを統合したパーソナライゼーションと、チャットボット(自動で会話形式の応答を行うプログラム)による問い合わせ対応が挙げられます。これに需要予測(過去のデータをもとに、将来どれくらいの需要が生まれるかをAIなどで見積もること)にもとづく先回りの提案を加えた3点が柱になります。

いずれも、蓄積された顧客データをもとにAIが個々の顧客に合わせた対応を導き出す点が共通しています。一方で、行き過ぎたパーソナライゼーションは「見張られている」という感覚を生み、顧客の不信感につながりうるというトレードオフも押さえておきたい論点です。

3. 関連概念との比較・相違点

UX(ユーザーエクスペリエンス。製品やサービスを利用して得る体験全体のこと)との最大の違いは、対象とする範囲の広さにあります。UXが製品・サービスの利用体験に焦点を当てるのに対し、CXは広告接触や購入手続き、アフターサポートまで企業とのあらゆる接点を対象とする、より広い概念です。

アプリの画面が使いやすいかどうかはUXの範囲にあたりますが、CXではそこに至るまでの広告体験や、利用後のサポート対応まで含めて評価の対象になります。UXはCXを構成する一要素という関係にあります(UX自体の成り立ちは別記事に譲ります)。

CS(顧客満足。顧客が製品・サービスにどれだけ満足しているかを表す指標・考え方)との関係も整理しておきたいところです。CXは顧客が得る体験そのもの、いわばプロセスを指すのに対し、CSはその体験の結果として顧客がどれだけ満足したかという評価・指標にあたります。CXが原因側、CSが結果側という関係にあり、体験の質を高めることが満足度の向上につながるという順序で捉えられます(CS自体の測定方法は別記事に譲ります)。

三者の関係は、何を指す言葉なのかという軸で並べると見通しがよくなります。

用語 何を指すか CXとの位置関係
CX 企業やブランドとのあらゆる接点で得る体験の総体 認知から再購入までのカスタマージャーニー全体が対象
UX 製品やサービスを利用して得る体験 CXを構成する一要素
CS 体験の結果として顧客がどれだけ満足したかという評価・指標 CXが原因側、CSが結果側

いずれも顧客を主語にした言葉であるだけに混同しやすいので、対象とする範囲と、原因側か結果側かという2点を手がかりに区別しておくと整理しやすくなります。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

EC・小売の分野では、閲覧履歴や購買履歴を統合したパーソナライゼーションによって一人ひとりに合わせた商品提案を行い、認知から購入までの体験を一貫させることでリピート購入につなげる事例が広がっています。バラバラだった接点を一つの体験としてつなぐことが、CX向上の実利的な効果を生んでいます。

カスタマーサポート・コールセンターの分野では、チャットボットによる一次対応で問い合わせの待ち時間を短縮し、対応の遅さによる不満の発生を防ぐ取り組みが進んでいます。待たされる体験そのものが不満の種になりやすいだけに、初動の速さがCX全体の印象を左右します。

通信・サブスクリプションの分野では、利用データにもとづく需要予測で解約の兆候がある顧客に先回りしたプラン提案を行う取り組みが見られます。適切なタイミングでの提案は顧客の継続利用につながる一方で、過度に踏み込んだ提案は「見張られている」という不信感につながる場合があり、活用範囲の見極めが論点になります。

5. 要点まとめ

  • CXとは、顧客が企業やブランドと関わるあらゆる接点を通じて得る体験の総体で、認知から再購入までのカスタマージャーニー全体を対象とし、可視化にはカスタマージャーニーマップが使われます。
  • UXが製品・サービスの利用体験に絞られるのに対しCXはより広い接点を含み、CSは体験の結果としての満足度という評価にあたるという位置づけの違いがあります。
  • NPSは推奨意向をもとに顧客ロイヤルティを数値化する指標で、パーソナライゼーションやチャットボット、需要予測がCX向上に使われる一方、行き過ぎた活用は不信感につながりうる関係にあります。

6. 確認問題

問1CXとは、顧客が企業やブランドと関わるあらゆる接点を通じて得る体験の総体であり、広告での認知から購入後のサポート・再購入までのカスタマージャーニー全体を対象とする概念である。

解答・解説をみる

○ 正しい

定義のとおりです。価格や性能といった機能的価値だけでなく、対応の丁寧さや印象といった感情的価値まで含む点も特徴です。

問2NPSは、CSAT(顧客満足度スコア)と同じ算出方法を用いる指標であり、個々の接点ごとの短期的な満足度を測定するものである。

解答・解説をみる

× 誤り

正しくはNPSは「親しい友人や同僚にどの程度勧めたいか」という推奨意向を0〜10点で尋ね、推奨者(9〜10点)の割合から批判者(0〜6点)の割合を引いて算出する、長期的な顧客ロイヤルティを測る指標です。個々の接点の短期的な満足度を測るのはCSATであり、両者は軸が異なります。混同しやすい組み合わせです。

問3UXが製品・サービスの利用体験を指すのに対し、CXはUXを含みつつ購入前の認知段階から購入後のサポートまでを対象とする、より広い概念である。

解答・解説をみる

○ 正しい

UXはCXを構成する一要素という関係にあり、CXの方が対象とする接点の範囲が広くなります。