1. 定義と概要
NVIDIA社とは、1993年に米国カリフォルニア州で設立された、GPUの設計・開発を専門とするファブレス半導体メーカーです。共同創業者でCEOを務めるジェンスン・フアン氏が経営を率いています。
もともとはゲームやグラフィックス向けの画像処理チップとしてGPUを開発してきました。その並列演算性能がディープラーニングの学習や推論(学習済みモデルを使って答えを出す処理)の計算基盤に転用され、AI分野を支える企業としての存在感を持つようになりました。
従来、コンピュータの中心的な演算はCPU(Central Processing Unit:コンピュータ全体の処理を司る、順番に処理をこなすのが得意な演算装置)が担ってきました。CPUは少数の高性能なコアで複雑な処理を順番にこなす逐次処理に強い一方、大量のデータをまとめて処理する並列演算には向かないという制約を抱えています。
ディープラーニングの学習では、大量の行列演算・テンソル計算(表形式や多次元配列になったデータをまとめて計算する処理)を並列にこなす必要があります。画像処理向けに多数の演算コアを積んだGPUの構造は、この用途にちょうど適合しました。
NVIDIA社は2006年、GPUを画像処理以外の汎用計算に応用しやすくする並列計算プラットフォーム「CUDA(NVIDIA社が提供する、GPUを画像処理以外の計算にも使うための開発環境)」を発表しました(実際の提供開始は翌2007年)。これが、GPGPU(GPUを画像処理以外の汎用的な計算に応用する利用形態)という利用の広がりを後押ししました。
2. 試験対策ポイント
まず整理したいのは、GPUの構造的な特性です。多数の演算コアによる並列処理に強く、行列演算・テンソル計算に適した構造を持っています。CPUとの処理方式の違いとあわせて理解しておきたい論点です。
ディープラーニングの学習では、大量のデータをもとにモデル内の数値を繰り返し調整する計算が発生します。そのため、並列処理性能の高さがそのまま学習時間の短縮につながります。
GPGPUと、NVIDIA社が2006年に発表したCUDAの関係も、押さえておきたいポイントです。GPUというハードウェアと、それを動かすCUDAというソフトウェア基盤はセットで扱われる論点です。GPU単体では画像処理以外の計算に応用しにくく、CUDAという開発環境が用意されたことで、研究者や技術者がGPUの並列処理性能を汎用的な計算に活用しやすくなりました。
AI向けの計算資源としては、GPU以外の選択肢もあわせて整理しておきたいところです。代表例が、Google社が開発したTPU(Tensor Processing Unit:Google社がディープラーニングの計算専用に開発した処理装置)です。ほかにも、エッジデバイス(現場に近い場所で処理を行う小型の機器)向けの専用ハードウェアがあります。名前が似ていて紛らわしいので、主な選択肢を並べて確認しておきます。
| 名称 | どのような装置か | 位置づけ |
|---|---|---|
| GPU | 画像処理向けに多数の演算コアを積んだ演算装置 | 並列処理性能をAI用途に転用した汎用ハードウェア |
| TPU | Google社がディープラーニングの計算専用に開発した処理装置 | 特定の計算に絞り込んだ専用ハードウェア |
| NPU | AI処理に特化した半導体チップ | エッジデバイス向けなどに使われる専用ハードウェア |
| FPGA | 後から回路構成を変更できる半導体 | 用途に合わせて回路を組み替えられる中間的な選択肢 |
| ASIC | 特定の用途のためだけに設計された専用の半導体チップ | 用途を固定して効率を高めた専用ハードウェア |
これらは優劣で並ぶものではなく、扱う計算の内容や設置する場所に応じて使い分けられています。TPUやASICは、用途を絞り込む代わりに効率を高める方向の設計です。学習のように大量の計算をまとめて回す場面ではGPUが、決まった計算を繰り返し回す場面では専用チップが選ばれるといった具合になります。
3. 関連概念との比較・相違点
CPUとの最大の違いは、処理方式にあります。CPUは少数の高性能なコアで複雑な処理を順番にこなす逐次処理に強い一方、GPUは多数の単純なコアで大量のデータを同時にこなす並列処理に強いという特性を持ちます。少数精鋭で一つずつ丁寧にこなすか、大人数で同時並行にこなすかという違いだと捉えると分かりやすい対比です。
Google社のTPUとの最大の違いは、汎用ハードウェアか専用ハードウェアかという点にあります。GPUはもともと画像処理向けに作られた汎用性のあるハードウェアをAI用途に転用したものであるのに対し、TPUはGoogle社がディープラーニングの行列演算専用に設計したASICです。
幅広い用途に対応できる汎用性がGPUの強みであり、特定の計算に絞り込むことで効率を高めている点がTPUの特徴です。用途に応じてどちらを選ぶかという視点で整理すると、両者の違いが理解しやすくなります。
4. ビジネス・実務での活用シナリオ
データセンター・クラウドAIの分野では、文章生成などに使われる大規模言語モデル(大量の文章データから言葉のつながりを学習したAIモデル)が広がっています。その学習や推論の基盤として、NVIDIA製GPUを大量に搭載したデータセンターがクラウド事業者やAI開発企業に採用されています。並列処理による学習時間の短縮という効果があり、大量のデータを扱う大規模モデルの開発を支える基盤になっています。
自動運転の分野では、車載向けのGPUやSoC(System on Chip:複数の機能を1つの半導体チップにまとめたもの)が提供され、走行中に得られるセンサーデータをリアルタイムに処理する基盤として採用されています。刻々と変化する周囲の状況を即座に判断する必要がある用途では、処理速度の速さが安全性に直結します。
研究・人材育成の分野では、CUDAを用いた開発環境や技術者向けの教育プログラムが、大学や企業でのAI人材育成に活用されています。GPUというハードウェアだけでなく、それを扱うための開発環境や教育体制まで含めて提供している点に、NVIDIA社のビジネスの広がりが表れています。
5. 要点まとめ
- NVIDIA社は1993年設立のGPU専業ファブレス半導体メーカーで、画像処理向けGPUの並列処理性能がディープラーニングの計算基盤として転用されています。
- 2006年に発表されたCUDAという並列計算プラットフォームが、GPUを汎用計算に応用するGPGPUという利用の広がりを支えています。
- CPUとの処理方式の違いや、Google社のTPUのような専用プロセッサとの違いをあわせて理解しておきたいところです。
6. 確認問題
問1GPUは多数の演算コアによる並列処理に強く、ディープラーニングの学習で発生する大量の行列演算・テンソル計算に適している。
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○ 正しい
GPUは画像処理向けに多数の演算コアを積んだ構造を持ち、その並列処理性能がディープラーニングの行列演算・テンソル計算に適合しています。CPUの逐次処理との違いとあわせて理解しておきたい論点です。
問2NVIDIA社が提供するCUDAは、GPUを画像処理以外の汎用的な計算に応用するための並列計算プラットフォームである。
解答・解説をみる
○ 正しい
CUDAは2006年にNVIDIA社が発表した並列計算プラットフォームで、GPUを画像処理以外の用途に応用するGPGPUという利用形態を支えています。
問3GPUはCPUと比べて、少数の高性能なコアで複雑な処理を順番にこなす逐次処理に適した構造を持つ。
解答・解説をみる
× 誤り
少数の高性能なコアで逐次処理を得意とするのはCPUの特徴です。GPUは反対に、多数の単純なコアで大量のデータを同時にこなす並列処理を得意とします。両者の特徴を入れ替えた記述は、取り違えやすい点です。

