信条 (G検定)

信条

1. 定義と概要

信条とは、個人の基本的なものの見方・考え方を意味し、思想(政治的な主義主張など、ものごとについての基本的な考え方)と信仰(特定の宗教を信じる心)の双方を含む概念です。頭のなかで何を良しとし、何を信じているかという内心の領域を指す言葉だと考えると、輪郭がつかみやすくなります。

法律上の位置づけも確認しておきます。個人情報保護法(個人情報の取り扱いルールを定めた日本の法律)第2条第3項は、人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴・犯罪により害を被った事実などを、不当な差別や偏見が生じないよう特に配慮を要する記述として定めています。このうち社会的身分とは、出生によって決まり、自分の力では容易に変えられない地位を指す言葉です。信条もこれとあわせて、要配慮個人情報の一項目に数えられます。

信条に該当する具体例としては、特定の宗教を信仰していることや、特定の政党の党員であることなどが挙げられます。一方、政治的・宗教的な傾向があるとされる企業に勤務していることや、嫌煙家であること・菜食主義であることといった単なる嗜好は信条に含まれません。

この区分が設けられた背景も押さえておきたいところです。日本の個人情報保護法は、当初は氏名や住所など個人を識別する情報を中心に規律しており、情報の内容がどれだけ機微かによる区分を持っていませんでした。ビッグデータ(従来の仕組みでは扱いきれないほど大量で多様なデータの集まり)の活用が進むにつれ、思想や信仰といった内心にかかわる情報の扱いを誤ると差別や偏見に直結するリスクの大きさが課題として意識されるようになりました。

こうした流れを受け、2015年の改正個人情報保護法(2017年5月施行)で、人種・信条・社会的身分などをまとめて厳格な取扱いの対象とする要配慮個人情報という区分が新設されています。

2. 試験対策ポイント

押さえておきたいのは、信条を含む要配慮個人情報を取得する際の原則です。通常の個人情報は取得時に本人の同意が不要な場面もありますが、信条を含む要配慮個人情報はあらかじめ本人の同意を得ることが原則として必要になります。

第三者へ渡す場面の扱いも異なります。通常の個人情報であればオプトアウト(本人があとで停止を求められる前提で、事前の個別同意なく第三者にデータを渡す仕組み)によって第三者へ提供できる場合がありますが、信条を含む要配慮個人情報にはこのオプトアウトが認められていません。取得と第三者提供のいずれについても、通常の個人情報より厳格な取扱いが求められる点が、信条を含む要配慮個人情報の特徴です。

信条に該当するかどうかの線引きも、取り違えやすいところです。該当する側と該当しない側を並べると、次のように整理できます。

区分 具体例
信条に該当する 特定の政党の党員であること/特定の宗教の信者であること
信条に該当しない 菜食主義・嫌煙家といった嗜好/政治的・宗教的な傾向があるとされる企業への勤務の事実/宗教関連の書籍を購入・借りた履歴のように信条を推知させるに過ぎない情報

事実そのものではなく、そこから読み取れる可能性がある情報にとどまるかどうかが、判断の分かれ目になります。勤務先や購買の履歴は、外から観察できる行動の記録にとどまるという整理です。

信条は、人種・社会的身分・病歴・犯罪歴といった他の要配慮個人情報の項目と、あわせて整理しておきたい概念です。信条は本人の意思により変わりうる内心の自由にかかわる事項という点で、生来の属性である人種や、出生に基づく社会的身分とは異なる整理軸に位置づけられます。

3. 関連概念との比較・相違点

人種・社会的身分・信条は、いずれも要配慮個人情報の一項目でありながら、その成り立ちは異なります。三者を並べると次のように整理できます。

概念 性質 要配慮個人情報としての取扱い
人種 世系や民族的出身という生来の属性で、生まれながらに定まっている 取得時の同意が原則・オプトアウトによる第三者提供は不可
社会的身分 出生によって決定され、自らの意思や力では容易に脱することができない地位 同左
信条 思想や信仰という考え方で、改宗や支持政党の変更などによって移り変わる可能性がある 同左

人種との最大の違いは、生来の属性か、内心の自由にかかわる事項かという点にあります。人種は生まれ持った属性を指すのに対し、信条は思想や信仰という考え方であり、本人の意思によって変わりうるものです。もっとも、要配慮個人情報としての取扱い、すなわち取得時の同意原則やオプトアウトの禁止といった厳格さは、人種と信条のどちらであっても変わりません。

社会的身分との違いも、混同しやすいところです。社会的身分は出生によって決定される地位を指すのに対し、信条は個人の考え方や信仰であり、後天的に変わりうる点で性質が異なります。出生地や家系にまつわる情報は社会的身分にかかわる情報で、支持政党や信仰する宗教にまつわる情報は信条にかかわる情報という整理です。

両者は起源も性質も異なる概念ですが、いずれも不当な差別や偏見につながりうる機微な情報として、同じ要配慮個人情報の枠組みで扱われる点は共通しています。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

人事・採用の場面では、応募者に信条にかかわる質問をしないという運用が実務上の論点になります。厚生労働省が示す公正な採用選考の考え方でも、応募者の思想・信条や支持政党、宗教は適性・能力とは関係のない事項です。選考時にこうした事項を尋ねることは避けるべきだとされ、応募者情報を収集する段階からこの区分を意識した設計が求められています。こうした運用は、差別的な選考であるという疑いや紛争のリスクを避けることにつながります。

AI・機械学習のデータセット構築でも、信条にかかわる情報の扱いは論点の一つです。SNS投稿やアンケート回答などから学習用テキストデータセットを作る場面では、政治的な発言や宗教にかかわる記述が、信条を推知させる情報として含まれることがあります。

こうした記述は要配慮個人情報として取得段階の同意原則の対象になりうるため、収集前の選別や該当箇所の除外・匿名化が実務上の論点として意識されています。この前処理は、学習済みモデルが差別的な出力を再生産するリスクを抑えることに直結します。

広告・マーケティングの分野では、閲覧履歴や購買履歴そのものは信条に直接該当しないとされる一方、そこから信条を推知してターゲティング(利用者の属性や関心に合わせて広告や情報を出し分けること)に用いる運用には注意が必要です。プロファイリング(行動履歴などのデータから個人の属性や好みを推測する分析手法)によって信条を推知する扱いは、本人に不利益が生じうる機微なものとして意識されています。

5. 要点まとめ

  • 信条とは個人の基本的なものの見方・考え方を指し、思想と信仰の双方を含む概念で、個人情報保護法上は人種・社会的身分・病歴などと並ぶ要配慮個人情報の一項目にあたります。
  • 特定の政党の党員であることや特定の宗教の信者であることは信条に該当する一方、嗜好や政治的・宗教的な傾向があるとされる企業への勤務、関連書籍の購入・貸出履歴のように推知させるに過ぎない情報は該当しません。
  • 信条を含む要配慮個人情報は取得時に原則として本人の同意が必要で、オプトアウトによる第三者提供も認められないという厳格な取扱いが求められます。

6. 確認問題

問1「信条」とは、個人の基本的なものの見方・考え方を意味し、思想と信仰の双方を含む概念である。

解答・解説をみる

○ 正しい

信条は個人の基本的なものの見方・考え方を意味し、政治的な主義主張などの思想と、宗教上の信仰の双方を含む概念として整理されます。個人情報保護法上は要配慮個人情報の一項目にあたります。

問2特定の政党の党員であるという事実や、特定の宗教を信仰しているという事実は、要配慮個人情報における信条に該当する。

解答・解説をみる

○ 正しい

特定の政党の党員であること、特定の宗教の信者であることは、信条に該当する具体例として挙げられます。単なる嗜好や勤務先の傾向とは区別される点が、見分けのポイントになります。

問3嫌煙家である、菜食主義であるといった嗜好に関する情報も、要配慮個人情報における信条に含まれる。

解答・解説をみる

× 誤り

正しくは、嫌煙家・菜食主義・食べ物の好き嫌いといった単なる嗜好は信条には含まれません。政治的・宗教的な傾向があるとされる企業への勤務の事実や、関連書籍の購入・貸出履歴のように信条を推知させるに過ぎない情報も同様に該当しません。