1. 定義と概要
意味解析とは、構文解析によって得られた文の構造、つまり主語と述語などの関係をもとに、単語や文全体が実際にどのような意味を持つかを判定する処理です。文法的には成立していても意味が通らない解釈を除外する役割を持ちます。
また、複数の意味を持つ語である多義語(同じ言葉でも文脈によって意味が変わる語)については、その文の中でどの意味を表しているかを絞り込みます。「かける」が電話をかける・椅子にかける・眼鏡をかけるなど複数の意味を持つように、多義語は身近な言葉にも数多く存在します。
「はしをもつ」という文字列は、発音や表記が同じでも意味が異なる同音異義語(「はし」が橋・端・箸のいずれの意味にもなり得る語)を含んでおり、単独では意味が定まりません。しかし「はしを渡る」なら橋、「はしを持って食事をする」なら箸というように、周囲の語との関係から意味を一つに絞り込む処理が意味解析にあたります。
自然言語処理は、形態素解析という、文を意味を持つ最小単位(形態素)に分ける処理から始まります。続いて構文解析で単語同士の係り受けなど文の構造を明らかにし、意味解析でその構造がどのような意味を表すかを解釈する、という順序で進みます。
構文解析までの処理では文の「形」は分かっても、多義語を含む文はどの意味で使われているかが定まらない曖昧性(文や語の意味が一通りに定まらず、複数の解釈が成り立ってしまうこと)が残ります。意味解析は、この曖昧性を辞書やシソーラス(単語を意味の近さ、つまり類語や上位・下位語の関係で整理した、類語辞典のようなデータ)、周囲の語との関係を手がかりに解消する工程として位置づけられています。
2. 試験対策ポイント
自然言語処理の解析工程は、形態素解析、構文解析、意味解析、文脈解析の順に進みます。それぞれの役割は、次のように整理できます。
| 解析工程 | 処理の内容 |
|---|---|
| 形態素解析 | 文章を形態素に分割して品詞などを判別する |
| 構文解析 | 単語同士の係り受けなど文の構造を明らかにする |
| 意味解析 | 構文解析で得られた構造をもとに文が持つ意味を解釈する |
| 文脈解析 | 複数の文にまたがって前後関係を踏まえる |
それぞれの処理は前段の結果を引き継ぐ関係にあります。どの工程がどこまでを担当するのかという役割分担は、段階ごとに混同しないよう整理しておきたいところです。
意味解析の中心的な課題として、多義語の語義曖昧性解消が挙げられます。語義曖昧性解消とは、多義語について、その文の中でどの意味を表しているかを一つに絞り込む処理のことで、英語ではWord Sense Disambiguation、略してWSDと呼ばれます。
同じ音・同じ表記でも意味が異なる語をめぐる曖昧性の解消は、自然言語処理の本質的な課題の一つとして扱われます。多義語をめぐる処理の名称と、それが意味解析のどの段階に位置づけられるかは、あわせて整理しておきたいところです。
意味解析では、語の意味的なまとまりを整理した辞書やシソーラスに加え、意味役割という考え方も扱われます。意味役割とは、文中の語が「動作主」や「対象」といった、動作に対する意味的な役割を担っているかどうかを判定する視点のことです。
また、構文的には正しい文でも、意味的には成り立たない解釈が生まれる場合があります。意味解析はこうした構造と意味のズレを扱う工程という位置づけにあります。
3. 関連概念との比較・相違点
構文解析との最大の違いは、文の「形」を扱うか「意味」を扱うかという点にあります。構文解析は、語と語の係り受けなど文の構造を明らかにする処理であるのに対し、意味解析はその構造をもとに文の意味を解釈する処理です。
構文的に正しい語順や係り受けであっても、意味的には成立しない組み合わせ、つまり意味が通らない解釈を除外するのが意味解析の役割で、処理の順序としては構文解析の後に意味解析が続きます。構文解析そのものの詳しい仕組みは、構文解析を扱う別記事に譲ります。
文脈解析との違いは、意味を確定する範囲にあります。意味解析が基本的に1つの文の中で意味を確定する処理であるのに対し、文脈解析は、複数の文にまたがって前後関係や話の流れを踏まえて意味を解釈する処理です。
たとえば代名詞が何を指すかの判断や、単独では意味が定まらない省略表現の補完は文脈解析の領域で扱われ、処理の順序としては意味解析の後に文脈解析が続きます。「はしを渡る」のように1文の中で意味が定まる場合は意味解析の範囲ですが、複数の文をまたいで指示語の対象を特定する場合は文脈解析の範囲として区別されます。文脈解析の詳しい仕組みは、文脈解析を扱う別記事に譲ります。
4. ビジネス・実務での活用シナリオ
検索エンジンの分野では、検索クエリに含まれる多義語を意味解析で判別したうえで、利用者の意図に近い検索結果を返す仕組みが使われています。「アップル」という語が果物を指すか企業を指すかは、周囲の検索語や検索履歴との関係から意味解析によって絞り込まれます。この判別ができなければ、意図と無関係な検索結果が混在し、利用者が求める情報にたどり着きにくくなります。
機械翻訳の分野では、原文の語が持つ意味を意味解析で確定してから訳語を選ぶことで、直訳では不自然になる表現を意味の通った訳文に変換しています。同じ単語でも文脈によって訳語が変わる場合、意味解析の結果を踏まえずに機械的に対応する訳語を当てはめると、読み手に伝わらない翻訳になってしまいます。意味を先に確定する工程を挟むことで、原文の意図に沿った自然な訳文が得られます。
チャットボット(文字や音声で利用者とやり取りする対話プログラム)や音声アシスタントの分野では、ユーザーの発話に含まれる多義語や曖昧な表現の意味を意味解析で解析し、意図に沿った応答や処理を選択する仕組みが取り入れられています。
発話の意味を正しく捉えられなければ、見当違いの応答を返したり、意図しない処理を実行したりする原因になります。意味解析の精度は、やり取り全体がどれだけ自然に成立するかを左右する要素の一つです。
5. 要点まとめ
- 意味解析は、構文解析で得られた文の構造をもとに単語や文全体の意味を解釈する処理で、多義語がどの意味で使われているかを判定する役割を持ちます。
- 自然言語処理の解析は形態素解析→構文解析→意味解析→文脈解析の順に進み、意味解析は1文の意味を確定する工程、文脈解析は複数の文にまたがる流れを踏まえる工程という関係にあります。
- 意味解析では辞書やシソーラス、意味役割といった情報を手がかりに、文法的には正しくても意味が通らない解釈を除外します。
6. 確認問題
問1意味解析とは、構文解析によって得られた文の構造をもとに、単語や文全体が持つ意味を解釈し、多義語がどの意味で使われているかを判定する処理である。
解答・解説をみる
○ 正しい
意味解析の定義そのものです。複数の意味を持つ語について、その文の中でどの意味を表すかを絞り込む語義曖昧性解消を含みます。
問2意味解析は、複数の文にまたがる前後関係を踏まえて話の流れを解釈する処理であり、1つの文の中だけでは意味を確定できない。
解答・解説をみる
× 誤り
正しくは、複数の文にまたがる前後関係を踏まえるのは意味解析ではなく文脈解析です。意味解析は基本的に1つの文の中で意味を確定する処理であり、文脈解析はその後段に位置する工程として整理されています。
問3自然言語処理の解析工程は、形態素解析、構文解析、意味解析、文脈解析の順に進み、意味解析は構文解析の後、文脈解析の前に位置する。
解答・解説をみる
○ 正しい
解析工程の順序そのものです。意味解析は構文解析の結果である文の構造をもとに意味を解釈し、その後の文脈解析へとつながります。

