BPR (G検定)

BPR

1. 定義と概要

BPRとは、既存の業務プロセスを部分的に手直しするのではなく、業務本来の目的に立ち返って組織・業務フロー・情報システムを根本から見直し、再設計する経営手法のことです。この考え方は1993年、マイケル・ハマー(元マサチューセッツ工科大学教授)とジェイムズ・チャンピー(経営コンサルタント)の共著『リエンジニアリング革命』によって提唱されました。

同書はリエンジニアリングを、コスト・品質・サービス・スピードといった重大な経営指標を劇的に改善するために、ビジネスプロセスを根本的に考え直し、抜本的にデザインし直すことと定義しています。そのうえで、根本的・抜本的・劇的・プロセスという4つの語を鍵概念として位置づけています。この定義は世界的に広まり、日本の企業経営でも参照されるようになりました。

従来の企業組織は分業化・専門化を進め、部門ごとの効率を高める発想を中心としてきました。しかし部門最適を積み重ねた結果、プロセス全体としては複雑化し、部門間の引き継ぎや承認にかかるムダや遅れが目立つようになりました。

こうした状況に対し、情報技術の活用を前提に業務プロセスそのものを白紙から組み替える発想として、1990年代初頭の米国でBPRが提唱され、日本にも広がりました。近年では、AI導入を既存業務の部分的な効率化にとどめず、業務プロセス全体を設計し直す機会として捉える文脈で、BPRという語が用いられています。

2. 試験対策ポイント

業務改善(カイゼン)とは、今のやり方を前提に、少しずつ効率を高めていく継続的な取り組みのことです。まず整理の軸になるのは、BPRがこのカイゼンの延長線上にあるものではなく、既存プロセスの前提そのものを問い直す抜本的な見直しであるという点です。

定義に含まれる根本的・抜本的・劇的・プロセスという4つの鍵語と、提唱者であるマイケル・ハマー、ジェイムズ・チャンピー、出典である『リエンジニアリング革命』(1993年)をあわせて整理しておきたいところです。人名・書名・年号は組み合わせで押さえておくと、細部を取り違えにくくなります。

G検定のシラバスでは「AIプロジェクトの進め方」の分野にBPRが含まれます。この分野では、CRISP-DM(データ分析プロジェクトを進める際の標準的な手順を示すフレームワーク)やMLOps(機械学習モデルを開発から運用まで一貫して管理し続ける体制や仕組み)と並ぶキーワードとして扱われます。あわせて、PoC(本格導入の前に小規模な範囲で効果や実現可能性を確かめること、概念実証)などの語も同じ分野で扱われます。BPRはこれら個別の分析・開発手法ではなく、業務プロセス全体の再設計という一段上の視点にある点が識別点になります。

RPA(パソコン上の定型作業を、ソフトウェアのロボットが人の操作を真似て自動でこなす技術)はBPRを実現する個別の手段の一つであり、両者は対象とする範囲の広さが異なります。IT技術の導入を必須としないBPRと、IT技術の活用が前提のRPAという違いも、混同しやすい組み合わせとしてあわせて押さえておきたいところです。

3. 関連概念との比較・相違点

BPRの輪郭は、業務改善(カイゼン)とRPAを横に並べるとつかみやすくなります。3つを、見直しの深さと対象とする範囲という軸で整理すると次のとおりです。

取り組み 見直しの深さ 対象とする範囲
BPR プロセスの前提そのものを問い直し、白紙から設計し直す 組織・業務フロー・情報システムを含む業務プロセス全体
業務改善(カイゼン) 既存のプロセスや前提は活かしたまま少しずつ効率化する 日々の作業
RPA 既存のプロセスの形は残し、人の操作を機械に置き換える 定型作業という個別の範囲

業務改善(カイゼン)との最大の違いは、表の見直しの深さの列にあたります。カイゼンが積み上げ型の改善であるのに対し、BPRはなぜその手順が必要なのかという根本まで立ち返って作り直す抜本的な見直しにあたります。

RPAとの最大の違いは、表の対象とする範囲の広さにあたります。RPAは定型作業をソフトウェアロボットで自動化する個別の手段であり、BPRは業務プロセス全体を再設計する経営手法であるため、RPAはBPRを実現する複数の手段の一つに位置づけられます。

プロセスを見直さないままRPAだけを導入すると、非効率な手順そのものを自動化してしまう場合がある点も、両者の範囲の違いを示しています。手段としてのRPAと、全体設計としてのBPRを重ねて捉えると、この落とし穴に気づきにくくなります。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

製造業では、部門ごとに分断されていた受発注・在庫管理のプロセスを、AI需要予測を前提に一本化して再設計する事例があります。個別最適の帳票や承認フローを残したままAIの予測値だけを足しても効果は限定的で、プロセス自体を組み替えて初めて欠品と過剰在庫を同時に減らせます。

金融業界では、紙の稟議や多段階承認を前提としていた与信審査プロセスを、AIスコアリング(AIが算出した指標をもとに評価・判定すること)を組み込んだ一気通貫の流れへ作り直す動きがあります。審査の各段階を個別に効率化するだけでは限界があり、プロセス全体を再設計することで審査のリードタイムが圧縮されます。

自治体・公共分野では、窓口対応を前提とした申請・審査プロセスを、オンライン完結の前提で再設計する取り組みが進んでいます。DX(デジタル技術で事業やサービスのあり方を変革する取り組み)や自治体の業務プロセス見直しの議論でBPRの考え方が用いられ、待ち時間と担当者の負荷を減らす効果につながります。

5. 要点まとめ

  • BPRは既存の業務プロセスを部分的に改善するのではなく、目的に立ち返って組織・業務フロー・情報システムを根本から再設計する経営手法で、1993年にハマーとチャンピーが提唱しました。
  • 既存プロセスを前提に部分的に改善する業務改善(カイゼン)や、定型作業を自動化する個別の手段であるRPAとは、対象範囲と見直しの深さが異なります。
  • G検定では「AIプロジェクトの進め方」の分野でCRISP-DM・MLOps・PoCなどと並ぶキーワードとして扱われ、AI導入を業務プロセス全体の再設計機会として捉える文脈で用いられます。

6. 確認問題

問1BPRとは、既存の業務プロセスを部分的に改善するのではなく、業務の目的に立ち返って組織や業務フロー、情報システムを根本から見直し再設計する経営手法である。

解答・解説をみる

○ 正しい

BPRの定義そのものです。既存プロセスを前提に部分的な効率化を積み重ねる業務改善(カイゼン)との違いが分かれ目になります。

問2BPRという概念は、1993年にマイケル・ハマーとジェイムズ・チャンピーの共著『リエンジニアリング革命』によって提唱された。

解答・解説をみる

○ 正しい

提唱者と出典の組み合わせです。根本的・抜本的・劇的・プロセスという4つの鍵語とあわせて整理しておきたいところです。

問3BPRとRPAは同じ範囲を指す言葉であり、RPAを導入すればそれだけでBPRが達成されたことになる。

解答・解説をみる

× 誤り

正しくは、RPAは定型作業を自動化する個別の手段の一つであり、業務プロセス全体を再設計するBPRとは範囲が異なります。RPAの導入はBPRを実現する手段になり得ますが、それ自体がBPRの達成を意味するわけではありません。