1. 定義と概要
マンハッタン距離とは、2点間の距離を、横方向の移動距離と縦方向の移動距離をそれぞれ求めてから足し合わせることで測る指標です。碁盤の目状に区画された街路を、斜めに横切らず東西南北にしか進めない条件でタクシーが移動する距離になぞらえて、「タクシー距離」「市街地距離」とも呼ばれます。
目的地が東に3区画・北に4区画離れているとすると、マンハッタン距離は3区画と4区画を足した7区画分になります。斜めの近道は測らず、実際に進む道のりの合計を数える点がポイントです。
名称は、ニューヨークのマンハッタン島の街路が碁盤の目状に整備されていることに由来します。数学的にはL1ノルムと呼ばれる尺度に対応し、L1距離とも呼ばれます。
従来、2点間の距離という考え方では、直線的な最短距離を測るユークリッド距離が基本の物差しとして扱われてきました。しかし、格子状の道路網やピクセル単位のデータのように、軸に沿った動きしかできない場面や、軸ごとの差をそのまま合計して比較したい場面があります。そこで、各座標軸方向の移動距離をそのまま足し合わせるマンハッタン距離という考え方が、距離の測り方の選択肢の一つとして使われるようになりました。
2. 試験対策ポイント
まず押さえておきたいのは、マンハッタン距離の求め方です。2点の横方向の位置の差と縦方向の位置の差を、それぞれ絶対値に直してから単純に足し合わせる計算方法で説明されます。碁盤の目の街を歩く例、つまり東に3区画・北に4区画で合計7区画になるような具体例が、斜め移動を認めない点をユークリッド距離との計算上の違いとして示しています。
マンハッタン距離はL1ノルムと呼ばれる尺度に対応する指標であり、L1距離とも呼ばれます。L1ノルムを用いたL1正則化(LASSOなど、モデルのパラメータ(モデルが学習によって決める数値の集まり)の一部をちょうど0にして単純化する学習時の工夫)と同じ数学的な考え方を土台にしている、という関係にあります。L1正則化そのものの詳しい仕組みは、別の学習項目として扱われます。
距離の測り方を一般化した式であるミンコフスキー距離には、座標の差を何乗して足し合わせるかを表すパラメータがあります。このパラメータの取り方によって、マンハッタン距離(各成分の差を1乗して足し合わせる)とユークリッド距離(各成分の差を2乗して足し合わせ、平方根を取る)が位置づけられる関係にあります。
クラスタリング(似た性質を持つデータどうしをグループに分ける手法)でも、どの距離指標を使うかを選ぶ場面があります。代表的な手法には、似ているデータ点をいくつか探し、その多数決や平均から答えを推定するk近傍法(kNN)や、データをあらかじめ決めた数のグループに分けるk-means法(クラスタリングの代表的な手法)があります。
カテゴリ変数(性別や都道府県のように、数値の大小ではなく種類を表すデータ)やスパースなデータ(ほとんどの値が0で埋まっているデータのこと)には、マンハッタン距離が選ばれやすいという使い分けの観点もあわせて扱われます。距離指標そのものの定義だけでなく、どんなデータでどちらが選ばれやすいかまで結びつけて整理しておくと理解が安定します。
3. 関連概念との比較・相違点
ユークリッド距離との最大の違いは、移動の仕方と計算方法にあります。碁盤の目状の街を歩く比喩とあわせて並べると、両者の性格の差がはっきりします。
| 観点 | マンハッタン距離 | ユークリッド距離 |
|---|---|---|
| 距離の測り方 | 各座標軸に沿った移動距離を合計する | 2点を結ぶ直線の長さ、つまり最短距離を測る |
| 斜め移動の扱い | 認めない | 直線としてそのまま測る |
| 碁盤の目の街での比喩 | 交差点を東西南北にしか曲がれないタクシーが実際に走る道のりの合計 | 建物を突き抜けて目的地まで一直線に進む距離 |
同じ2点間を測っても、軸に沿ってしか進めない条件下ではマンハッタン距離の値がユークリッド距離の値より大きくなります。斜めの近道を測れないためです。
ミンコフスキー距離との関係も、比較の軸になります。ミンコフスキー距離は、距離の測り方を一つの式にまとめて一般化したもので、式の中のパラメータを変えるとマンハッタン距離やユークリッド距離になります。
座標の差を何乗して足し合わせるかを表すパラメータが1のときマンハッタン距離、2のときユークリッド距離となる特殊ケースの関係にあります。マンハッタン距離とユークリッド距離は別々の指標というより、同じ式の異なる設定にあたります。
4. ビジネス・実務での活用シナリオ
物流・配送の分野では、道路網に沿った実際の移動距離を見積もる際にマンハッタン距離が使われます。格子状に区画された街路では、直線距離よりもマンハッタン距離のほうが実際の移動距離に近い近似値になるため、配送ルートのおおまかな距離見積もりに活用されています。
データ分析・機械学習全般では、k近傍法やクラスタリングで似ているデータどうしの近さを測る際にマンハッタン距離が選ばれることがあります。カテゴリ変数やスパースな特徴量(値のほとんどが0であるデータ)を扱う場合に選ばれやすく、一部の成分に大きな外れ値(他のデータから大きく外れた値)があっても影響を受けにくい傾向がある指標として活用されています。
ゲーム開発・ロボティクスの分野でも、マンハッタン距離が使われています。格子状のマップ上で経路を探索するアルゴリズムにおいて、目的地までの残り移動量を見積もるヒューリスティック(厳密な最適解ではなく、素早く概算の答えを出すための工夫・目安)として活用されています。
5. 要点まとめ
- マンハッタン距離は、2点間の距離を各座標軸に沿った移動距離の合計で測る指標で、タクシー距離・市街地距離とも呼ばれ、数学的にはL1ノルムに対応します。
- ユークリッド距離が2点を結ぶ直線距離を測るのに対し、マンハッタン距離は斜め移動を認めず軸に沿った移動距離のみを合計する点が計算上の違いにあたります。
- ミンコフスキー距離という一般化した式のパラメータが1のときマンハッタン距離、2のときユークリッド距離になるという関係にあり、k近傍法やクラスタリングでの距離指標の使い分けとあわせて整理しておきたい点です。
6. 確認問題
問1マンハッタン距離は、2点間の距離を各座標軸に沿った移動距離(差の絶対値)の合計で求める指標である。
解答・解説をみる
○ 正しい
マンハッタン距離の定義そのものです。碁盤の目状の街路を斜めに進めない条件で移動する距離になぞらえて、タクシー距離・市街地距離とも呼ばれます。
問2マンハッタン距離は、ユークリッド距離と同様に2点を結ぶ直線の長さ(最短距離)を表す指標である。
解答・解説をみる
× 誤り
正しくは、マンハッタン距離は各座標軸に沿った移動距離の合計であり、斜め方向への直線移動は認めません。2点を結ぶ直線の最短距離を表すのはユークリッド距離です。
問3マンハッタン距離は数学的にL1ノルムと呼ばれる尺度に対応し、L1距離とも呼ばれる。
解答・解説をみる
○ 正しい
マンハッタン距離はL1ノルム、つまりミンコフスキー距離のパラメータが1の場合に対応します。パラメータが2の場合はユークリッド距離(L2ノルム)に対応します。

