1. 定義と概要
MAE(Mean Absolute Error、平均絶対誤差)とは、回帰モデルの予測値と実測値の差である誤差の絶対値を全データについて求め、その平均を取ることで求める評価指標です。計算式を言葉で表すと、すべてのデータについて誤差の絶対値を足し合わせ、それをデータの件数で割った値がMAEになります。
プラスの誤差とマイナスの誤差をそのまま平均すると符号が打ち消し合ってしまうため、MAEでは絶対値を取って符号をそろえます。二乗の操作を含まないため、単位は元のデータと同じになります。たとえば家賃を予測するモデルであれば、MAEの値も円単位のまま得られます。具体例として、3件の家賃予測で誤差がそれぞれプラス5,000円・マイナス3,000円・プラス2,000円だった場合、絶対値の平均は5,000と3,000と2,000を足して3で割った約3,333円となり、これがMAEの値です。
従来、回帰モデルの誤差評価には、誤差を二乗してから平均するMSEが、学習時の損失関数(モデルの学習時に、予測のずれの大きさを数値で表し、それを小さくすることを目指す関数)として広く使われてきました。しかしMSEは誤差を二乗するため、実測値から大きく外れた少数のデータである外れ値の影響を強く受けます。少数の外れ値が全体の評価値を大きく押し上げるため、誤差の大きさを素直に評価したい場面には不向きな面があります。
そこで、誤差を二乗せず絶対値のまま平均するMAEが、外れ値に頑健(ロバスト。一部の極端なデータに結果が左右されにくい性質)な評価指標として使われるようになりました。回帰モデルの評価指標としては、MSE・RMSE・決定係数(回帰モデルがデータの変動をどれだけ説明できているかを0から1の数値で表す指標)と並んで扱われる指標です。
2. 試験対策ポイント
まず重要になるのは、MAEが誤差を二乗せず絶対値のまま平均するため、誤差の大きさに対してペナルティが線形に、つまり誤差の大きさにそのまま比例して与えられる点です。1件の外れ値が全体の評価値を大きく引き上げにくく、外れ値に頑健な指標であるという性質につながります。
MSE・RMSEは誤差を二乗するため、大きな誤差ほど不釣り合いに重く評価され、外れ値の影響を受けやすくなります。MAE・MSE・RMSEの3指標は「外れ値への感度」という1本の軸で並べて理解できます。
加えて、単位の違いもあわせて整理しておきたいところです。MSEは元データの2乗の単位になり、RMSE・MAEは元データと同じ単位です。使い分けの基準として、外れ値が少なく大きな誤差を特に重く罰したい場面ではMSE・RMSEが選ばれ、外れ値の影響を抑えて誤差の大きさをそのまま素直に評価したい場面ではMAEが選ばれるという関係があります。
MAEは絶対値を含む式のため、誤差がちょうど0になる点で微分できません。これを微分不可能(グラフの折れ曲がった点のように、その点での傾きを一意に決められないこと)と呼びます。
勾配降下法(損失関数の値を少しずつ小さくする方向に、モデルのパラメータ(モデル内部が持つ数値)を更新していく学習の手法)を用いる学習では、MSEより扱いにくい場面があるという制約もあります。評価指標としての読みやすさと、学習に使うときの扱いやすさは別の観点だと押さえておくと迷いにくくなります。
3. 関連概念との比較・相違点
MSE・RMSEとの最大の違いは、外れ値への感度にあります。誤差の扱い方・外れ値への感度・単位という3つの観点で並べると、3指標の位置づけがはっきりします。
| 指標 | 誤差の扱い方 | 外れ値への感度 | 単位 |
|---|---|---|---|
| MAE | 誤差の絶対値を平均する(線形の評価) | 頑健で影響を受けにくい | 元データと同じ |
| MSE | 誤差を二乗してから平均する | 影響を強く受ける | 元データの2乗 |
| RMSE | MSEの平方根を取る | 影響を強く受ける | 元データと同じ |
大きな誤差ほど不釣り合いに重く評価されるかどうかが、この感度の差を生む理由です。評価指標を選ぶ際には、この違いがそのまま判断材料になります。
決定係数との最大の違いは、指標が表す尺度の種類にあります。MAEは誤差そのものの大きさを表す指標で、値は単位を持ち、小さいほど予測が実測値に近いことを意味します。
これに対して決定係数は、モデルの説明力の割合を表す指標です。値は0から1の範囲を取り単位を持たず、1に近いほどモデルがデータの変動をよく説明できていることを意味します。同じ回帰モデルであっても、誤差の大きさを確かめたいときはMAE、説明力の高さを確かめたいときは決定係数というように、確認したい観点によって参照する指標が変わります。
4. ビジネス・実務での活用シナリオ
不動産・価格予測の分野では、物件価格や家賃を予測する回帰モデルの評価にMAEが使われます。MAEの値は円単位のまま得られるため、平均して何円のずれがあるかをそのまま経営層へ説明する材料になります。統計の専門知識がない相手にも誤差の大きさが直感的に伝わる点は、実務上の利点です。
需要予測・在庫管理の分野では、商品の需要予測モデルの評価にMAEが使われます。セールなどによる一時的な突発需要は外れ値になりやすく、こうしたデータに評価値が引きずられると、モデルの実力を正しく比較できません。MAEを用いることで、外れ値の影響を抑えたまま複数モデルの精度を安定して比較できます。
気象・センサーデータ分析の分野でも、MAEは有効です。気温やセンサー計測値を予測するモデルは、ノイズ(測定値に混じる不規則なばらつき)や外れ値混じりの実測データを扱う場面が少なくありません。そうしたデータでも、MAEは誤差の大きさを直感的な単位のまま安定して評価できます。
5. 要点まとめ
- MAEは予測値と実測値の差の絶対値を平均した評価指標で、単位は元のデータと同じです。
- 誤差を二乗しないため外れ値に頑健であり、大きな誤差を強く罰するMSE・RMSEとは外れ値への感度が異なります。
- 誤差が0になる点で微分できないという性質があり、勾配降下法を用いる学習の損失関数としては、MSEより扱いにくい場面があります。
6. 確認問題
問1MAEは予測値と実測値の差の絶対値を平均して求める評価指標であり、単位は元のデータと同じである。
解答・解説をみる
○ 正しい
MAEの定義そのものです。二乗の操作を含まないため、家賃予測であれば円単位のように、元データと同じ単位で誤差の大きさを表します。
問2MAEは誤差を二乗して平均するため、MSEやRMSEよりも外れ値の影響を強く受ける。
解答・解説をみる
× 誤り
正しくは、MAEは誤差を二乗せず絶対値のまま平均するため、外れ値に頑健です。誤差を二乗して外れ値の影響を強く受けるのはMSE・RMSEの側であり、この問題は逆向きの記述になっています。
問3MAE・MSE・RMSEのうち、外れ値の影響を最も受けにくいのはMAEである。
解答・解説をみる
○ 正しい
MAEは誤差を二乗しないため、大きな外れ値があっても評価値が不釣り合いに膨らみにくい性質を持ちます。MSE・RMSEは誤差を二乗するぶん、外れ値の影響を受けやすくなります。

