1. 定義と概要
トラッキングとは、「Cookie」などの技術を用いて、ユーザーの閲覧履歴や購買履歴といったウェブ上の行動を継続的に追跡・収集する仕組みの総称です。主な目的は、広告配信の最適化や効果測定にあります。具体例として、一度訪れたサイトの商品広告が、別のサイトを閲覧している最中にも表示されるリターゲティング広告(訪問済みのユーザーに向けて再度広告を配信する手法)があります。
従来は、訪問先のサイトとは異なる第三者が発行するサードパーティCookie(複数サイトを横断した行動追跡に使われる仕組み)を用いて、複数のサイトをまたいだユーザー行動の把握が広く行われてきました。
しかし、プライバシー保護への関心の高まりと、EUのGDPR(欧州連合が定める個人データ保護に関する法律)や日本の改正個人情報保護法といった法規制の強化を背景に、ブラウザ側の追跡防止機能が普及しています。ITP(Intelligent Tracking Prevention)とは、「Apple」が「Safari」に搭載する追跡防止機能です。
一方で、規制の方向が一本道でない点にも注意が要ります。Googleも2020年に「Chrome」でのサードパーティCookie廃止を表明しましたが、2024年から2025年にかけて方針を転換し、全廃の方針を撤回しました。既存のブラウザ設定の中でユーザー自身に選択を委ねる方向へと軟化し、2025年10月には代替技術「Privacy Sandbox」のTopics API等、主要な機能の廃止も発表されています。
2. 試験対策ポイント
G検定における重要な論点の一つが、「Cookie」の種類の違いです。ファーストパーティCookie(今見ているサイト自身が発行する「Cookie」で、ログイン状態の保持などに使われます)は、自サイトが発行する点が特徴です。一方のサードパーティCookie(今見ているサイト以外の第三者が発行する「Cookie」で、複数サイトをまたいだ行動追跡に使われます)は、発行元が自サイト以外という点で区別されます。
この2つは、発行元と主な用途の2軸で並べると違いがはっきりします。
| 種類 | 発行元 | 主な用途 |
|---|---|---|
| ファーストパーティCookie | 今見ているサイト自身 | ログイン状態の保持など、そのサイト内での利用 |
| サードパーティCookie | 今見ているサイト以外の第三者 | 複数サイトをまたいだ行動追跡 |
この発行元の違いと用途の違いは、混同しやすい組み合わせです。法規制やブラウザの制限が主に向けられているのは、横断的な追跡に使われる「サードパーティCookie」のほうです。
個人関連情報とは、Cookie等の端末識別子を通じて取得された、それ単体では特定の個人を識別できない、生存する個人に関する情報のことです。
改正個人情報保護法(2022年4月施行)では、この情報を第三者に提供する事業者に対し、提供先が個人データとして取得することが想定される場合、本人の同意が得られていることを確認する義務を課しています。単体では個人を識別できない情報であっても、提供先での使われ方によっては手続きが必要になるという点が、この枠組みの勘所です。この確認義務の有無まで含めて理解しておきたいところです。
ブラウザ側の対抗技術としては、「Apple」のITPが「サードパーティCookie」をほぼ全面的にブロックし、「ファーストパーティCookie」の保持期間も短縮する仕組みである点が重要です。Googleは代替技術群「Privacy Sandbox」を提案しましたが、2024年から2025年にかけてサードパーティCookie全廃の方針を撤回した経緯は、現在進行形の話題として押さえておきたいポイントです。
加えて、開発の初期段階からプライバシー保護をシステム設計に組み込む考え方であるプライバシー・バイ・デザイン(サービスを作る最初の段階からプライバシー保護を組み込む設計の考え方)が、こうした規制対応の基本方針として関連付けられます。問題が起きてから手当てするのではなく、設計の段階で織り込んでおくという発想です。
3. 関連概念との比較・相違点
「Cookie」との最大の違いは、手段か行為かという点にあります。「Cookie」は行動データを保存する技術的な手段であり、トラッキングはその手段を用いてユーザー行動を追跡・収集する行為・仕組みそのものを指します。「Cookie」という道具を使って、トラッキングという処理を行う、という関係にあります。
プロファイリングとの違いは、データの収集段階か分析段階かという工程の違いにあります。トラッキングは行動データの収集・追跡の段階を指すのに対し、プロファイリング(集めたデータを分析して、その人の好みや行動パターンを推測すること)は、収集したデータを分析して個人の趣味嗜好や行動パターン、属性を推測する段階を指します。
まずトラッキングでデータを集め、次にプロファイリングで分析するという順序の関係にあります。両者は同義語ではなく、収集と分析という別の工程を指す言葉として区別されます。
3つの用語の位置づけを、道具・収集・分析という流れで並べ直すと次のようになります。
| 用語 | 位置づけ | トラッキングとの関係 |
|---|---|---|
| 「Cookie」 | 行動データを保存する技術的な手段 | トラッキングが使う道具にあたる |
| トラッキング | 行動データを継続的に収集・追跡する仕組み | 収集の工程そのもの |
| プロファイリング | 集めたデータから好みや属性を推測する分析 | トラッキングの次に来る工程 |
このように、手段・収集・分析はそれぞれ別の層にあります。混同したまま覚えると、どの段階に規制や同意の論点がかかるのかが見えにくくなります。
4. ビジネス・実務での活用シナリオ
広告・マーケティングの分野では、リターゲティング広告や広告効果測定にトラッキングデータを活用し、広告費の配分をユーザー単位で最適化する取り組みが行われています。閲覧履歴や購買履歴に基づいて広告の表示先を絞り込むことで、闇雲に広告を配信するよりも高い費用対効果が見込めます。
EC・小売の分野では、閲覧履歴や購買履歴のトラッキングデータをもとに、おすすめの商品を表示するレコメンド機能を実装する事例があります。ユーザーごとに興味のありそうな商品を優先的に提示することで、購買転換率(サイト訪問者のうち実際に購入に至った人の割合)の向上につながっています。
サードパーティCookie規制の強化を受け、企業が自社で直接収集するファーストパーティデータの活用や、CDPの整備へ移行する動きが進んでいます。CDPとは顧客データ基盤、つまり自社で集めた顧客データを一元管理するための仕組みのことです。第三者が発行する「Cookie」に依存しない形でデータを蓄積し、活用する体制づくりが、規制強化が進む環境下での実務対応として広がっています。
5. 要点まとめ
- トラッキングはCookie等を用いてユーザーのウェブ上の行動を追跡・収集する仕組みで、「ファーストパーティCookie」と「サードパーティCookie」の違いが論点になります。
- 改正個人情報保護法(2022年4月施行)ではCookie等で得た情報が個人関連情報として扱われ、第三者提供時には本人同意の確認義務が課されます。
- 「Apple」のITPによる「サードパーティCookie」のブロックや、GoogleのサードパーティCookie廃止方針の撤回など、ブラウザ・プラットフォーム側の対応が進行中の話題としてあります。
6. 確認問題
問1「サードパーティCookie」は、訪問しているサイトとは異なる第三者が発行する「Cookie」であり、複数サイトを横断したユーザー行動の追跡に利用される。
解答・解説をみる
○ 正しい
訪問先サイト自身が発行する「ファーストパーティCookie」との違いにあたります。「サードパーティCookie」は、複数サイトを横断した行動把握に使われてきました。
問2改正個人情報保護法(2022年4月施行)では、Cookie等の端末識別子を通じて取得された、特定の個人を識別できない情報は「個人関連情報」と呼ばれ、第三者提供に際して本人同意の確認義務の対象外となる。
解答・解説をみる
× 誤り
正しくは対象外ではありません。提供先が個人データとして取得することが想定される場合、提供元の事業者は本人の同意が得られていることを確認する義務を負います。
問3「Apple」のITP(Intelligent Tracking Prevention)は、「Safari」において「サードパーティCookie」を制限するなど、トラッキングを防止するための技術である。
解答・解説をみる
○ 正しい
ITPは、「サードパーティCookie」のブロックと「ファーストパーティCookie」の保持期間短縮を行う、Safari搭載の技術です。

