作動状態記録装置 (G検定)

作動状態記録装置

1. 定義と概要

作動状態記録装置とは、自動運行装置を搭載する自動車に設置が義務付けられている、自動運行装置の作動状態に関する情報を記録する装置です。2020年3月に告示され同年4月に施行された改正道路運送車両法・保安基準(自動車が満たすべき安全性能を国が定めたルール)により、自動運行装置とともに保安基準の対象装置に追加されました。

この法整備は、同年施行の改正道路交通法とあわせて、レベル3(システムが運転を担うが、緊急時などはドライバーが引き継ぐ自動運転の段階)の自動運転車が公道を走行できる制度的な基盤になっています。

なぜ新しい装置が必要になったのかも押さえておきたいところです。従来、運転操作は人間が担うことが前提で、事故が起きたときの状況把握はイベントデータレコーダー(EDR)に頼るのが一般的でした。イベントデータレコーダー(EDR)とは、事故発生時点の車両の速度・加減速度などを記録する装置です。

しかし、レベル3の自動運転はシステムが運転操作を担い、緊急時のみドライバーが引き継ぐ仕組みです。そのため、事故や不具合が起きた際に運転していたのがシステムかドライバーかを特定できる記録が新たに必要になりました。これに対応する形で、自動運行装置とセットで作動状態記録装置の搭載が義務化されています。

2. 試験対策ポイント

まず押さえておきたいのは、2020年の改正道路運送車両法・保安基準(2020年3月告示・同年4月施行)によって自動運行装置が保安基準の対象装置に追加されたという経緯です。この改正により、作動状態記録装置の搭載も義務化されました。この改正がレベル3自動運転車の公道走行解禁を支える制度基盤になっているという関係性も、ここでの要点です。

記録項目には、自動運行装置の作動状況が変化した時刻や引継ぎ要求が行われた時刻、リスク最小化制御の開始時刻、オーバーライドの時刻などが含まれます。ほかにも運転者が対応できない状態になった時刻や故障のおそれが生じた時刻など、システムとドライバーの間の状態変化に関する時刻情報が記録の対象です。

記録項目に並ぶ用語は、意味をかみ砕いておくと迷いません。引継ぎ要求(テイクオーバーリクエスト)とは、システムがドライバーに「運転を代わってください」と伝えることです。リスク最小化制御とは、ドライバーが反応しない場合にシステムが自動で減速・停止するなどの安全対応を行うことです。オーバーライドとは、自動運転中にドライバーがハンドルやペダルを操作して手動運転に切り替えることです。いずれもシステムとドライバーのどちらが運転操作の主体だったかを事後に特定するための情報という共通点があります。

保存期間は「6か月間」または記録が「2500回」に達するまでの、いずれか短い方と定められており、上限に達すると古いデータから上書きされる方式で運用されます。

記録の保存義務を負うのは自動車メーカーではなく、自動運行装置を搭載する自動車の使用者(自動車を所有・使用する個人や法人)です。道路交通法第63条の2の2第2項に規定されており、製造者と使用者を取り違える記述は誤りです。

3. 関連概念との比較・相違点

イベントデータレコーダー(EDR)やドライブレコーダーとの違いは、記録目的・対象車両・法的位置づけの3点に整理できます。3つの装置を同じ観点で並べると、次のようになります。

観点 作動状態記録装置 イベントデータレコーダー(EDR) ドライブレコーダー
記録内容 自動運行装置とドライバーの間の制御主体の切り替わりに関する時刻情報 事故発生時点の速度・加減速度・シートベルト着用の有無といった車両の物理量 走行中の映像や位置情報、加減速情報など
記録の仕方 制御主体の切り替わりを継続的に記録 衝突などの事故発生時点を瞬間的に記録 走行中の状況を記録
搭載義務と対象 保安基準による義務。レベル3以上の自動運行装置搭載車に限られる 義務あり。自動運転車に限らず幅広い乗用車・貨物車 義務なしの任意装備

EDRとの最大の違いは、記録目的と対象車両にあります。EDRが車両の物理量を残すのに対して、作動状態記録装置は運転の主体がどちらだったかを残します。

ドライブレコーダーとの違いは、法的位置づけと記録内容にあります。ドライブレコーダーは搭載義務のない任意装備で、記録するのは主に映像です。作動状態記録装置は保安基準で搭載が義務付けられており、映像ではなく自動運行装置の作動状態に関する時刻情報を記録する点が異なります。

国際的な議論の枠組みにも触れておきます。作動状態記録装置はDSSAD(Data Storage System for Automated Driving、作動状態記録装置に相当する国際的な呼び方)と呼ばれ、EDRとは別カテゴリの記録装置という扱いです。

4. ビジネス・実務での活用シナリオ

自動車メーカー・型式指定の場面では、レベル3搭載車を量産するにあたり、保安基準の細目を定める告示が規定する作動状態記録装置の技術基準に適合した設計にする必要があります。この設計は、国が量産車の設計・性能をあらかじめ審査して認める型式指定という制度への対応とセットで進める工程です。

事故調査・保険の場面では、自動運転中に事故が発生した場合、作動状態記録装置の記録から事故発生時点で運転の主体がシステムだったかドライバーだったかを特定できます。この記録は、過失割合の判断や保険金支払いの根拠資料として活用されます。

運行管理・フリート事業の場面では、自動運行装置搭載車を保有する事業者が使用者として記録の保存義務を負います。そのため、車両管理の業務フローに記録データの保存・提出手順を組み込む必要があります。

5. 要点まとめ

  • 作動状態記録装置は、2020年施行の改正道路運送車両法・保安基準により自動運行装置(レベル3以上)搭載車に義務付けられた、システムとドライバーの制御の切り替わりなどを記録する装置です。
  • 記録項目には作動状況変化・引継ぎ要求・リスク最小化制御開始・オーバーライド・運転者対応不可・故障のおそれの発生などの時刻情報が含まれ、保存期間は6か月間または2500回のいずれか短い方です。
  • 事故発生時点の物理量を記録するEDR、任意装備で映像を記録するドライブレコーダーとは、記録目的・対象車両・法的位置づけが異なります。

6. 確認問題

問1作動状態記録装置は、2020年に施行された改正道路運送車両法および保安基準により、自動運行装置を搭載する自動車への設置が義務付けられた。

解答・解説をみる

○ 正しい

2020年3月に保安基準が改正告示され、同年4月に施行されて、自動運行装置が保安基準対象装置に追加されるとともに作動状態記録装置の搭載が義務化されました。この改正は、同年施行の改正道路交通法とあわせて、レベル3自動運転車の公道走行解禁を支える制度基盤になっています。

問2作動状態記録装置に記録されたデータの保存義務は、その自動車を製造した自動車メーカーが負う。

解答・解説をみる

× 誤り

保存義務を負うのは自動車メーカーではなく、自動運行装置を搭載する自動車の使用者です(道路交通法第63条の2の2第2項)。製造者と使用者を取り違える記述は、誤りの選択肢のパターンとして知られています。

問3作動状態記録装置の保存期間は、「6か月間」または記録項目の記録回数が「2500回」に達するまでの、いずれか短い方と定められている。

解答・解説をみる

○ 正しい

6か月間または2500回のいずれか短い方が保存期間の基準で、上限に達した場合は古いデータから上書きする方式で運用されます。